August 09, 2021

将来的に共存していけるのか

ここのところ、街で目にする機会が増えたものがあります。


フードデリバリーの配達員です。コロナの感染拡大を防ぐため、外食の自粛が求められ、宅配の需要が急増しました。この急激な市場拡大で、ウーバーイーツなどのフードデリバリー業者の宅配員が急増し、その姿を街で見ることが増えました。利用したことのある人も多いと思います。

これに伴う問題も広がっています。配達員は個人事業主となるため、労働者としての保護が受けられないことによる問題があります。不法就労で入管難民法違反に問われる事例なども起きています。一番目立つのは、急いで走行する配達員による事故やトラブルでしょう。

交通ルールを無視した危険な走行をする人が目立ち、市民の批判も高まっています。ウーバーイーツの仕組みが、そもそも配達を急がざるを得ない構造になっているのが問題の根底にあります。当のウーバーイーツは指摘されても抜本的な改善に取り組む様子が見られず、警察や自治体も対策に苦慮しています。

ウーバーイーツ危険走行

ところで、このフードデリバリーの問題、ところ変われば、その内容も大きく変わります。国や地域によっては、人手不足で配達員が集まりにくくなっています。そこで、一部の業者は、宅配員の代わりにロボットを導入すべく、すでに試験導入に踏み切っています。

宅配員をロボットで置き替えられるなら、人手不足は問題なくなり、人件費も大幅に減らせるでしょう。労働問題も一気に関係なくなります。ロボットは文句を言うこともありませんし、訴訟を起こしたり、集団交渉を求めることもありません。業者にとって一石何鳥にもなります。

Refraction AIRefraction AI

アメリカ・テキサス州、オースティンでは、Refraction AI 社が配達用のロボットを試験的に走らせています。今運んでいるのは宅配ピザです。現在は、後ろから係員が電動スケーターに乗って追随し、監視していますが、当然ながら全自動の無人配達を目指しており、AIがオースティンの地理から交通事情まで学習している段階です。

この会社だけではありません。例えば、Starship Robots 社も同様の配送ロボットの試験段階にあります。フードデリバリーだけではありません。宅配業者の、FedEx なども同様の宅配ロボットを開発し、複数の都市でテストに入っています。今後、続々と実用化されていくと見られています。

Refraction AIRefraction AI

こうした宅配用の自動運転ロボットは、これまでにも報じられてきましたし、このブログでも何度か取り上げました。アメリカなどでは、もう実用に向けた試験段階に入っているのです。見ようによっては可愛らしいロボットですし、近未来的な光景に見えるでしょう。

ただ、こうした宅配ロボットには課題もあります。果たして安全なのか、歩行者などに危険を及ぼさないかと誰もが考えるでしょう。配送中に脱輪などで走行不能になったりしないのか、故意に転倒させられたり、途中で中身や、ロボットごと盗まれたりしないのか、といった疑問も浮かびます。



それだけではありません。どこを走行するのかという問題です。オースティン市では現在、主に自転車レーンを走行しています。今は実験段階で、市内合わせても10台程度なので問題は起きていませんが、将来これが増えたら、自転車に乗る人は、ロボットとレーンを共有しなければならないことになります。

今はコロナ禍なので、宅配のニーズも増えており、将来に向けたテストとして好意的に見ている人もあるでしょう。しかし、考えてみると、将来的には膨大な数のロボットが自転車レーンにあふれることになっても不思議ではありません。食事時など、一軒一軒食料を届けに、たくさんのロボットが走行するかも知れません。



実際に、こうした事態を予測して、SNSなどではサイクリストなどを中心に懸念する声が上がっています。宅配ロボットに自転車レーンを乗っ取られかねません。安全性の問題もありますし、自転車レーンが機能不全に陥るかも知れません。なぜ、自転車利用者が道路から追い出されなくてはいけないのかという不満もあります。

市民の間だけにとどまらず、市の自転車諮問委員会などにも波及し、議論が始まっています。オースティン市の自転車諮問委員会副議長、Jake Boone 氏は、個人的な見解として、宅配ロボットに自転車レーンを走行させるべきではないと述べています。

