July 27, 2020

最も訪問される駅前の美術館

オランダにハーグという街があります。


Photo by zoetnet,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.ハーグ(Den Haag)は、首都アムステルダム、ロッテルダムに次ぐオランダ第三の都市です。オランダ議会議事堂や、王宮、中央官庁、各国の大使館などが集まっており、国内政治の中心として、事実上の首都のような機能を果たしている都市です。国際司法裁判所など、国際機関も多く置かれています。

7月1日、そのハーグの中心、オランダ国鉄のハーグ中央駅に新しい駐輪場がオープンしました。今年4月2日のオープン予定でしたが、コロナのパンデミックで延期され、全ての列車が再運行される日に合わせて、この日のオープンとなりました。オープニングパーティーなどはキャンセルされ、静かなスタートです。

駅の真ん前の地下にあり、駅と直結している駅前駐輪場です。日本人がイメージする駅前駐輪場と言うと、ふだん使う駅にもよると思いますが、往々にして線路の高架下にあったり、駅から遠かったり、もしかしたら暗くて狭いイメージがあったりするのではないでしょうか。

新しいハーグ中央駅の駐輪場は違います。写真や動画で見ていただくとわかる通り、これが駐輪場かと思うようなキレイさです。壁には、まるで博物館かと思わせるようなモダンなデザインが施されています。オランダで2番目の規模を誇り、8千5百台を収容する巨大な駐輪場です。

Bicycle Parking Hague

Ondergrondse fietsenstallingOndergrondse fietsenstalling

チェックインは、日本の交通系ICカードのような交通機関のサブスクリプションカードか、専用カードで行います。日本でも最近でこそ、駐輪して最初の2時間無料という駐輪場が出来てきましたが、駅前駐輪場は割高だったり、月極め専用だったりするのではないでしょうか。

この駐輪場は、最初の2時間無料などとケチなことは言いません。最初の24時間、つまり1日無料です。普通は、その日のうちに出すでしょうから、無料で使えます。何かの理由で出せなかったとしても、翌朝の同時刻前までなら無料です。24時間以降も、追加1日あたり1.25ユーロと格安です。

Bicycle Parking Hague

Ondergrondse fietsenstallingOndergrondse fietsenstalling

自動チェックイン後、自転車に乗って中を走行できます。広いですから、これは便利です。走行可能なレーンが決められています。ラックは2段式で互い違いになっているのでハンドルが隣と干渉しにくくなっています。スライド式のラックなので上段にとめるのもラクです。

天井は3.5メートルと高く、明るく強力な照明のため、地下にいるようには思えないと言います。観光客や訪問者用に、レンタル自転車も600台用意されています。さすがオランダ、カーゴバイクなど大型の自転車や、規格に外れる自転車用の駐輪スペースも、別途設けられています。

Bicycle Parking Hague

Bicycle Parking HagueBicycle Parking Hague

壁の美しい画像は、ハーグのシンボル的な建物の写真を元に加工されたものです。トータル1千平米以上あり、さまざまな壁が現れます。ハーグ市民ならば、どのへんに止めたかの目印にもなるでしょう。もちろんラックには数字がふられており、センサーによる空きラックの案内もあります。

車種別に駐輪場所への案内をしてくれるサインも備わっており、迷うことはありません。地上への出入口は、階段、エレベータ、エスカレータ、自転車を持って上がるスロープなどが各所に設置されています。とめた場所はQRコードで読めるようになっていて正確に場所を記録できます。

Bicycle Parking Hague

Bicycle Parking Hague

もちろん各所に防犯カメラが設置されており、監視室からリアルタイムにモニターされています。このコロナのパンデミックで、チェックインだけでなく、レンタル自転車の貸し出しも非接触で行えるようなシステムが導入されました。まさに最新式の駐輪場です。

8千1百平米を超える広さがありますが、動線が工夫され、行き止まりになっているところはありません。長い距離を歩いて戻る事はありません。博物館か美術館のような空間なので、観光客なら壁の美しいアートを見て歩きたくなるかも知れません。オープン後は、場内を自転車で見てまわる人もいたそうです。

