January 23, 2020

都市化がもたらす巨大リスク

前回は都市化について取り上げました。


世界的に都市化は進展しており、都市部の人口は増える一方です。人口が集中すれば、建物は高層化することになるでしょう。しかし、建物とは違って、道路の通行容量は簡単には増やせないので、移動や輸送のための道路スペースが不足するのは避けられません。

地下鉄建設とか、高架道路や地下トンネルなども考えられますが、すでに過密な都市への建設は容易ではありません。クルマと比べて大幅に空間効率の良い自転車を使うというのは有力な選択肢です。将来は、自動運転の自転車も活躍するかも知れないという話題でした。

space in cities
(GIFファイル)

都市化で過密になる大都市で、道路のスペース効率を考えたら、クルマの自動運転の時代になっても、むしろ自転車が重宝されるとしたら、自転車好きとしては愉快な話です。しかし、前回それで話が終わってしまったのが気になるので、もう少し書いておきたいと思います。

高度経済成長期の日本や、お隣り中国の例を挙げるまでもなく、都市化が経済成長をもたらしたのも確かです。しかし、一方でさまざまな歪みを生み、問題を山積させています。厄介なのは、その多くが解決の容易でない難しい問題であることです。

地価の上昇や住環境の悪化、交通渋滞や満員電車、大気汚染やその他の公害、ごみや生活排水の問題、交通事故、各種の生活インフラの不足、ヒートアイランドや環境面の負荷、都市のスラム化や格差の拡大など、都市化がもたらす弊害は多く、どれも深刻な影響を及ぼしかねません。

Photo by Yodalica,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

大都市に人口が集中すると、地方は過疎化します。いわゆる限界集落か増えるだけでなく、地方の市町村でも人口減少によって、必要な行政サービスが維持できなくなったり、商店やスタンドといった生活に欠かせないインフラが消えるなど、生活がきわめて不便になっていきます。

人口が減って経済が縮小し、雇用が失われ、仕事がなければ若者は出ていきます。さらに過疎化を招く悪循環です。日本でも地方創生が叫ばれたり、都市からの移住などが奨励されたりしますが、都市化のスピードには追いつけず、過疎化の進行を食い止められていません。都市化は一方で過疎化をもたらすわけです。

ところで、都市化が進んで人口の多い都市圏の世界1位は、日本の東京・横浜圏です。昨年のデータで、約3千850万人の人が暮らしています。他にも大阪・神戸・京都圏の14位、名古屋圏の38位などもありますが、日本の都市化問題は東京一極集中の問題でもあります。

東京が抱える都市化の問題はたくさんありますが、それらを差し置いて、一番の問題は災害、それも首都直下地震でしょう。政府の地震調査委員会は、今後30年以内に70パーセントの確率でマグニチュード7程度の大地震が起こると予測しています。これが甚大な被害をもたらすのは間違いありません。

建物が倒壊し、大規模な火災が発生し、地震で決壊した河川からの洪水、もちろん津波が襲う場合も考えられます。政府は最悪の場合、死者はおよそ2万3千人、経済被害はおよそ95兆円に達すると想定しています。しかし、そんなものでは済まない可能性、すなわち想定外の被害も十分に起こりえると思います。

Photo by Hogweard,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by 	Hogweard,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

もし東京で大地震が起きたら、被災する人口も膨大です。多くは救助もされずに命を落とすことになるでしょう。避難所に殺到する人数は、東日本大震災の比ではありません。食料も全く足りず、かと言って救援物資の到着も期待出来ません。衛生状態も最悪、餓死や食料を巡る殺人が起きてもおかしくありません。

居住人口に加えて、周辺地区から通勤している人、帰宅難民も膨大な数になります。被災する人口において、阪神淡路大震災や東日本大震災とは比べものになりません。そして救助や救援、消火活動、避難所収容、インフラの復旧なども、他の地震と比べて格段に困難なものになる可能性は高いでしょう。

備蓄はあっても数日分、人数的にも足りません。東日本大震災でも、当初は救援物資の輸送が困難でしたが、首都直下地震では物資も人手も大きく不足するのは必至です。昨年の台風被害で多くの電柱が倒れて行く手を塞ぎましたが、さらに建物の倒壊や火災などで輸送は困難になるでしょう。衛生状態も深刻になるはずです。

多くの人の、首都直下地震が起きた場合のイメージは、東日本大震災の時のものだと思います。直接の被害の大きさもさることながら、避難生活は、これまでとは比較にならないほど凄惨なものになるはずです。あまりにも人口が集中しているため、その悲惨さが増幅されることになるでしょう。

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さらに、東京は政治や経済の中心です。それらの機能が失われ、多くの人材も失われます。サプライチェーンの分断どころか、多くの企業が存続の危機に陥る可能性もあります。直接の経済損失に加えて、たくさんの労働力や企業そのものが失われれば、復興も困難になります。

東京は、日本経済のエンジンです。そのエンジンが瀕死の状態になれば、日本経済は立ち行かなくなるでしょう。日本経済どころか、日本そのものが存亡の危機に立たされます。都市化のいろいろな問題が吹き飛ぶほど、これは、まさしく日本の超巨大なリスクです。しかし、そのリスクが過小評価されている気がしてなりません。

建物の耐震性の強化や、火災に脆弱ないわゆる木密地域の解消、電柱の地中化などが進まず、救援の道路がふさがれるなど、防災対策、減災対策が追い付いていないだけではありません。それらとは別に、被災人口の多いこと、集中し過ぎていることが、大きな災害をもたらすに違いありません。

一時期は、首都機能の移転などの話もありましたが、まったくの立ち消えとなり、最近は話題にも上りません。このままだったら、誰も見たことの無いような凄惨な状況になる可能性は十分にあります。一部の専門家が指摘していますが、政府の最悪の場合の被害想定は、あまりにも小さすぎたとなりかねません。

Photo by Kakidai,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

少なくとも、そのリスクはあります。防災、減災対策も重要ですが、倒壊や火災が多少抑えられたとしても、これだけの人口の避難生活は、想像を絶する困難になるはずです。やはり、このあまりにも人口が集中した状態は、なんとか是正すべきではないでしょうか。

都市化に逆らって、人口を分散するのは、どこの国、都市でも困難です。日本でも、日本列島改造から地方創生まで、いろいろな政策が試みられましたが、東京一極集中は進むばかりです。しかし、東京の場合は、他の都市のような都市化の問題に加えて、首都直下地震の問題があります。

人口を東京から地方へ、薄く広く分散させるのは得策ではないかも知れません。しかし、首都機能移転や、東京の機能を分割して、一部を移転するような方法は考えられないでしょうか。東京集中による経済的ポテンシャルが失われると危惧する人もいますが、日本が衰退、困窮し、貧困国になるリスクも考えるべきだと思います。

首都機能移転の話は立ち消えになりましたが、リスクは変わっていません。あまりにも東京に人口が集中しすぎています。個々の都市化の問題に囚われていると、大きなリスクを見失いかねません。都市化の問題は、日本の場合、日本存続の問題だと認識すべきではないでしょうか。




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心配された新型肺炎が拡大する事態になっています。春節ですし、パンデミックも懸念される状況が不安ですね。

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