Refraction AIRefraction AI

こうした宅配ロボットを開発する会社は、実用段階に向けて、指数関数的に台数が増えることは既に想定しています。フードデリバリーだけでなく、ネットショップの配送なども含めたインフラになることを望むのは、民間企業ならば当然のことでしょう。競争もあるでしょうし、大量のロボットを投入するに違いありません。

RefractionAI 社は、宅配ロボットはあなたの友達ですと言います。市民の生活をより便利にし、排ガスを出さず、より持続可能な配達手段として、社会をより良くするとアピールしています。しかし、これが急速に増えた時、自転車の利用者が道路から押し出されてもいいのでしょうか。

Refraction AIRefraction AI

実は、2017年にオースティン市は、市議会の議決として、配達ロボットが自転車レーンを使用することを禁止し、歩道を使わせようとしました。歩道で歩行者と共存させるわけですが、ロボットのスピードも歩行者並みの速度になるはずです。スピード的には危険性が低くなると思われます。

しかし、業者にしてみれば、ゆっくり徒歩で配達するのと同じ時間がかかってしまいます。ロボットとは言え、効率的ではありません。距離によっては、ピザも冷めてしまうでしょう。宅配便なら、多少スピードが遅くても許容できるかも知れませんが、効率を上げるためスピードを上げたいと考えるのは容易に想像がつきます。

Starship RobotsStarship Robots

どこにどう力が働いたのかはわかりません。その後、オースティン市の議決は、より上位のテキサス州の州議会で可決された州法によって却下される形となりました。これによって、配送ロボットは自転車レーンを走行し、時速15マイル(時速約24キロ)という自転車並みの速度が出せることになったわけです。

Briana Cohen オースティン市自転車諮問委員会議長は、こうした小型の電動カーが普及して、道路上のトラックの数を減らすことへの期待を述べる一方で、半自動運転の、これだけの重量の無人ロボットが、時速24キロで疾走して来ることの脅威を指摘しています。( ↓ 動画参照)

Starship RobotsStarship Robots



賛否両論、いろいろな意見があります。自転車レーンのインフラとしての有用性が増すので、自転車レーン整備を加速させることにつなかると考える人もいます。どうせ配送は必要なのだから、より人間的な大きさの車両へのシフトは好ましい、トラックよりもいいと考える人もいます。

ピッツバーグ大学の、Colin Allen 教授は、現在のAIの不備を指摘します。AIによる自律システムの制御が「倫理的」でないことの問題です。もちろん悪い人間もいますが、ある程度の倫理観はあります。AIには無いので、人間には考えられないような、倫理的でない動作を平気でする可能性があると言うのです。

RoxoRoxo

自転車レーン内で、自転車に対する障害なのは明らかであり、危険性を増やすものであります。なぜ自転車に乗る人間が、これを我慢しなければならないのかと指摘しています。ロボットには、歩行者だけでなく、自転車やクルマにも、道を譲る義務があるはずだと言います。

まだ、具体的にどのような問題が起きるかはわかりません。人手不足の問題もあるわけで、ロボットは不要と言うものでもありません。何らかの調整や、妥協が成り立つ可能性はあるでしょう。しかし、レーン内では明らかに危険を増やし、障害となるのが明らかなものの走行を許容すれば、将来禍根を残すという考え方です。

RoxoRoxo

オースティン市運輸局が、この配送ロボットの試験運用を始める前に、市の自転車諮問委員会に相談しなかったという事実もあります。諮問委員会は、直接問題にはしていませんが、自転車やサイクリストの意見を尊重していなかったことは否定できないでしょう。

オースティン市議会は、市の戦略的モビリティ計画に沿って、配達ロボットのテストに基本的には協力的です。民間と協力して、イノベーションの最前線に立つことにやぶさかではありません。しかし、市民の中には危惧する人がいるのも事実です。( ↓ 動画参照)



今後、この議論がどうなるかはわかりません。ただ、こうした配送ロボットが実用化され、どこかのタイミングで急速に増え、問題が起きる可能性は十分に予想されます。いざ急増して問題が発生してからではなく、いまのうちから考えておくのは賢明と言えるでしょう。








◇ 日々の雑感 ◇

菅首相は五輪が感染拡大の原因ではないと強弁しますが、メディアも五輪一色となったため感染拡大への危機感が薄れましたし、何よりその態度が国民の反感を買い、行動を自粛する気持ちを失わせたような感じがします。

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