August 26, 2019

好みやこだわりは人それぞれ

自転車の好みは、人それぞれです。


特に深く考えず、量販車や人気のモデルを選ぶ人もいれば、デザインや機能、その他、独自の好みがあって、それにこだわる人もいます。他の人から見ると不思議だったり、必ずしも合理的でなく思えたりしますが、理屈ではなく、どうしても譲れない、譲りたくないこともあるでしょう。

旧ユーゴスラビアから独立した国、中央ヨーロッパに位置するスロベニアの首都リュブリャナに住み、研究者でデザイナーでもある、Gregor Fras さんもそうでした。必要に迫られて買った市販のシティサイクルが、どうしても気に入らなかったのです。

Photo by Ewa Dryjanska,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.ある時、自転車通勤にうってつけの距離にデザインスタジオを借りました。その時に持っていたのはマウンテンバイクで、街乗りには適していなかったので、通勤用に普通のシティサイクルを購入しました。何の変哲もないシティサイクルでしたが、違和感を禁じ得ませんでした。

まず、本質的に1世紀前の技術が使われているとしか思えないような、設計の古さです。Gregor Fras さんは、自他共に認める熱狂的な自転車好きでしたが、この自転車に乗っていて楽しくなかったのです。また、彼が大のテクノロジーマニアであったことも理由でした。

そこで、シティサイクルをいろいろ探してみましたが、調べれば調べるほど、自分が実際に欲しい自転車がないことを思い知らされました。ロードバイクやマウンテンバイクには、魅力的なモデルがたくさんありましたが、シティユースのための自転車は、100年前のものと変わらなく見えたのです。

市販のシティサイクルには満足できず、だんだん自分用のカスタムバイクを作りたいと思うようになりました。そして、自分が考える「完璧なバイク」を目指すうちに、構想は複雑になり、単に自分用の自転車の改造の範疇を超え、会社を作って製品として開発するまでになってしまいました。

近年は電動アシストのシティサイクルも増えていますが、市販されている電動アシスト自転車の最大の欠点は重量だと感じました。バッテリーが切れてしまうと、乗りたいと思えないほど、重くて不便な自転車になってしまうという点が不満でした。

NoordungNoordung

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そこで、カーボンファイバーでフレームを構成し、軽量化にこだわった電動アシストにしました。実際の市街地走行では、半分ほどしかアシストが必要なかったので、必要に応じて、電動アシストを効かせないことも出来るようにしました。健康のため、運動したいと思う時には、自分の脚力だけで走れます。

電動アシストバイクにおいて、バッテリーは重要で中心となるパーツです。他社のバイクは、バッテリーを目立たないように隠したりしていましたが、彼は堂々と見せるべきだと思いました。そこで、トップチューブの中央というメインの場所に配置することにしました。

オートバイなら、ガソリンタンクがくる場所です。ここにバッテリーを持ってきたのには、もう一つ理由があります。Gregor Fras さんは大の音楽好きでもありました。ガソリンタンクを模したような形のバッテリーに、スピーカーを搭載するというアイディアを思いついたのです。

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彼の音楽好きは、自らバンドをプロデュースしたりするほどです。音楽は間違いなく彼の人生で最も重要なものの1つであり、どこへ行くにも音楽と一緒です。これまではヘッドフォンを使って音楽を聴いていましたが、このことの危険性にも気づいていました。

言うまでもなく、ヘッドフォンは耳をふさいで、周囲の音を遮断してしまいます。多くの国が禁止しているのも、その危険性ゆえです。そこで、ヘッドフォンのように耳をふさがずに、自転車で音楽を楽しめるようにしたかったのです。自分の好きな音楽と自転車、2つを融合させるアイディアです。

自転車の中心に配置されたバッテリーには、周波数範囲が70ヘルツから20キロヘルツ2つの20ワットRMSスピーカーが内蔵されており、ライダーに向かって45度の角度になっています。スマートフォンとBluetoothで接続し、このスピーカーが好きな音楽を素晴らしい音で再生します。

NoordungNoordung

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テストライドを行ったライダーは、まるで映画の中にいるようだと話したそうです。サイクリングしながら音楽を聴いた、これまでで最高の体験と感じたと言います。少なくとも、Gregor Fras さんは、音楽を加えることで、サイクリングはさらに素晴らしいものになると考えています。

