December 21, 2020

社会への説得力がコンセプト

将来、クルマは自動運転になると言われています。


すでに技術的には、かなり高度なシステムが開発されており、完全自動運転の実現も時間の問題だと楽観する見方もあります。一方で、技術以外にも問題が存在しており、完全な自動運転が実現されるのは、そう簡単なことではないと指摘する声もあります。

機械ですから故障もあるでしょうし、ソフトウェアの信頼性も問題となります。不正アクセス、ハッキングされる危険もあります。悪天候以外にも何が誤作動する事象となるかわかりませんし、テスト段階で死亡事故も起きています。人間の合図に反応できないとか、通信の帯域とか、不測の事態に対する対応なども問題です。

いわゆるトロッコ問題もあります。例えば前方に人が飛び出してきた場合です。ブレーキをかけても間に合わず、前方の歩行者を死亡させると予測した場合、避けて対向車線側にハンドルを切れば、対向車に死者が出ます。道路沿いの電信柱などに突っ込めば運転者が死亡するような場合、どれを選ぶかという問題です。

事故が起きた時に、賠償責任を負うのは乗車している人なのか、所有者か、クルマのメーカーなのか、ソフトウェア開発者なのかという問題もあります。法的な枠組みや規制も確立していません。テロリストが爆弾を積んで、突っ込ませるかも知れません。人が乗らないでも自爆させられることになります。

PEVPEV

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そのほかにも懸案は多々あり、自動運転のクルマが走りまわる未来に対する疑問や懸念を持つ人も少なくないでしょう。誰もが諸手を挙げて賛成とはいかない部分が、少なくともまだ現在は残っていると言わざるを得ません。そう考える人たちは、技術者、開発者の中にもいます。

MIT Media Labデンソー、ケンブリッジ、台北という産学都市連携による、次世代モビリティの研究開発チームもその一つです。彼らは、今進められているモデル、例えばグーグルとかテスラなどによる自動運転とは別のアプローチがあるのではないかと考えています。

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単にクルマの自動運転化ということだけではなく、今後の社会、あるいは都市において、必要とされるモビリティもあるはずです。いくら自動運転になっても、多くの人が乗って都心部へ集中すれば渋滞は起きますし、自動運転が人々の健康的なライフスタイルにつながるのかという疑問もあります。

例えばアメリカのハイウェイで通勤するような都市と、地下鉄などの発達する東京では、必要とされるモビリティも違ってくるに違いありません。自動運転になっても、今のサイズのままであれば、相応のエネルギーが必要ですが、果たしてそれが必要かという視点があってもいいはずです。







そのほかにも、渋滞するクルマ以外のモビリティの必要性は考えられるでしょう。公共交通と組み合わせたラストワンマイルの移動や、配送や宅配代行サービスなどのニーズも考えれば、同じ自動運転でも、もう少し違ったモビリティを使うというアプローチがあるのではないかというスタンスです。

そこで、上述のMITらの研究者グループが打ち出したのが、“Persuasive Electric Vehicle”、『説得力』のあるEV、電動ビークルというコンセプトです。彼らが考えるPEVはトライク、三輪の電動アシスト自転車がベースとなっており、これが便利で持続可能な移動手段になると考えています。

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このプロジェクトで開発されているのは、低コストで機敏に動ける自律型シェア自転車です。人の移動用だけでなく、小口配送用にも使えます。標準的な自転車部品を使い、アシスト用の電気モーターやバッテリーを搭載します。そして各種のセンサーによって自動の自律移動、つまり無人走行が可能です。

街では人間、歩行者に対して脅威となりません。センサーで衝突を避けるだけでなく、LEDのライトやプロジェクター、指向性スピーカーを使って人間とコミュニケーションをとります。無人走行していても、周囲の歩行者に危険と感じさせない配慮でもあります。

PEV

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シェア自転車として、スマホアプリから呼び寄せることができます。到着する前に快適性や乗車姿勢などについて設定することも可能です。自動走行するので、近くにドックが無くても使えますし、自転車シェアリングで問題となる、貸し出しステーションの設置場所の不足、一か所に車両が偏ってしまうという問題も解決できます。

顔認証システムを使って乗る人を特定し、プロファイルにアクセスします。必要であれば、ユーザーが歩き、その後を追随させることも可能です。座席の後ろのストレージは、冷蔵や温蔵が可能で、食品や飲料などのデリバリーサービスに使うことも出来ます。

PEV

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トライクにはフード、屋根がついているので雨が降っても濡れません。前方のフードの縁に高圧ノズルが配されており、横方向にエアーカーテンが出来るようになっています。横からの雨や虫なども防ぎます。座席の下には空調もついていますが、その冷気や温風を、ある程度保持する役割も果たすでしょう。

すでにテスト段階にあるそうですが、これはなかなか便利そうです。いわゆるラストワンマイルの移動や、都市での配送、フードデリバリーなどにも十分使えるでしょう。車体も相対的にコンパクトなので、わざわざクルマを使って渋滞を酷くさせずに済みます。その点でも『説得力』があります。





電動アシストで人力も使うほうが、エネルギー的にもリーズナブルです。もちろん、電動だけでも動きます。自律走行の時に安全性が十分担保されるか、事故は起きないかとの懸念は残るにせよ、万一事故になったとしても、スピードは遅いぶん、クルマより被害は軽減されるでしょう。

クルマの自動運転がどうなるかは別として、都市での近距離のモビリティの一つの形として、十分に実用的で有力な選択肢となるのではないでしょうか。クルマの自動運転を否定するものではありません。ただ、案外自転車のほうが、将来自動運転になるのは早いのかも知れません。




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感染力が最大7割強いウイルスの変異株がイギリスから欧州各国に広がっているという報道も気になりますね。

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