January 26, 2021

EV化だけが脱炭素ではない

温暖化対策が加速すると見られています。


アメリカのバイデン政権はパリ協定に復帰し、意欲的なエネルギー転換計画を進めると言われています。最近はSDGsやESGがキーワードとなっていますし、世界各国が競ってカーボンニュートラル、すなわち温室効果ガス排出量実質ゼロの実現を表明しています。

交通の面では、EV化が唱えられています。フランスは2040年まで、イギリスは2030年までにガソリン車の販売を禁止すると表明しました。2035年までにはハイブリッド車、HVの販売も禁止するとしています。一番先行するノルウェーでは、2025年までにHVを含むガソリン車の販売禁止を打ち出していますす。

アメリカ・カリフォルニア州は2035年までにHVを含むガソリン車の販売禁止、日本は2030年代半ばまでにエンジンだけのクルマをなくす目標を検討中です。東京都は2030年までにこれを実現してエンジンだけのクルマをなくし、全て電動車にする方針です。

ただ、温暖化ガスの排出という観点に立てば、エネルギー分野や、工場などの産業部門のほうがはるかに大きく、EV化による効果は相対的に小さく、限定的です。EVも直接排出はしないものの、石炭・石油、LNGによる電力を使うならば、間接的に温暖化ガスを排出していることになります。

マクロン大統領ジョンソン首相

にもかかわらず、主要国が相次いでEV化を打ち出すのは、EV市場における主導的な地位を狙う産業政策的な面もあるのでしょう。しかし、この相次ぐEV化宣言に対し、日本自動車工業会などは苦言を呈しています。クルマばかりを槍玉にあげても、カーボンニュートラルは実現しないからです。

温暖化ガスの排出割合を日本の場合で見てみると、発電などのエネルギー部門が41%、製造業など産業部門が25%、交通や運輸部門は17%です。ほかに、オフィスや家庭が5%ずつ、その他廃棄物などが続きます。クルマだけをクローズアップするかのような目標は、たしかに合理的とは言えません。

割合だけが問題なのではありません。自工会もカーボンニュートラル自体には賛成していますが、EV化した場合に電力不足に陥ることを指摘しています。夏場の電力消費のピーク時に最低でも10〜15%の電力が不足すると見込まれます。この解消には原発で10基、火力発電で20基の発電所の新設が必要になります。

EVは安い夜間電力を使って、寝ている間に充電しておけばいいと思っている人がいますが、それだけでは済みません。もちろん、そういう使い方が出来る人もあるでしょうが、日中に充電不足になれば、街角などの充電スタンドで充電するはずです。夜になるまで待つ人はいません。

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さらに、寝ている間の充電ならともかく、日中の充電に8時間も10時間もかけてられません。当然ながら急速充電ということになるでしょう。この急速充電のためには、充電時間にもよりますが、通常の充電よりもはるかに大きな電力を消費します。電力不足は必至なのです。

例えば、テスラ社が発表した電動大型トレーラーの場合、わずか30分間の充電で400マイル(約640km)の走行が可能だそうです。しかし、そのためには1600キロワットの出力で、一台の充電に住宅4千戸分が使うのと同量の電力が必要になる計算だと言います。乗用車でも急速充電には相応の電力が必要です。

急速充電がいかに電力を消費するかわかります。それでも充電に30分かかるのはネックでしょう。もう一つ言えることは、トラックやバスなどの大型でトルクの必要な輸送用車両には、今のところEVが現実的でないということです。EV化は乗用車などに限られることになるでしょう。

10〜15%の電力不足と聞くと、たいしたことがないように見えますが、そうではありません。うまく融通すればと考えがちですが、それは困難です。やはり相当数の発電所の増設が必要になります。こうしたことを考えれば、全てEV化というのはナンセンスということがわかります。

習近平国家主席菅義偉内閣総理大臣

すぐにでもEVばかりになりそうに思っている人もいますが、それも無理です。EVは増えているように思えますが、現状で世界の新車販売の2%に過ぎません。充電スタンドなどインフラ整備も必要ですし、30分でも充電時間が長い、航続距離が短いのが短所です。そう簡単に普及するとは思えません。

