July 15, 2019

意外と見過ごされがちな税金

貿易は人々の暮らしを豊かにします。


国によって幅はあるものの、貿易がGDPのうちの大きな割合を占めるのは間違いありません。単純に考えても、農産品とか工業製品でも、国内の需要には限度がありますが、もっと生産して外国に売れば、そのぶん利益が上がります。より豊かになるわけです。

自国では産出しない産品を、海外から輸入することも出来ます。自国で生産できないもの、割高なものは、安く輸入出来れば、家計にとってプラスでしょう。得意な産業、競争力のある分野に特化し、そうでないものは輸入する、すなわち国際分業したほうが効率的なのは明らかです。

今まで余剰が出ていた産品とか、余らせてきた生産能力が利益に変われば、単なる差引ではなく、お互いに富が増えることになります。世界経済の成長にも大きく寄与しているわけで、貿易が古来から産業を育て、雇用を生み出し、人々の暮らしを豊かにしてきたのは間違いありません。

ただ、基本的に貿易の増大は世界経済の拡大につながりますが、そう単純なものでもありません。米中貿易戦争を挙げるまでもなく、国の利害が絡むため、いろいろと問題を引き起こします。過去に、関税同盟や貿易協定によるブロック経済化が世界大戦を引き起こしたのも事実です。



もっと身近な例で言えば、日本の自転車市場では、中国製の格安ママチャリが席捲しています。身近なアシとしての自転車を安く買えるのはメリットです。しかし、格安なぶん粗悪なものも多く、耐久性に欠けます。破損の危険性が高いだけでなく、すぐ壊れるので、短い期間で使い捨てのように買い替える人も少なくありません。

壊れたら、駅前などに放置されます。壊れなくても放置自転車として撤去・移送されたら、手数料などを取られるので、引き取りにいかない人も多いと言われています。これが、放置自転車を増やす要因にもなっており、資源の無駄だけでなく、撤去移送のために多額の税金が使われることにもつながっています。

国内の自転車産業に打撃となる国もあります。そうした国では、安い自転車の輸入は大きな問題となるでしょう。日本でも、昔は自転車の製造が盛んでしたが、今は衰退したり、海外生産になっています。その部分の影響は小さいですが、あまりに安い自転車が輸入されると、いろいろと弊害もあるわけです。

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そこで、関税をかける国もあります。日本の自転車の関税はゼロです。しかし、世界を見渡せば、自転車に高関税をかけている国は少なくありません。例えば、EUは自転車に20%前後の関税をかけています。域内の自転車メーカーの保護や、格安で粗悪なものを排除して安全を確保する意図もあるようです。

さらにEUは、中国製の自転車に対しては、反ダンピング(不当廉売)関税措置として、税率48.5%を課しています。このため、EUの自転車市場での中国製自転車のシェアは4%ほどしかありません。中国製自転車であふれている日本市場とは大きく異なります。

この中国製自転車に対するEUの反ダンピング関税は、これまで延長が繰り返されており、今年さらに5年間の延長が決定しています。また、中国製の電動自転車に関しては、やはり反ダンピング関税として、最高で79.3%という高関税を課すことも決定しています。



EUの中国に対する反ダンピング関税は自転車だけではありませんが、中国はこうしたEUの措置に強く反発しています。自転車は排ガスもなくエネルギーを使わないエコな乗り物なので、当然、環境物品として扱うべきだとの強引なこじつけで、関税撤廃を求めています。このこじつけにはEU側が猛反発しています。

もちろん、自転車だけについて、EUと中国がもめているわけではありませんが、中国では自転車の製造も雇用を生む大事な産業であり、そのほかの国内事情もあって、自転車関税の撤廃にこだわっています。最大79.3%のEUと比べて、日本は0%です。日本に中国製自転車があふれるわけです。

関税は、国内産業の保護のためだけにとどまりません。発展途上国などでは、国家財政の大きな収入源となっていることもあります。日本の歳入に対する関税の割合は2%以下ですが、発展途上国などでは、関税による収入が国家全体の収入の50%を超えている国も多くなっています。



日本でも、農産品などには高い関税をかけています。それぞれの国の事情もあるわけで、高関税を一概に非難するわけにはいきません。貿易政策は国によってそれぞれで、日本では中国製自転車が安いのは当たり前になっていますが、世界を見渡せば、自転車が安くない国も多いのです。

ブラジルもそのうちの一つです。ブラジルの自転車の関税は70%以上となっています。反ダンピング関税ならともかく、通常の関税で70%は高すぎる感が否めません。ほかの物品と比べても差がありすぎます。例えば、ブラジルでは、家具に対する関税は12%です。

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ただ、急に税金が上がったのなら別ですが、国内での、この物品の価格はこんなものと、他国に比べて高いとは気づかないことも多いはずです。日本人の多くも、自転車の関税率が何%か知らないと思います。ブラジル人も、大多数の人は、自転車に高い関税がかけられていると知らないと思われます。

このことに気づいたのが、アメリカの自転車専門誌“BICYCLING MAGAZINE”です。もちろん、政府機関ではないのでブラジル政府に異議を唱えたり、交渉する立場ではありません。そこで、市民に向けたユニークなキャンペーンを始めました。“The Outlaw Bike”です。



このバイク、フレームなどが木製ですが、たんなるウッドバイクではありません。分解して組み立てなおすと、なんとテーブルとチェアになるのです。つまり家具です。全く同じものですが、自転車として輸入すれば関税は70%、家具として輸入すれば12%です。

金額だと、家具として輸入したら、571ブラジルレアル、現在の為替で約16,500円です。でも、まったく同じものを自転車として輸入したら、1,700ブラジルレアル、およそ49,000円です。この差は大きいでしょう。ブラジル人が知れば怒るに違いありません。ちなみにアメリカの自転車関税は8%程度です。

ブラジルでも最近、健康や環境に対する意識が変わってきており、人々が自転車に乗るようになってきました。都市部の渋滞も酷いため、自治体も自転車レーンを整備するなど、自転車の活用に力を入れ始めています。自転車の普及率はまだまだ低いので、自転車の関税を下げてもいいはずです。

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もちろん、中国のダンピングによる一方的な輸出拡大は問題ですが、不当廉売でない欧米の自転車にまで高関税を課すのは正当化できないでしょう。このキャンペーンが浸透するかはわかりません。でも、貿易相手国が要求しないのなら、国民が政府に訴えるしか、関税を下げる方法はないでしょう。

自由貿易が絶対の正義だと言うつもりはありません。関税の必要性も排除しません。ただ、やはり自由貿易は世界経済の発展に寄与し、人々の生活を豊かにします。保護貿易が世界的な悲劇をもたらした歴史も顧みて、なるべく関税や非関税障壁をなくし、貿易を盛んにしていくべきだと思います。




関東ではあまり気温の上がらない日が続いています。暑くなくていいですが、海の日としては少し寂しいですね。

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