April 19, 2020

コロナウイルスで変わる景色

コロナウイルスは、街の景色を変えました。


世界中の多くの都市がロックダウンをしています。通りからは人の姿が消え、クルマの交通量が激減するなど、ゴーストタウンのようになっている街も少なくありません。今まで、およそ見たことがないような景色が広がり、戸惑う人も多いに違いありません。

少し違う景色が出現している街もあります。既に何度か取り上げていますが、世界中で自転車に乗る人が急増しているのです。人々は密集のリスクを避けるため、地下鉄やバスなどの公共交通機関を避け、自転車で通勤したり、買い物の移動などをしています。

例えば、ニューヨーク市交通局によれば、市内のクイーンズ地区やブルックリンなどのロングアイランドと、マンハッタンやブロンクスとを分ける川、イーストリバーにかかる、全ての橋の自転車の交通量が、昨年より50%以上増えていると報告しています。

 コロナウイルス自転車レーン

通勤や移動だけではありません。スポーツジム、フィットネスクラブ等の閉鎖により、運動する場所を失った人、運動不足を解消したい人、ストレスを発散したい人などがサイクリングをしています。ジョギングもありますが、ヒザなどを痛めにくく、ジョギングより長時間続けやすい自転車を選ぶ人も多いようです。

ロックダウンが行われている中でも、多くの都市で自転車店は必要不可欠なインフラと見なされ、営業を続けています。自転車に乗る人の増加を受け、大幅な売り上げ増加や、修理予約の殺到、シェア自転車の利用者が急増するなど、特需に沸いたようになっている地域もあるようです。

都市によっては、人気のサイクリングルートや、特定のストリートにサイクリングをする人が大勢繰り出し、これもこれまで、あまり見たことの無いような景色が広がっています。ただ、自転車は低リスクとされていますが、大勢の人が密集する形となれば、ウイルスを拡散させることになりかねません。

社会的距離飛沫感染

ベルギーとオランダの研究チームは、一般的に言われている必要な社会的距離、1〜2メートルは、動いている場合には当てはまらないと警告しています。同じ方向へ歩いている時は4〜5メートル、ランニングと遅い自転車の場合は10メートル、速い自転車は20メートルの間隔を空けるべきだとしています。

公共交通機関のリスクを避けて自転車にしているのに、それがウイルス拡散の機会になっては元も子もありません。しかし、ロックダウン中も食料品購入などの移動は必要ですし、免疫力を上げたり、他の病気のリスクを下げるためにも運動は必要です。よりコロナに低リスクな自転車を禁止にするのは難しいでしょう。

そこで、クルマの交通量が減っていることを利用し、クルマの車線を制限したり、通行止めにするなどして、自転車用の走行空間を増やすところが増えています。場所によっては、市内の道路が自転車専用道のようになったり、クルマが隅に追いやられる形になっています。

自転車レーン自転車レーン

例えば、カリフォルニア州オークランドでは、人々が6フィートの社会的距離を維持して移動出来るように、74マイル(約120キロ)にわたって街の通りを改造しました。もちろん、必ずしも恒久的に変わるわけではないにせよ、これも、これまでにない景色でしょう。

歩いて移動する人も増えているため、歩道が狭くて社会的距離が保てないとアピールしている人もいます。たしかに、車道はガラガラなのに、混雑した歩道を通らなければならないのはおかしいと感じるのは当然でしょう。都市地理学者の、Daniel Rotsztainさんは、2メートルの社会的距離が保てないとアピールしています。



ただ、こうした動きに否定的な意見もあります。この方は、カナダのトロント在住で動画でアピールしているのですが、トロント市長は、道路を歩行者や自転車用に開放すると、かえって人々を集めてしまったり、自転車に乗る人を増やしてしまう結果になると考えています。

これは、“Induced demand”、誘発需要として、都市計画の専門家の間では知られている現象です。素人のイメージだと、道路が拡幅された途端、クルマが増えて余計渋滞するような感じでしょうか。自転車や歩行者用スペースを拡張すると需要、すなわち利用者が急に増えて、感染拡大を誘発しかねないと危惧しています。

社会的距離社会的距離

どちらの言い分にも一理あるような気がします。ただ、集計したわけではありませんが、私の見たところ、このコロナ禍で、自転車の走行空間が増えたと報じられている国、地域のほうが多いようです。クルマを通行止めにして道路を解放する以外にも、自転車レーンが増えています。

各国で、自転車レーンが突然出来る事例が増えています。もちろん、コーンを置いたり、簡便なペイント表示をした臨時のレーンもありますが、まとまった資金を投入して自転車レーンを設置するところもあります。都市計画の一端として、戦術的に自転車レーンを広げようという国もあります。

自転車レーン自転車レーン

例えば、ニュージーランドでは、このコロナ禍という状況を利用して、自転車レーンの設置を進めようとしています。クルマの通行量が激減して塗装工事などがしやすい、ニーズが増えているので理解を得やすいといった追い風も吹いています。元々の構想はあったにせよ、なかなか臨機応変な判断と言えるでしょう。

カナダ・ノバスコシア州の州都ハリファックスの評議会は、先週テレビ会議を開き、ウォーターフロントの再開発計画の一部を急遽変更し、クルマから保護された自転車レーンを設置する計画を承認しました。アメリカ・ルイジアナ州のニューオーリンズでは、新しい自転車回廊を作ろうというテレビ会議が開かれています。

