November 16, 2021

自転車窃盗の犯人は尽きない

自転車盗はサイクリストの悩みのタネです。


自転車が盗まれた場合、特にスポーツバイクは比較的高価ですし、金銭的な打撃は小さくありません。そして、経済的な面もさることながら、愛車が盗まれるのは精神的なショックも大きいでしょう。高価なスポーツバイクは、盗んで売りさばくような窃盗犯から狙われやすいのも困る点です。

当然ながら、U字錠などで施錠して対策すると思いますが、自転車はどうしても駐輪する場合があるわけで、盗難の心配からは逃れられません。有名な大泥棒、石川五右衛門は辞世の句で、『石川や 浜の真砂は 尽くるとも 世に盗人の 種は尽くまじ』、と詠んだそうですが、自転車盗も尽きそうにありません。

しかし、関係者も黙って見ているだけではありません。イタリアの著名ブランド、“Colnago”は、盗難防止のために、ブロックチェーン・テクノロジーを導入しました。チェーンと言ってもチェーンロックではありません。インターネットを使ったデジタルのテクノロジーです。

COLNAGOCOLNAGO

一番有名な例は、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)でしょう。取引履歴がデジタルデータとして記録され、その破壊や改ざんは極めて困難とされています。取引データがブロック状に形成され、それが連なっていくためブロックチェーンと呼ばれます。

暗号資産のようなデジタルデータではなく、自転車にリンクさせたのは“Colnago”が世界初だとしています。新しい製品に適用されます。フレームの製造、輸送、販売の記録を登録すると、偽造や変更が出来ないため、最終的な所有権の証明となるわけです。

直接的に盗難防止になるわけではありませんが、売りさばいて換金しようとすると、盗んだ自転車だとバレてしまい、検挙される可能性が高まるので、一定の抑止になることが期待されます。まだ一般的に広がっているわけではありませんが、効果が認められれば、追随する会社も増えるかも知れません。

Hiplok D1000Hiplok D1000

盗難対策で、一番ポピュラーなのは、ロック製品の利用でしょう。これも開発が続いています。例えばこちら、“Hiplok D1000”は、換金目的の窃盗犯が使う電動グラインダーに対し、高い防御力を誇ります。特殊な素材で驚異的なアンチカット性能だと言います。かなりの自信を持っているようです。

窃盗犯の使う道具と盗難を防ぐツールは、ある種のいたちごっこ的な部分がありますが、U字錠を切断するのに、非常に労力が必要となれば、すなわち、なるべく時間をかけさせれば、諦めるか、そのロックを敬遠するようになるはずで、盗難防止効果が高まるのは間違いないでしょう。( ↓ 動画参照)



カナダのバンクーバー警察には、自転車盗専門の警察官がいます。Rob Brunt さんです。もちろん、どこの警察にも自転車盗案件を扱う署員はいると思いますが、自転車盗専業というのは珍しいでしょう。自転車窃盗犯との闘いに関する専門家として認められています。

Brunt さんは、政府機関、他の警察、大学、自治体、民間組織などと協力して、自転車の盗難を減らしました。バンクーバーでは、盗難件数を40%削減したと言いますから、優れた専門家と言えるでしょう。自転車盗の専業として職務を任されているのも道理です。

ベテランの警察官であると共に、今ではその経験を活かして、カナダのみならず、アメリカやヨーロッパ諸国、南米諸国の法執行機関や公安機関などに助言するなどの活動もしています。自転車盗を減らすスペシャリストとして評価が広がっていることがわかります。

Brunt さんは、最初に警察署の保管庫を見たとき驚きました。没収品や証拠品などを保管するところです。3階建ての電動式保管庫に500台、さらに平置きで数百台の自転車が保管されていたからです。まるで駐輪場ですが、それだけ自転車盗が多かったのです。

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持ち主が現れなければ、90日後に警察がオークションに出すなど処分されるわけですが、ほとんど所有者が名乗り出ていませんでした。Brunt さんも、それまで25年間の警察官生活で、累計では1000台以上の自転車を押収したり回収しましたが、それ以上の数が常に保管されていたのです。

