July 09, 2020

知らないうちに蓄積する憂鬱

あるテレビCMが話題となっています。


オランダの、VanMoof というメーカーのe-バイク、電動アシスト自転車のコマーシャルです。最初はクルマのCMかと思ってしまいますが、“Time to ride the future”というメッセージを掲げて、環境のために自転車という選択を促すCMになっています。(下の動画 ↓ )



なかなかスタイリッシュなCMですが、話題になっている理由はそこではなく、このCMをフランスのテレビが禁止したからです。フランスも含め、ヨーロッパでは環境に対する意識の高い人が多く、環境問題を意識させるようなテレビコマーシャルが、人々に嫌悪されるとは思えません。

実際に、オランダやドイツなどでは問題なく放映されており、何の議論も引き起こしていません。にもかかわらず、フランスでは禁止されました。理由は、CMが恐怖や苦しみの感情を悪用し、人々の不安を引き起こすというものです。刺激が強すぎるということでしょう。

見る人にもよると思いますが、特に刺激的とは思えません。事実、オランダやドイツでは何も問題とされていません。しかし、フランスの広告業界の自主規制、“ARPP”というコードに違反するという理由で、フランスでの放映は許可されませんでした。

当然、VanMoof 社は反発しています。CMが刺激的とされたことに疑問を呈しています。むしろ、CMの中でクルマを登場させ、その弊害を暗示するような部分が問題とされたのではないかと疑っています。つまり、端的に言えば、クルマの売り上げに水を差すということです。

VanMoof CM

フランスだけではありませんが、このコロナ禍でクルマメーカーも販売の急減に苦しんでいます。裾野が広く、雇用に与える影響が大きいため、フランス政府も振興に予算を振り当てています。政府と広告規制は直接関係ありませんが、クルマ産業は、“ARPP”のような規制機関にも影響力を行使できると見られています。

フランスでも、パンデミックによるロックダウンを受けて自転車に乗る人が増えています。その前からも、パリのシェアバイク、ヴェリブが人気となるなど、自転車人口は増加傾向です。パリ市なども、新しいサイクリング・イニシアチブを立ち上げ、3億ユーロを自転車インフラに充てています。

EUの域内ですし、オランダのメーカーが、フランスの人に、e-バイクという選択肢を提案し、環境問題や大気汚染を憂うフランス人が、自ら自転車という選択をすることに何の問題もないはずです。たしかに、この放映禁止が、どこかからの圧力がかかっているように見えるのは否定できません。

ただ、“ARPP”のコードにも理由があるのです。それは、“Eco-anxiety”です。日本では、まだあまり耳にしませんが、「エコ不安」、「気候不安」という症状が欧米を中心に広がっているとされています。この「エコ不安症」を誘発するから、このCMが好ましくないというわけです。

VanMoof CM

最近、欧米で指摘されるようになった、「エコ不安症」、「気候不安症」は、近年さかんに耳にする温暖化などの環境破壊によって、将来に不安を感じることで、精神衛生上の問題が起きるというものです。地球環境の将来不安を常に感じることなどで、精神的な健康を害してしまう人がいるのです。

中には、自然災害を経験し、それがトラウマになる人もいるでしょう。しかし、そういうことが無くても、日常的に洪水のように押し寄せる情報によって、常に漠然とした不安を感じ、うつ病、不眠、強迫神経症などの症状が出たり、その結果として薬物の乱用や自殺にまでつながる可能性があると言います。

2017年にアメリカ心理学会でも認められましたが、はっきりとした症状、定義が定まっているわけではありません。しかし、常に不安情報にさらされる結果、精神の失調をきたす人が増えていると言われています。特に影響が心配されているのが、若い世代です。大人よりも深刻に考えてしまう傾向があるのでしょう。

ティーンエージャーの環境活動家として一躍世界に名をはせた、グレタ・トゥンベリさんもその一人と言われています。彼女が、気候変動について最初に耳にしたのは2011年、8歳の時です。憂鬱になって、人と話したり、食べる事を拒むようになり、2ヶ月で10キロやせたと言います。

Photo by Lea-Kim Chateauneuf,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by European Parliament,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

元々、アスペルガー症候群がありましたが、11歳の時、メンタルヘルスの問題を悪化させ、地球温暖化への不安から、ひどく落ち込むようになったそうです。強迫性障害、選択的無言症などと診断されました。その後の3〜4年間は、うつ病に苦しんでいました。

そこで若くして環境活動を始め、スウェーデンの議会の外で抗議するなど、若者の抗議運動の顔になるくらい活動を広げました。両親によれば、彼女の場合、こうした活動の結果、精神的健康は著しく改善したのだそうです。ただ、これは誰にでも当てはまるわけではなく、症状も治療も人それぞれで、確立した方法はありません。

