May 16, 2019

日本の医療を持続可能にする

dfb日本の医療費は増加し続けています。


医療の進歩によって、日本人の平均寿命が伸びてきたことは喜ばしいことですが、医療費は増え続けています。問題は、日本の医療費がGDPや国民所得の伸びを上回るペースで増大していることです。つまり、このままでは健康保険どころか、日本の医療制度自体の存続が危ぶまれる状態です。

Photo by 倶楽部オータム,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.医療費の増大は複合的な要因があり、簡単に論じることは出来ません。医療の対象となる病気も変わってきており、医療が高度化する中で、医療費は自然と増えてしまうという性質があります。これは、わが国だけの問題ではなく、先進諸国に共通する課題です。

ただ、日本特有の要因もあります。病床数の多さ、入院日数の長さ、薬剤価格の高さ、薬剤使用量の多さ、検査の多さ、受診頻度の多さなどが指摘されています。MRIやCTなど高度な検査機器の国民一人当たりの台数が日本は断トツに多いという話も聞きます。

医療保険制度改革が大きな争点となっているアメリカの例を挙げるまでもなく、いつでも、どこでも必要な時に、かかりたい病院に診てもらうことが出来る、わが国の国民皆保険制度は誇るべき仕組みです。しかし、ちょっとした風邪や、かすり傷でも病院に行ってしまう人が多いのも確かでしょう。

国民一人当たりの年間受診回数は、先進諸国との比較でも4倍以上の多さです。病院に行ったからには、何らかの治療、クスリも出してほしいと考える人は多いはずです。よく言われるのは、ただの風邪でも、抗生物質の処方を望み、医者も出してしまうということがあります。、

一般的なウィルス性の風邪に抗生物質は意味がないそうです。にも関わらず、日本では諸外国に比べて抗生物質が乱用されています。結果として耐性菌の増加も懸念されています。これは一例に過ぎず、日本では医療材料や薬剤費の価格が高く量も多いため、医療費に占める割合も断トツに高いのが現状です。

病院も経営していかなければなりませんから、どうしても収入、すなわち医療費や診療報酬は増えがちです。構造的な問題があります。日本の病院は薬を出しすぎると言われてきましたが、医薬分離が進んだ結果、その誘因はなくなりました。しかし、病院がクスリを出さないと、患者に来てもらえません。

Photo by Shampoorobot,under the GNU Free License. 患者は、クスリを飲んでいえば、とりあうず安心しますから、処方してもらうために定期的に通院します。クスリを出すのは薬局で、病院には直接のメリットが無いとは言え、やはり出す傾向にあるのでしょう。国際比較において、いまだに日本の医療費に占める薬剤比率が断トツに高いことが、それを物語っています。

ちなみに、病院の前に、いわゆる門前薬局をよく見ますが、日本の調剤薬局の数は、コンビニの数を上回る多さです。相当に儲かるからなのは間違いないでしょう。今どきは、クスリを棚から出すだけなのに、高給で薬剤師を雇っても十分ペイするほどです。クスリの高さや量の多さが医療や健保財政を圧迫しています。

自己負担割合が相対的に低いため、複数の病院を掛け持ちする人も多いと言われています。高齢者など、日常的にたくさんの種類のクスリを処方されている人も多く、ポリファーマシーと呼ばれる不必要な処方、過重重複投与、不適正処方が問題になっています。

よく、病院の待合室が、高齢者の社交場のようになっていると揶揄されます。いつも来ている知り合いの姿が待合室に見えないと、具合が悪いのではないかと心配するという笑い話がありますが、笑えない部分があります。さらに、たくさん処方されて服用しない、残薬の問題もあります。クスリが無駄になっているのです。

かかりつけ薬局を持たせるようにして、クスリの重複や不要なものを止め、無駄を省くような取り組みも始まっています。しかし、病院や薬局の問題だけでなく、患者の方にも過度にクスリを望む傾向があり、薬剤費を含めた医療費の増大に歯止めがかからない状況になっています。

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さて、医療費の増加は先進諸国に共通する問題ですが、イギリス、ウェールズでは新しい取り組みが始まりました。カーディフにある2つの医療センターでは、なんとクスリを処方する代わりに、『自転車』を処方し始めたのです。具体的には、市内のシェア自転車サービスなどを利用してもらいます。

英国医療委員会は、自転車で運動させることは、クスリを服用するのと同等以上の効果があると考えています。同時に、クスリの代わりに運動をさせることで、医療費の削減、費用効率の改善を見込んでいるのです。副作用もなく、一回に最大30分無料のシェア自転車の利用などで、患者の負担も少なくてすみます。

