June 15, 2020

サイクリストに配慮した法律

交通ルールは世界で共通化がはかられています。


1968年に締結された、道路交通に関する条約(通称ウィーン交通条約)、道路標識及び信号に関するウィーン条約、1949年の通称ジュネーブ条約といった、いくつかの国際条約によって、なるべく各国の交通ルールを共通化・標準化しようという努力がなされてきました。

旅行や出張などで海外へ行って、交通ルールや標識などが国によって大きく違ったら、歩き回るのにも戸惑うことになります。クルマを運転したり、自転車に乗ったりするのも危険です。クルマの左側通行と右側通行など、統一が困難な部分はあるものの、共通化したほうが便利なのは間違いないでしょう。

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残念ながら、まだ全ての国が批准しているわけではなく、批准国でもルールが全て統一されているわけではありません。いろいろと違いもあります。ただ国は違っても同じ人間、クルマ、自転車であり、道路交通です。安全の為にルール化されるべき基本的な原則、考え方には、それほど大きな差異はないでしょう。

例えば、必要な交差点には信号、または一時停止の標識があります。これが無いと交通が混乱したり、事故が起きる事は避けられません。そして、赤信号や一時停止を守らせるため、罰則が設けられることになります。もちろん、違反する人もいるわけですが、誰でも納得できる自然な考え方でしょう。

Idaho StopIdaho Stop

でも、なかにはユニークな地域もあります。アメリカ・アイダホ州です。アメリカは州ごとに交通法規があるわけですが、アイダホ州には、“Idaho stop”(アイダホストップ)と呼ばれるローカル・ルールがあります。自転車に限っては、場合によって、交差点で赤信号や一時停止の標識を無視してもいいのです。

自分の走る方向が赤信号だったり、一時停止だったりしても、交差する方向に、クルマ・オートバイ・歩行者などが来ていない場合、速度を落として徐行すれば、赤信号や標識を無視してもいいことになっています。安全が確認できれば、止まらずに交差点を通過していいわけです。

Idaho StopIdaho Stop

なぜ、自転車に限って許されているのかと言えば、自転車の特性に配慮しているからです。自転車はエネルギー効率の高い乗り物ですが、動力は自分の脚力しかありません。つまり、人は自転車で走る時、なるべく止まりたくないということに配慮しているわけです。これは、自転車に乗る人なら、誰もがわかる心情でしょう。

自転車で、いったん停止してから再び漕ぎ出すには、エネルギーが余計に必要です。せっかくスピード(慣性)に乗って走行している時には、なるべくなら止まりたくありません。そのほうがラクだからです。心情と言うより、可能なら、誰でも無意識に省エネ走行するでしょう。



自転車に乗る人は止まりたくないだろうから、州内に限ってはルールを緩め、違反を認めるとは、なかなかサイクリストに優しい州です。しかし、そんなに寛容で、事故は増えないのだろうかと気になります。普通に考えると、事故が増えてしまいそうな気もします。

ところが、この“Idaho stop”が1982年に制定されて以降、アイダホ州では自転車の事故が減ったのです。地形や天候、道路環境などが似ている他の州と比べても、大幅に事故率が低いことが明らかになっています。アイダホストップを採用したほうが安全なのです。

Idaho StopIdaho Stop

自転車はクルマと比べてスピードが遅く、クルマと違って運転者の視野を遮るものもないため、安全を確認しやすいことはあるでしょう。もし、交差する方向にクルマが来ていたら、死傷するのは自分です。アイダホストップでなくても、クルマより慎重に安全確認しようとするのは間違いありません。

前方の信号が赤だったり、一時停止の標識があったら、交差する方向が優先です。標識や赤信号を無視するのが危険なのは明らかです。そこを止まらずにスルーしようと思ったら、より確実な安全確認が必要でしょう。余計に注意するから、かえって事故が減るということのようです。



ただし、交差する方向にクルマ・オートバイ・歩行者などが来ているのに交差点に進入したり、来ていなくても減速せずに交差点を横切ったりすれば違反になります。“Idaho stop”ルールにする代わり、違反したら罰金も高くするというスタンスです。

もう40年近く前に制定されたアイダホストップですが、事故の減少という結果が出ているため、他の州も注目しています。アリゾナ、コロラド、デラウェア、イリノイ、インディアナ、カンザス、ミネソタ、ミズーリ、ネバダ、オレゴン、アーカンソー、ユタなどの州で同様のルールが既に導入されたり、導入が検討されています。

Idaho Stop

導入されていない州でも、危険がないと見れば、一時不停止や赤信号無視をする人はいます。なるべくなら止まりたくないのは人情です。また、違反の件数も多いので、全てをいちいち取り締まるのは困難です。どうせ守られないなら、違反にするのを止めてしまうというのも一つの選択肢でしょう。

そして、本当に危険な行為だけを違反にし、厳罰にするという考え方は成り立つでしょう。取り締まり対象が限定されるぶん、より現実的になるかも知れません。もちろん、そのまますぐ日本にも当てはまるとは言いませんが、かえって事故が減るのであれば、場所によっては一考の余地はありそうです。











◇ ◇ ◇

東京もそうですが、ソウルや北京でもクラスターが発生しているようです。まだまだ油断禁物ということでしょうね。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,おはようございます.

自転車は一時停止が面倒で,そのための一時停止義務違反や赤信号の無視が多いのは確かですね.

しかし,他に人や車が来なければ自転車は赤信号でも徐行して進むことができるルールは,日本人の国民性から見るとあり得ないでしょうね.おそらく,現在「自転車歩道通行可(歩行者優先)」の歩道で右側逆走が容認されている以上の悪弊を及ぼすのではないでしょうか.

勿論,アメリカでもごく一部の地域(州)に限った話ではありますが,


Posted by マイロネフ at June 17, 2020 05:25
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね。日本で導入されたら、原則がうやむやになって、なし崩し的に無視が当たり前になってしまうかも知れません。

条例で決めなくても、無視していい場所は、標識などを撤去する手はあると思います。かえって確認を徹底するようになるので、安全になることも考えられます。
ただ、一般的には、交通安全に逆行すると問題視されることになりそうです。

都市部では危険としても、日本でも地域によっては無視を認めることは出来そうですが、そうなるとその地域以外にも広がってしまうと思われます。
アメリカは州によって州法があり、交通ルールだけでなく州によって法律に違う部分があるのが当たり前、違う州に行けば法が変わることを意識していますが、日本ではそうはいかないでしょう。
もちろん日本でも条例や施行規則などに違いはありますが、県境を超えたからと意識しませんから、全国的に無視するようになってしまいそうです。
アメリカでは導入する州が増えていますが、日本では難しそうですね。
Posted by cycleroad at June 18, 2020 14:17
 
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