たしかに、現代は温暖化や気候変動に関する情報が氾濫しています。聞いてすぐ影響が出ることはなくても、漠然とした不安や悲観が積み重なっていくこともあるでしょう。人々の恐怖や心配をあおるような情報もあふれています。病気になる人が出てきても不思議ではありません。

もちろん、温室効果ガスの排出が、深刻な結果につながることを否定する人たちもいます。アメリカはパリ協定からの離脱を正式に国連に通告しました。私は専門家でもなんでもないので、ここで、気候変動問題、地球温暖化の真偽について議論するつもりはありません。

VanMoof CM

ただ、専門家とされる人、あるいはメディアなどの中には、知ってか知らずか、不安や恐怖をあおるような情報を流す人がいるのは確かでしょう。CO2排出権取引ビジネスでなくても、地球温暖化や気候変動の不安をあおることが、利益になる人だって大勢います。

環境問題の専門家もそこに含まれます。専門家がインチキだと言うつもりはありませんが、環境問題が騒がれれば騒がれるほど、関連の研究予算やポストが増えるのは間違いないでしょう。逆に言えば、人々が問題視しなくなった、環境ホルモンとか、ダイオキシンなどの専門家はほとんど聞かなくなりました。

この問題の国際的な専門家でつくる、“IPCC”、「気候変動に関する政府間パネル」のスキャンダルもありました。いわゆるクライメートゲート事件です。研究者同士のメールが流出し、危機の証拠となるデータをでっちあげていたとされる問題です。真偽はともかく、その動機や利益がある人々なのは確かでしょう。

例えば、この問題で、よく出て来るのが海面上昇です。大幅に海面が上昇して沿岸の都市が沈むという人もいます。温暖化で、北極や南極の氷が溶けだすからという理由です。しかし、北極の氷は海氷ですから、溶けても体積は変わらず、海面を上昇をさせないのは、小学生でも知っています。

VanMoof CM

南極の氷が溶けているとの主張もよく聞きます。その証拠として、テレビでは南極の氷が崩れて海に落下する映像が流されます。しかし、これもおかしな話です。南極大陸は一年中、氷点下数十度という世界です。多少気温が上がっても氷点下のはるかに下、ほとんどの氷は溶け出すはずがありません。

むしろ南極の平均気温が上がると、そのぶん大気に含まれる水蒸気の許容量が上がるので、雪が多くなり、氷は、むしろ厚みを増します。実際に南極へ派遣された調査隊や、衛星データの解析でNASAは、南極の氷の厚みが増していることを確認しています。氷は溶けるどころか、むしろ増えています。

南極半島などで、氷の塊が崩れて海に落ちるのは、氷の重みで長い年月をかけて移動してきた氷河が押し出されているからです。昔から落ちていましたし、全体からすれば微々たる量です。周辺部のごく一部の氷が崩れている様子を強調することで、知ってか知らずか、ミスリードしていることになります。

かなり昔から、海面上昇で沈むと言われていたツバルは、いまだに水没していません。むしろ国土の面積は増えていると言います。海面上昇でなく、波による浸食や、第二次大戦の時の米軍による埋め立て地が、脆くなって崩れているそうです。元々、サンゴ礁に出来た標高に乏しい土地ですが、海面上昇が問題ではないのです。

VanMoof CM

こうした、地球温暖化を過度に煽るような話はたくさんあります。温暖化の影響が無いと言っているわけではありません。しかし、悪意があるのかどうかは別として、科学的にもおかしな話が多数見受けられます。このままだと、今世紀中に人類は地球に住めなくなるといったようなフレーズも普通に使われています。

それが間違いだと言っているのではありません。気象の問題は複雑系であり、専門家ですら結論できないことは多々あります。予測と、その可能性を議論しているわけで、いたずらに極端で断定的なことを言うのも、不安を煽っていることになるでしょう。結果として「エコ不安症」にされかねません。

地球温暖化や、気候変動の問題を軽んずるつもりはありません。しかし、煽るような情報に振り回されて、気づかないうちに不安を蓄積し、精神的な健康を害するのも問題です。うつ病にならなくても、例えば、将来を悲観し、子を持たない選択をするといった影響なども指摘されています。

もちろん、地球規模の問題に向き合う必要があります。しかし、不必要に不安を蓄積させ、精神的に病む必要はありません。冒頭のCMの是非はともかく、不正確で、結果として過度に不安を煽るだけの情報もあふれています。このことを意識し、ものによっては冷静に遠ざける必要がありそうです。





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棋聖戦五番勝負の第3局が今行われています。藤井七段が決めるか、渡辺三冠が意地を見せるか、注目です。

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