自転車レーン自転車レーン

こうした動きは各地にあるようです。政府や自治体全体では、今はコロナ対策に追われているわけですが、道路工事や都市計画などの部署の人は自分の仕事を着実に進めているわけです。ドイツなどでも、このロックダウンの間にレーンを拡幅し、道路標示を描き直しています。市民には、自転車レーンが突然出来たように見えます。

こうした突然レーンが出来る背景には、環境負荷の軽減のため、クルマを減らして自転車での移動を増やすべきという基本的な考え方、方向性があるのは言うまでもありません。基本的な政府や自治体のスタンスがあるからこそ、自転車レーンが突然できるわけです。

渋滞、交通事故、そして大気汚染が問題となっている、特にヨーロッパでは、クルマを都市中心部から締め出す方向に動いています。大気汚染が酷いと言うと、ニューデリーや北京を思い浮かべますが、ヨーロッパの都市でも大気汚染による呼吸器疾患で、毎年多くの人が亡くなっており、社会問題となっているのです。

自転車レーン自転車レーン

さらに、気になるデータも発表されています。ハーバード大学の研究では、「PM2.5のわずか1μg/ m3の増加で、コロナウイルスによる死亡率が15%増加する。」というのです。僅かな量であっても大気汚染によるPM2.5の長期の曝露は、肺へのダメージを蓄積し、そのことによってコロナの死亡率が上がるというわけです。

イタリアのシエナ大学の調査でも、コロナウイルスによる死亡率と大気汚染レベルの間に明らかな相関関係があると結論付けています。医療崩壊の問題は別として、特にイタリア北部で致死率が高いのは、大気汚染がコロナ感染症の致死率において、明らかな補因子となっていると言います。

今まさに、多くの人が亡くなっている中で、長期にわたる大気汚染のことを言っても仕方がないのも確かです。しかし、この最悪な状況の中でも、将来の大気汚染を減らすために、何が必要かということを考えている人もいるわけです。クルマの利用削減は、当然、その一つです。

自転車レーン自転車レーン

都市のロックダウンによって、今まで、あまり見たことのない青空が広がっているところもあるようです。当然ながら、経済活動が抑えられていることの結果でもあります。もちろん経済を元に戻していかなくてはなりません。でも、あの大気汚染で曇った空に戻りたくないという思いもあるでしょう。

自転車レーン設置の増加は、コロナ禍における、自転車の走行需要の急増に対処するという目先の対策だけではありません。この人類の危機ともいうべきパンデミックで、世界的に大変な状況においても、ロックダウンを利用して、災い転じて福となせないか考えている人もいるわけです。

このコロナのパンデミックで、私たちの生活から世界経済まで、グローバル社会から文化、風習、そして国際政治まで、いろいろな面で、かつてない景色が広がっていくでしょう。そして、このコロナが終息した時、元の景色には戻らないことも、たくさんあるのは間違いなさそうです。




◇ ◇ ◇

トランプ大統領が中国批判を強めています。大統領選に向けた責任回避とも揶揄されますが、中国が発生当時、隠ぺいしたり、ヒトヒト感染しないなどと誤魔化さなければ、世界へ拡大せずに済んだ可能性は高いでしょう。トランプ氏でなくても恨み言をいいたくなる人は世界中にいるはずです。後々、世界的な問題となるかも知れません。

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この記事へのコメント
 コロナ対策の安全距離と、自転車走行時の安全な車間距離が、あまり違わないのが面白いですね。レースのドラフティングのつもりで、勝手に間を詰める自転車の多い昨今、走行中に咳でもすれば離れてくれるでしょうか。
 自転車レーンですが、過去の議論にあったように、「完全に隔離されたレーン」になってしまうと、追い越しができなくなってしまいます(複数レーンの車道では、一つ右の車線から追い越す必要がある)。頓珍漢なことの多い日本の行政が、そんなことをしそうで、ちょっと気になっています。
 もう一つ気になるのは、自転車「専用」レーンを作った場合、(歩道走行の場合と同じく)交差点の中に交差点を作ってしまうということがあります。レーン内の駐車は遠慮願いたいですが、左折の場合、自転車レーンをふさいで車道の左端から左折してもらいたいものです。もちろん、自転車はこの時は車の後ろで待つ。このようなマナーが守れないなら、巻き込み事故を増やすだけになりそうな気がします。
 歩道を我が物顔に走り回る自転車を減らすことは急務です。しかし、右側通行、一時停止しない、信号無視などをまずなくさなければならないと思います。
Posted by ひでさん at April 19, 2020 14:41
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
緊急、臨時の自転車通行帯なら仕方ない面はあるにせよ、自転車レーンの設計を素人、ふだん自転車になんか乗らない役人が決めるのは問題でしょうね。
特に日本では、自転車に対する一般の人の認識と、サイクリストの常識が大きく乖離していることもあり、実用面や安全面で問題のある場所も指摘されています。
自転車レーンの形状については、世界各国、各地でも違うスタイルだったりします。道路の余地から、個々の場所の交通状況まで、いろいろな要素があるので、簡単ではありませんが、もっと考える必要はありそうですね。
Posted by cycleroad at April 20, 2020 22:19
 
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