もう一つ、こだわった機能があります。それは大気汚染の検知、すなわちPM2.5とPM10を追跡する粒子センサーを取り付けたことです。これにより、走行中にリアルタイムで空気をモニターし、データを蓄積することが出来、スマホで確認することも出来ます。

日本人は、都市の大気汚染と言うと北京やニューデリーなどの話かと思ってしまいますが、ヨーロッパでも深刻な大気汚染が起きています。ヨーロッパでは、ディーゼルエンジンのクルマが広く使われているため、大気中の微粒子状物質や、二酸化窒素などの有害物質が大きな問題となっているのです。



このブログでも何度か取り上げましたが、欧州環境庁(EEA)の発表によれば、改善はされつつはあるものの、依然としてWHO(世界保健機構)が推奨する基準を超えており、大気汚染が原因で早死にする死者の数が地域全体で毎年50万人以上に上っていると言います。

イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ハンガリー、ルーマニアなどは、EUの環境基準に従っていないとして欧州委員会から提訴までされています。イタリアやオーストリア、ハンガリーなどと国境を接し、ヨーロッパの中央に位置するスロベニアも汚染被害の当事者なのです。

同じ街でも、大通りより裏道のほうが汚染は少ないでしょう。この機能を使えば、より空気がきれいなルートで通勤が出来ることになります。少なくとも、公的機関がモニターする限られた地点だけでなく、実際の街中の観測が可能です。このデータは、利用者から収集されてクラウドに蓄積され、いろいろに活用される予定です。

NoordungNoordung

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Gregor Fras さんのこだわりの詰まったこの自転車は、“Noordung”と名付けられました。これは、スロベニアのロケットエンジニアの、Herman Potocnik のニックネームにちなんでいます。Herman Potocnik は、静止衛星や宇宙ステーションを、なんと1920年代にすでに構想していた宇宙旅行の先駆者です。

スタンリーキューブリック監督の有名な映画、2001年宇宙の旅にも大きな影響を与えたと言われています。このスロベニアの偉人のニックネームから命名しました。Gregor Fras さんは、この自転車を設計するインスピレーションにもなったと語っています。

“Boombox”と名付けられたバッテリー部分は、取り外して充電することが出来ます。また、スピーカーやセンサーの役割に加え、バッテリーはLEDのライトにも使われ、USB経由で他の機器の充電にも使えます。取り外せば、セーリングやキャンプなどアウトドアで使えるポータブルスピーカーにもなります。

NoordungNoordung

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電動アシストのモーターは、最も軽量なタイプで非常に静かなので音楽の再生を妨げません。バッテリーの航続距離は標準で50キロ、非アシスト状態を組み合わせたハイブリッドモードにすれば100キロ程度だそうです。音楽の再生だけなら最大100時間楽しむことが可能です。

ワイヤー類はフレーム内に収められています。4つのタイプが用意され、電動アシストでないタイプもあります。それを後から電動アシストにアップグレードすることも可能です。アシストでないスピーカー付きなど、4つのグレードが選べ、カスタマイズ可能なグレードもあります。

Gregor Fras さんは、都市交通としての自転車も、単なる移動手段とするのではなく、その行程を楽しむべきと考えています。“Noordung”は、イコール旅の喜びであり、単体でも世界最軽量クラスのクルージングバイクです。中心に据えた“Boombox”は新しい体験を生み出す多機能端末との位置付けです。

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自転車としての評価、好き嫌いは分かれると思います。クラウドファンディングサイトで行った資金調達では目標の半分ほどしか集まりませんでした。ただ、専用サイトでオンライン販売を開始しており、Gregor Fras さんの考える革新的で、最高品質の美しくてスマートなシティバイクは形になったわけです。

軽さやデザインだけでなく、音楽や大気汚染センサーなど、自転車の本質ではない部分にもこだわったことで、ユニークな自転車になっていることは間違いないでしょう。自転車をプロデュースする人の好みや、こだわる分野によっては、まだまだ新しいタイプの自転車が生まれてくる可能性がありそうです。




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