世界各国の研究が示すように、生活習慣病や心血管疾患などでは、運動することで大きな改善効果が見込めます。高血圧や肥満などに対しても、その有効性は示されています。クスリを否定するものではありませんが、クスリを処方するより効果的と考えられるケースも多いはずです。

肥満が多いのはアメリカ人というイメージがありますが、実はイギリスも同じくらい、肥満が多く問題となっています。イギリス政府も、増加する肥満に危機感を持ち、週に少なくとも2.5時間以上の中程度の運動、もしくは75分の活発な運動を推奨しています。しかし、必要な人ほど運動しません。

カーディフでこのプログラムに参加している医師も、これまで患者の運動に多くの利点があることは当然認識していたと話します。ただ、患者に運動をするように注意はしても、具体的に関与してきませんでした。クスリの処方と同じように、明確に患者に自転車の利用を促すことに、手ごたえを感じているようです。

これは、単なる自転車の推奨ではなく、治療の一部です。クスリの定期的な服用を求めるのと同じように、具体的、かつ定期的に自転車に乗ることを求め、患者の病気を改善していこうというものです。患者も、同じ運動するにも自転車に乗るくらいならば、比較的容易で受け入れやすいのではないでしょうか。

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イギリスの研究機関は、定期的な運動によって、一人当たりの医療費を、1750ポンドから6900ポンド節約できると見ています。クスリのような副作用もなく、むしろポジティブな思考や幸福感など、メンタル面での利益も得られると考えています。

自転車でトレーニングしろと言うのではありません。仕事に行く時に使ったり、友達を訪問したり、買物に行ったりと、日常生活の中に組み込んで乗ればいいのです。これによって、医師や研究者は、例えば心臓病による死亡リスクを52%減らせるなど、さまざまなメリットがあると考えています。

運動が健康にいいことは多くの研究者が認めるところであり、こうしたプログラムはアメリカなどでも始まっています。生活習慣病や肥満などの治療として役立つ上に、クスリの服用を減らし、医療費の削減にもつながるならば、一挙両得の取り組みと言えるでしょう。

ドイツのことわざに、「トラックいっぱいの薬より一台の自転車」 というのがあります。昔から身体にいいことはわかっていて、自転車は推奨されてきました。今さらですが、自転車を治療の一環として、具体的に指示し、患者に乗るようにさせていこうというわけです。

これは日本でも使える手ではないでしょうか。自転車に乗るようになって、大きく痩せたり、健康になった経験を持つ人もあると思います。逆に言うと、そういう経験のない人が生活習慣病などに悩まされるということでしょうが、医者の処方によって、自転車に乗るきっかけを与えることになるでしょう。

クスリをのむのは簡単だけど、自転車に乗って運動するのは大変という人もあるでしょう。しかし、今まで食わず嫌いだった人も、乗ってみれば案外楽しく感じ、意外に続くものです。日本人は、自転車の所有率も高いですし、健康効果を考えれば、自転車なんて安いものです。むしろ交通費が減るかも知れません。

処方して、きちんと乗るかという問題はありますが、今どきなら、スマホなどを使って、それを確かめたりする方法も考えられます。ゲーム感覚で楽しめるようにしたり、インセンティブを与えることも可能でしょう。週に合計で2.5時間程度など、慣れれば苦も無く出来るはずです。

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問題は、この方法が、病院や薬局にとってありがたくないことでしょう。民営である以上、病院にも相応の収益が必要ですが、自転車を処方しても収益に貢献しません。既得権を持つ利害関係者の政治的圧力によって、このような取り組みは阻止されてしまうかも知れません。

医療費の増大を、病院だけの責任と断じるものではありません。問題は、病院の経営上、自転車よりクスリを処方せざるを得ないという構造です。もし、この構造問題を解決できるならば、クスリを減らし、運動によって同等以上の効果を得ると同時に、医療費を減らせる可能性があると思います。

簡単なことではないでしょうが、病院の診療行為の内容によって、その報酬が決まるのではなく、患者が健康になったという結果で評価することは出来ないものでしょうか。クスリ以外の選択肢を選ぶことで、安いコストで結果を出したら、病院にインセンティブを与える仕組みに変えられたらと思います。

イギリスでの取り組みも、まだ試験として始まったばかりで、どうなっていくかはわかりません。ただ、日本の医療費がGDPや国民所得の伸びを上回るペースで増大し、医療が破たんする事態は、誰にとっても避けるべき未来なのは確かです。自転車の処方、真剣に検討するに値する方法ではないでしょうか。




丸山穂高議員の戦争発言は論外、酒でなくても普段から考えてなくては出ないでしょう。議員辞職すべきです。

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