April 22, 2019

世界で必要なもう一人の市長

日本では各地の市長が決まりました。


統一地方選挙の後半戦が終わり、地方議会の議員や市町村長が決まりました。これから、このリーダーたちの元で地方政治が進められていくことになります。この議員や首長は、当然ながら選挙で決まるわけですが、世界では、少し違った『市長』が続々と誕生しています。

自転車市長』です。世界中の都市に自転車市長という名のリーダーを誕生させ、都市での自転車の活用を加速させることで、今の自転車人口に加え、さらに10億人を自転車に乗せようという世界的な取り組みです。自転車市長は、公共と民間の領域を一つにまとめて、目標に向け推進するための「触媒」の役割を果たします。

自転車に乗る人を増やすことで、渋滞や大気汚染を減らし、都市の環境や市民の健康を増進するのに加え、経済面でも恩恵をもたらすのが目的です。地域の課題に取り組み、新しいアイディアを実践し、行動を起こすために他の人々と協力し、全ての人にとって良い自転車環境を獲得するためのイノベーションを推進します。

この、“Bicycle Mayor&Leaders Program(自転車市長と指導者プログラム)”は、オランダ・アムステルダムを拠点として活動する社会的企業である、“BYCS”が推進するイニシアチブです。彼らは、自転車は都市を変え、都市は世界を変えると考えています。

Bicycle Mayor

“BYCS”の使命は、政府や非営利団体、ビジネスの枠組みを超え、国際的な協力を進め、自転車の活用に資するさまざまなアイディアを実現していくというものです。自転車市長と指導者プログラムは、その中の一つです。いま、世界中に自転車市長を誕生させています。

自転車は、単なる移動手段の一つではなく、それ以上のものだと考えています。それは社会の変革をもたらします。自転車の未来、都市の未来を切り開くための深い洞察に基づき、世界中の都市での変革を地球規模で進めるため、さまざまな取り組みを進めています。

“BYCS”のビジョンは、「50×30」、2030年までに都市での移動の50%を自転車によるものにするというものです。このことが、私たち全てにとって、大規模で社会的、環境的、かつ経済的な利益をもたらすと信じています。都市は、明日の課題に取り組んでいく必要があることを訴えています。

Bicycle MayorBicycle Mayor

自転車での移動を増やすことは、クリーンで利用しやすいモビリティソリューションを提供するだけではありません。人々の精神面も含めた健康増進に寄与し、地域社会のつながりや結束を促進し、もちろん環境を保護し、持続可能な社会、経済を築いていくことでもあります。

自転車市長は、世界中の都市に広がりつつある自転車ムーブメント、自転車活用を推進しようという人々の意識の高まりに、触媒となる人を放り込むことで化学反応を起こし、推進力を与えるプログラムなのです。その都市の自転車リーダーを決めることが、変革の推進力になると考えています。

同じ思いを持つ人を集め、サポーターのグループや、市民のコミュニティ生成にも寄与するでしょう。「自転車市長」というコンセプトを示し、広く人々に投げかけることが、意識の変化にもつながるはずです。そして、その世界的なネットワークを構築し、自治体や企業などとも連携を促すことに力を入れています。

Bicycle MayorBicycle Mayor

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ただ、世界の各都市の状況、課題はそれぞれです。自転車市長の仕事は都市によっても違ってきます。普及率も人々の考え方も違うわけで、自転車先進国オランダのアムステルダムと、インドのムンバイ、イタリアのミラノ、レバノンのトリポリ、南アフリカのケープタウン、メキシコのメキシコシティとは、それぞれ違って当然です。

例えば、インドには現在7人の自転車市長がいて、10人ほどが待機中、少なくとも50人が市長になることに興味を持っています。しかし、同じインドの各都市でも課題は異なり、取り組みも違っています。北部の都市、ジャイプールの自転車市長、Pooja Vijay さんは、大気汚染と交通渋滞から街を救うために戦っています。

世界で最も大気汚染のひどい12都市のうち、11都市はインドにあります。自転車市長プログラムを「静かな革命」と呼んでいる、Pooja さんは、まず人々に自転車を提供するところから始めなくてはなりません。そのため、“PinkPedals”という自転車のシェアプログラムを進めています。

