December 21, 2019

治療が無理なら予防しかない

2025年に700万人に達すると見られています。


認知症の患者数です。2012年に約462万人、65歳以上の高齢者の7人に1人でしたが、2025年には約700万人、5人に1人になると見込まれています。認知症の前段階とされる、軽度認知障害(MCI)と推計される人も同規模と推定されるので、認知症またはその予備群の割合は、さらに高くなります。

介護する家族も増えることになります。クルマの運転の問題や、鉄道事故に巻き込まれて賠償責任が生じるなど、さまざまな懸案も増えていくと考えられます。日本だけではなく世界的な問題ですが、経済コストという点でも、社会的な課題となるのは必至です。

認知症患者数Photo by MethoxyRoxy,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

日夜研究が進められていますが、現在の医学では、まだ認知症を治療する方法は見つかっていません。発症してからの治療が困難だとするならば、予防に力を入れるしかありません。予防の研究も進められています。高齢になっても認知症にならない人がいるわけですから、何か有効な方法があるはずです。

以前は、成人すると脳細胞は増えることがなく死滅する一方だというのが通説でした。しかし、昨年発表された研究では、人間は年齢にかかわらず、生涯ずっと脳の神経細胞(ニューロン)を増やしていることが分かったそうです。ただ、この増やす能力には個人差があり、減少したり、消えてしまうこともあると言います。

脳が、年齢にかかわりなく新しいニューロンを作ることができたとしても、ニューロン同士で新しいつながりを作る能力や、酸素を運ぶ能力も衰えるということがわかってきました。これも、年齢とともに認知力などが衰える理由だと考えられます。

人によって認知症になる人と、ならない人がいるのは、こうした能力の違いによると考えるのが自然でしょう。つまり、なるべくニューロン生成能力、つながりを作る能力を減らさず、増やすようにすればいいことになります。まだ明確に解明されたわけではありませんが、少しずつわかってきたこともあります。

This image is in the public domain.

脳神経細胞の生成能力や、新しいつながりを作る能力を向上させる方法については、さらなる研究が必要です。しかし、専門家は、「運動」や「食生活」などが改善に役立つだろうと考えています。そして、脳に対する刺激も重要な要素であることがわかってきました。

現在、「運動」が脳機能の改善につながる理由を説明する包括的な理論モデルはありません。しかし、神経科学の観点や、脳と身体の進化の過程から考えて、脳に対する大きなストレス、すなわち認知を要求するような運動が、脳のニューロン生成能力に有益なのではないかと考えられています。

Scientific American”は、1845年に創刊された歴史のある、有名なアメリカの科学誌です。あのアルバートアインシュタインを含む多くの著名な科学者が、記事を寄稿してきました。その“Scientific American”に最近掲載された論文にも、こうしたことが書かれています。

実験でマウスを運動させると、脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれるタンパク質が生産され、これがニューロンの生成や維持を促進します。人間に、定期的な有酸素運動をしてもらった観察でも、このBDNFが増加し、記憶をつかさどる海馬のサイズを増やし、高齢者の記憶の改善につながることがわかりました。

Scientific AmericanScientific American

マウスを使った実験では、環境によってニューロンの増え方、減り方が違います。例えば、同じ運動をさせるのでも、同じことの繰り返しと、環境に変化がある場合とでは、ニューロンの生成が3倍も違ってくるという実験結果が得られています。環境の変化が脳への刺激となっていると思われます。

人間の場合でも有酸素運動は有効ですが、単なる有酸素運動よりも、脳への要求が増加する運動のほうが効果的と考えられるというのです。ただの有酸素運動でも、BDNFの増加や血流の改善などによる効果は見込めますが、脳への要求、つまりストレスを大きくすると効果的だというのです。

例えば、ジムに行ってエアロバイクをこぐような運動では、脳に対する負荷があまりかかりません。特に周囲の環境も変化しませんし、一定のリズムでペダルをこぐだけです。つまり、脳に対するストレスは大きくありません。ニューロンの生成・維持効果も相対的に小さいと考えられます。

これが、実際に自転車に乗って、屋外を走ると違ってきます。信号や標識を見たり、周囲のクルマや歩行者などにも注意する必要があります。コースも考えなければなりませんし、路面の状況とか空模様、沿道の様子が気になったりします。とっさの判断が必要なアクシデントも起こるでしょう。

Scientific American自分が今どこを走っていて、どういうコースをとるか、という思考には、自分の位置を把握したり、周囲の景色などを認識する空間ナビゲーションが必要になります。この空間把握にも記憶をつかさどる海馬が大いに影響します。自転車で屋外を走ると、実はかなり脳に負荷がかかっているのです。

別に危険が多い場所を走る必要はありません。普通に楽しく走ればいいだけです。とくに意識しなくても、どこを走っているか把握しているはずです。本当に何も考えずに走っていたら、帰ってくることは出来ないでしょう。自然と脳にストレスがかかっているわけです。

これまでも有酸素運動は認知症予防に有効とされてきましたが、出来れば屋内ではなく屋外を実際に走るべきということになります。もちろん、効果的なのは自転車だけではありません。例えば、クロスカントリーランニングなど、運動に認知タスクを組み合わせる運動はいろいろあります。ただ、自転車は手軽でしょう。

ジムでエアロバイクなどで汗を流す人は多いと思いますが、認知症予防の点では、屋外で自転車で実際に走ったほうが、はるかに効果があることを示唆する研究は増えていると言います。同じ運動量だったとしても、脳の活動量が違うからだと考えられます。

若いうちから、認知症予防なんて考えていない人は多いと思います。しかし、認知症は症状が出る前、かなり若いうちから原因物質の蓄積が始まるとも言われています。可能であれば、若いうちから運動しておくに越したことはないでしょう。

今のところ、近い将来も認知症の治療法が確立する見込みは立っていません。認知症を避けたいと思えば、発症する前に予防するしかありません。もちろん、自転車に乗っていれば認知症が防げるという保証があるわけではありません。でも、普通に健康増進にもなりますし、乗っておいて損はなさそうです。




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トランプ大統領が弾劾訴追されましたが支持率は堅調です。むしろ民主党は墓穴を掘った形となるのでしょうか。


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