実際、専門家の見方は現実的です。2030年でも普及率は10%程度にとどまり、依然としてガソリン車が新車販売の過半を占めるのは必至という意見が多いようです。私は専門家ではないのでわかりませんが、いろいろな理由を聞いていると、ガソリン車の販売をゼロにするのは到底無理に思えてきます。

各国の目標を見ると、EV化に以前から力を入れていた中国が、むしろ現実路線に転換しています。2035年をメドに、新車販売の全てを環境対応車にするものの、EVや新エネルギー車に加え、ハイブリッド車を5割にするという目標を表明しています。ガソリン車をHVにするのが現実的ということでしょう。

EV MOBILITYEV MOBILITY

EV MOBILITYEV MOBILITY

ところで、一般的にEVと言えばクルマを電動化したものですが、“EV MOBILITY”というオランダの会社が先頃発表したEV、“ LEF”は少し違います。いわば3輪のベロモービルをEV化した車両です。電動アシスト自転車ではなく100%電動なので、れっきとしたEV、エレクトリック・ビークルです。

一般的にイメージされるEVとは違うでしょう。むしろ、キャビンのついたフル電動の、e-bikeと言った方がしっくりくるかも知れません。しかし、よくよく考えてみれば、この大きさで十分という人も少なくないのではないでしょうか。むしろ、EVが必ずしもクルマのような大きさである必要はないでしょう。

EV MOBILITYEV MOBILITY

EV MOBILITYEV MOBILITY

もちろん、クルマの代わりに全てこれというわけにはいかないでしょうが、案外実用的です。ベロモービル型なので雨に濡れませんし、重量はわずか90キロ、最大で200キロの積載量があります。最高速度は25キロで、スピードは出ませんが、都市部の移動、近距離ならば十分でしょう。

一人しか乗れませんが、クルマだって平均すると1.2人しか乗っておらず、割り切ってしまえば効率的です。小回りもききますし、駐車スペースだって断然小さくて済みます。車両価格も相対的に安く、もちろんエンジンはついていないので、温暖化ガスは出しません。何より充電の電力も小さくて済みます。

EV MOBILITYEV MOBILITY

EV MOBILITYEV MOBILITY

むしろ、EVがなぜクルマと同じサイズでないといけないのか、都市部の移動に関しては、こうしたサイズで充分だと考える人が増えてくる可能性があるのではないでしょうか。最高時速は25キロしか出ませんから、自転車と混在していても危険なことはありません。3輪で安定しているので、誰でも乗れます。( ↓ 下の動画も参照。)

これまで電動アシスト自転車をベースにしたベロモービルもいろいろ取り上げてきました。ペダルをこいでもいいという人なら、それら電動アシストのベロモービルも選択肢になるでしょう。ベロモービルは自転車の一種で、こちらはフル電動なのでEVということになりますが、そこに境界を引くのは、あまり意味がないと思います。





今後の技術開発や発電所の新設状況にもよりますが、各国政府が打ち出すEV化目標は、必ずしも現実的でないと目されています。ただ、EVのサイズにこだわらず、都市部で使いやすい、このようなコンパクトなEVを含めて柔軟に考えれば、よりEV化の可能性は広がります。

EV化するのに、クルマのような大きさにするのがそもそも無駄です。そのぶん重くなり、それを動かすため、航続距離をかせぐため大きなバッテリーになり、またその重さが電力消費を増やす悪循環です。クルマのEV化にこだわらず、自転車にすることも含め、より理にかなった移動手段に変えていくことを考えるべきでしょう。



温暖化対策やカーボンニュートラルという本来目的からするならば、クルマのEV化だけが方法ではないはずです。電力消費、無駄なエネルギー消費を減らすのが、むしろ重要でしょう。産業政策の面はあるとしても、EV化が、手段の目的化にならないよう、もう少し冷静になるべきだと思います。




◇ ◇ ◇

相変わらず原稿棒読みで、国民へのメッセージを私の挨拶としますと言ってしまう菅首相、危機感がなさすぎです。最近は会見のたび支持率を下げる「自滅の刃」と自民党内からも批判がありますが、笑っていられません。

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