April 16, 2019

質的な約束を長期的な決意で

アメリカにケンブリッジという都市があります。


ケンブリッジと言うと、おそらく多くの人はイギリスのケンブリッジを思い浮かべると思いますが、アメリカのマサチューセッツ州にも、ケンブリッジという都市があります。名前はイギリスのケンブリッジからとられました。どちらも、国を代表するような大学都市という共通点があります。

イギリスのほうにはケンブリッジ大学があるわけですが、アメリカのケンブリッジにも、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など、全米を代表するような大学のキャンパスがあります。大学生が多いこともあって、自転車を使う人が多い都市でもあります。

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一般的に言って、アメリカがクルマ大国なのは間違いありませんが、近年は若い世代を中心に、あまりクルマに興味を示さない層が増えていると言われています。最近の若い世代は、クルマより、コンピュータやモバイル端末、通信費などにお金を使う傾向が目立つと言います。

郊外からクルマで通勤や通学するより、自転車で通える範囲の都市部に住むことを好む傾向もあります。ですから、自転車に乗りやすい街が若者に人気となります。こうした状況を受け、若い人材を集めたいIT企業などは、若者の好む、自転車インフラの整った都市に進出する傾向にあります。

大手IT企業は、会社に駐輪場やシャワーなど、自転車通勤しやすい環境を整えるのが必須となっています。自転車に乗りやすい街を選んで拠点を設けるのも重要です。このため、人気企業を誘致し、人口や雇用を増やし、税収を上げようと、自治体が自転車インフラに力を入れるのが最近のトレンドとなっています。

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マサチューセッツ州のケンブリッジは、学園都市なので少し事情は違いますが、若者が多く、自転車に乗る人が多いため、自転車インフラの充実を求める市民の声が多くなっています。そこで、ケンブリッジ市は、全米でも先進的な方針を打ち出しました。

今後、整備や再整備が行われる全ての道路に、物理的にクルマとセパレートされた自転車専用レーンの設置を義務付けたのです。単なる自転車レーンではなく、クルマから保護された自転車レーンという高規格なレーン整備を要求しています。これを、市条例として市議会で可決しました。

今月、議会を通過したこの条例、全米でも初めてです。自転車インフラの整備を打ち出している都市は多いですが、ここまで高規格のものを、しかも条例で義務付けた都市は他にありません。これは、自治体の姿勢として画期的であり、高く評価されるでしょう。

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前述のように、自転車インフラの整備に力を入れる都市は増えていて、毎年発表される自転車にフレンドリーな都市のランキングは注目を集めています。しかし、それは首長が、自転車インフラ整備の重要性や、とても有効な投資であることを理解しているか否かに左右されます。

もちろん、都市の成り立ちや目指す方向性にもよるでしょう。それぞれ考え方があって、自転車インフラの整備に消極的な首長だってたくさんいます。いま、自転車インフラ整備に力を入れている都市でも、首長が変われば、方針が180度変わって、予算がつかなくなってもおかしくありません。

マサチューセッツ市は、そのような事態を避けるため、長期的な視野に立ち、高規格な自転車レーンの整備を続けていくため、市条例を定めたのです。市議会の不退転の決意が感じられます。これから整備、拡張、再構成される全ての道路に物理的に分離されたレーンが設置される前提で、整備計画が練られることになります。

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ケンブリッジは学園都市ですから、他の都市のようにIT企業の進出を誘致しようというのではありません。しかし、全米でも4番目に高い人口密度があり、学生を含め多くの人が自転車を利用する街として、自転車で移動しやすい街にすることが最善だと考えているのです。

それによって市民の移動は安全になり、環境負荷を減らし、エコでクリーンで、人々の健康を増進することにもなると確信しています。それだけでなく、市の経済にも好影響をもたらすと考えています。市内の小売店の売り上げを増やす効果があると関係者は強調します。

市の調査によれば、市民の3分の2は保護された自転車レーンを望んでいます。反対する意見は多くありません。ただ、中にはセパレートされた自転車レーンの整備で、クルマの利便性が損なわれ、ビジネスをする上で不利になるのではないかと心配する声もあります。しかし、それは逆だと言うわけです。

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全米各地で自転車レーンが整備されています。自転車レーンが出来て、路上駐車がしにくくなり、売り上げが減ると心配する商店主は各地にいます。でも、フタを開けてみると、むしろ売り上げは上がっています。5割以上上がった例もあります。商店主の心配とは逆のことが、各地で起きているのです。

条例は、今後整備される道路、拡張される道路、再建・再構築される道路に適用されますが、道路整備そのものが進まなければ、高規格な自転車レーンは増えない恐れがあります。しかし、市民グループなどから、より迅速に整備を進めて欲しいという働きかけが既に始まっており、整備が進むと見られています。

日本の状況と比べると、羨ましい限りです。日本でも、最近ようやく自転車インフラの整備が認識されるようになり、一部で自転車レーンの整備が始まりつつあります。しかし、既存の路肩、路側帯に色を塗っただけのものが多く、物理的にセパレートされた自転車レーンなんて、望むべくもありません。

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日本の自転車走行環境はお寒い限りです。自転車レーンの整備は遅々として進んでいません。ただ、考えようによっては、自転車レーンがないことは、今から整備するのに向いているとも言えます。そして、どうせ整備するのであれば、一足飛びに高規格な自転車レーンを作ってしまう手も考えられます。

通常の自転車レーンを設置しても、路上駐車されたり、クルマに進入されて危険だったり、いろいろ問題が予想されます。それなら思い切って、高規格なものを最初から作ってしまえば、無駄が省けるという考え方も出来るでしょう。リープフロッグです。

リープフロッグとは、新興国が先進国に追いつこうと、これから何かの整備をする際、今までのような段階を経るのではなく、途中を飛び越え、一気に最先端の状態に到達することです。例えば、固定電話の整備をせずに、携帯電話用の基地局を設置し、スマホを使うようなものです。

日本は、自転車レーンについては、リープフロッグのチャンスがあります。日本でも、自転車レーンの整備が必要だと考え、あるいは手をつける自治体が少しずつ増えています。どうせ将来、必要になるのであれば、思い切って高規格のものを最初から整備してしまうことを考えてみてもいいのではないでしょうか。




パリのノートルダム大聖堂の火災、私も行ったことがありますが、特にキリスト教徒には大きなショックでしょうね。

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