Bicycle Parking Hague

Bicycle Parking Hague

さすが自転車先進国・オランダです。自転車インフラは自転車道や自転車レーンだけではありません。駐輪場が充実してこそ便利に使えます。これだけキレイでモダン、しかも駅に直結で便利な駐輪場ならば、市民も駐輪するのが楽しくなるのではないでしょうか。

もちろん、市民の中にも文句を言う人はいるようです。コロナ以外でも工期が遅れ、地上部分のピルなど全体はまだ完成していません。そのため入退場や駅へのアクセスが臨時に不便になることもあるようです。そして、建設費がトータル4千2百万ユーロと高額になり、市がその半分を負担することに不満な人もいます。



たしかに、立派すぎる気もします。しかし、ハーグ市は自転車王国オランダの中でも、本当のサイクリング都市になりたいと考えています。市民の誇りとなるような駐輪場、名所として、世界から訪れる人にも使ってもらい、まるで美術館にいるような体験をしてもらいたいと考えているのです。

4千2百万ユーロは、およそ52億円です。単純に比較出来ませんが、東京江戸川区の葛西駅に建設され、海外からも注目されたハイテク機械式の、地下収納型駐輪場の建設費は約66億円です。個人的には高くないと思います。少なくとも駅前駐輪場の整備よりも、駅前の放置自転車の撤去を優先する自治体よりはいいと思います。

Bicycle Parking Hague

Bicycle Parking Hague

もちろん、用地の問題などもあり、駐輪場の建設は簡単ではないでしょう。50億、60億の建設費は高く思えますが、例えば東京の板橋区は8億8千万円、豊島区は6億3千万円、杉並区は9億3千万円といった金額を、毎年、放置自転車の撤去移送の予算に計上しています。

これは駐輪場整備の予算とは別です。あくまで撤去・移送に使われる経費、つまり毎年消えていく費用です。それを考えれば安いと思うのは私だけではないでしょう。こんなにキレイで駅前で便利、しかも無料で使える駐輪場ならば、迷惑駐輪する人はいなくなり、多額の撤去費は不要となって、すぐにモトがとれるはずです。

Bicycle Parking Hague

Bicycle Parking Hague

ちなみに、このハーグの駐輪場は、以前にこのブログでも取り上げたユトレヒトの12,500台の駐輪場に次いでオランダ第2位の大きさです。オランダ2位は、世界2位でもあります。実は先月まで、世界第2位は東京の葛西駅の駐輪場でした。今月、ハーグ中央駅に抜かれたことになります。

葛西駅は、東口と西口の2つの駐輪場合わせて5,600屐■后ぃ苅娃安羲容です。ハーグには別に5つの駅に隣接した駐輪場があり、この新駐輪場は追加です。前からある駅の地下の駐輪場1つだけでも1,200台収容、合わせれば、ゆうに葛西を越えます。面積も単独で8,100屬任垢ら、2位認定です。



もちろん、日本の駅に世界1位を目指せなどと言うつもりはありません(笑)。ただ、放置自転車の撤去移送は、いたちごっこです。撤去移送に年間数億から十億近い費用をかけるならば、駐輪ニーズを満たすような大規模で便利な駐輪場を建設することで、抜本的な解決を目指すべきです。

例えば、東京駅は日本の玄関、顔なので、放置自転車があるのは見苦しいと、特に撤去移送に力を入れていると聞きます。確かに丸の内や八重洲に放置自転車は見かけません。もっと街角に駐輪ラックがあってもいいと思いますが、景観を損なうと、自転車を目の敵のようにして撤去移送に精を出す地域は少なくありません。

日本の玄関を自認したり、駅前を活性化、集客しようとするならば、世界に誇れる、観光客が驚くような駐輪場をつくる手はあるはずです。そして、駅の駐輪場は高架下とか余った使いにくい場所で十分とか、駐輪出来れば十分という発想を捨て、ハーグのような魅力的な駐輪場を検討してほしいものです。











◇ ◇ ◇

初登板の大谷翔平選手は1死も奪えず黒星ですか。まだまだ始まったばかり、二刀流復活に期待したいですね。

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