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トルコのイスタンブールの自転車市長、Murat Suyabatmaz さんは、これまでいくつかのサイクリング協会を設立しましたが、今はイスタンブールの自転車インフラを変え、人々が安全に走行できるようにすることに力を入れています。トルコの政治情勢の中では、野心的な取り組みです。

カナダ、ビクトリア州の自転車市長、Susan Stokhof さんは、カナダで最初の自転車市長です。カナダにも、まだ自転車はスポーツやレクリエーションでしかない地域があります。自転車を都市交通の手段として定着させるため、自転車文化や人々の意識を変え、幸せで健康的な、人間中心の都市の重要性を説いています。

お膝元であるアムステルダムの自転車市長は、Katelijne Boerma さんです。言うまでもなく、アムステルダムの大多数の地域では、自転車が広く受け入れられています。しかし、意外にも自転車がまだ受け入れられていないコミュニティもあるのです。相対的に貧しいとされる地域もそうです。

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アムステルダムには、移民も含め、たくさんの異なる文化を持った人たちが住んでいます。その中には自転車に乗る習慣が全く無かったり、自転車を安全な移動手段と考えていない人々のコミュニティもあります。アムステルダムにも特有の事情があり、いろいろな取り組みが必要とされています。

その一つで、注目されたのが、さらにアムステルダムの、「こども自転車市長」を任命したことです。9歳の女の子、Lotta Crok ちゃんです。比較的自転車の走行環境に恵まれているように見えるアムステルダムですが、子どもの目から見ると、また違って見えます。

アムステルダムの混沌とした、自転車通勤・通学のラッシュアワーは、子どもにとって危険と混乱をもたらします。クルマやスクーターの危険だけでなく、慣れない観光客が自転車に乗り、突然止まったり、右往左往するのも子供たちを危険にさらしていると訴えています。

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Lotta ちゃんは昨年、サイクリングを安全で楽しいものにするためのプランのコンテストで優勝し、こども市長になりました。彼女の希望は、国鉄が運営する自転車シェアプログラムに、子供用の自転車や、親と乗れるタンデム自転車を追加することです。

彼女の両親はクルマを持っていないので、他の街へ行く時には、鉄道とシェア自転車を使います。しかし、そこには子供用の自転車が無く、タンデムもないので、父親の自転車の荷台に乗る必要があります。これは危険でもあり、彼女の不満でもあるのです。

この指摘を受けてオランダ国鉄は、まず彼女の祖父母の住む駅に子供用のシェア自転車を配置しました。今後も各駅に子供用の自転車を配置する検討をはじめています。自転車先進国の都市でも、子どもから見ると、危険や不満、改善してほしい点はいろいろあるわけです。



アムステルダムのこども市長、Lotta ちゃんは今後、本物のアムステルダム市長との面談を行い、子どもが自転車の乗り方を安全に習得できる自転車公園の設置などを要望する予定です。9歳にも90歳にも快適に自転車に乗ってもらうことが、大人自転車市長の、Katelijne Boerma さんの取り組みでもあります。

この自転車市長、なかなか興味深い取り組みです。さすが自転車先進国オランダですが、賛同する国や都市、市民は世界中に広がっています。そして、自転車は単なるレクリエーションではなく、有益な都市の交通手段であり、これからの都市の移動に不可欠、増やすのは必然との認識が共有されつつあります。

日本でも、特に都市部では考えていかなければならない問題でしょう。日本では、海外ほど自転車の役割や重要性が認識されていませんが、これが世界のトレンドです。いずれ、日本でも、さらに自転車の活用ということが求められていくようになるでしょう。

近年は、日本の自治体でも自転車を意識しはじめ、観光客誘致など地域振興の観点から、その走行環境の整備を考え始めるところが出てきました。しかし、役人や政治家の目と、市民の目線とは乖離する部分があるのも事実です。日本でも、民間の立場の自転車市長という手法は有益なのではないでしょうか。




東京・池袋で高齢者運転のクルマが暴走、母娘が死亡しました。高齢者の運転の問題の対策が強く望まれます。

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