この所有者の元へ帰らない自転車は問題だと考え、署長に相談しました。署長も同感で、Brunt さんに問題の解決を任せたのです。Brunt さん自身、子どもの頃から熱心なサイクリストでした。もちろん、自分の自転車を盗まれた経験もありました。愛車を盗まれる痛みもよく知っていました。

自転車窃盗犯は、持ち主を選びません。誰にとっても愛車だと思いますが、仕事に行くため、死活的に必要なのに盗まれてしまう人もいます。そして、新しい自転車を買う余裕がない人もいます。たかが自転車盗と考える人もいますが、彼はなんとか自転車盗を防ぎたい、減らしたいと考えました。

対策を考える中で知ったのが、“Project 529”です。これは、サイクリストが愛車を登録しておいたり、盗まれた際にはその写真を公開して情報を求めたり、発見された盗難自転車のリストを見たりすることが出来るサイトです。無料で登録することが出来ます。Brunt さんは、これだと感じました。

この“Project 529”、James Allard さんという人が立ち上げました。実は、Microsoft 社で、エンターテインメントおよびデバイス部門の最高技術責任者だった人です。たくさんの製品を送り出しています。Microsoft を退社した後の2014年にこのプロジェクトをアメリカ・オレゴン州、ポートランドで開始しました。

Project529Project529

Allard さんが、このプロジェクトを始めたのも愛車を盗まれたことがきっかけです。あまりに乱暴な手口に怒りを抑えきれず、自分で捜索し、ネット上で販売されているのを発見します。この業者は、さまざまな品物を売っていましたが、そのうちの一つ、中古のパソコンを買いました。

得意のコンピュータの技術で、ハードディスクのデータを復元し、以前の所有者を突き止め、証拠として警察に提出し、犯人の逮捕につなげたと言います。もちろん、自分の自転車を回収することも出来ました。この経験から、自転車盗の対策がほとんどなされていないことに気づき、このプロジェクトを始めたのです。

Brunt さんは、この Allard さんと連絡をとり、2015年、バンクーバーを中心に、北米中の自転車所有者をつなげることを目指し、まずバンクーバーでテストを開始しました。初年度は2万5千台の自転車が登録されましたが、今では200万台を超えています。

成果は出ました。バンクーバーでは、なんと自転車盗難が40%も減ったのです。バンクーバー警察の保管庫の自転車もかなり減りました。盗難が減ったことで、サイクリングに興味を持つ住民も増えたと言います。でも、Brunt さんは、まだまだこれからと考えています。

このプロジェクトを、カナダ全土やアメリカに拡大することに尽力しています。多くの地域へ広がることによって、バンクーバーで盗まれた自転車が回収できる可能性も高まります。盗まれた自転車は州境や国境を簡単に超えるからです。実際に、バンクーバーから盗まれた自転車が、他の州やアメリカで発見されています。

Project529Project529

このプロジェクトは、“529 Garage”として運用されていますが、529シールドと呼ばれる転写ステッカー(デカール)を交付しています。一意のIDが与えられるわけですが、今はこの取り組みが広く知られるようになったこともあって、プログラムに登録していることがわかると、盗難防止にも寄与するのです。

ステッカー自体は、5カナダドルほどで購入する必要がありますが、バンクーバーでは、バンクーバー警察財団が資金提供をしており、市民は無料で手に入れることが出来ます。盗難品を警察が発見・回収した時に、このステッカーが貼ってあれば、すぐに所有者を調べることも出来るわけです。

Brunt さんは、自転車盗を警察に報告する人が少なかったことも問題視しています。報告を増やして、取り返す可能性を高めることを啓発したり、良いロックを買って、それを正しく使用する方法を指導するなど、広範に自転車盗を減らす取り組みをしています。

世界には、他にも似たような仕組みで、サイクリスト同士で盗まれた自転車を探そうとする取り組みもあります。ただ、効果的に機能するとは限りません。“529 Garage”は、警察が関与していることで、少なくとも警察が回収、押収した自転車が所有者の元へ帰る可能性が高まる点で、有用性は高いと言えるでしょう。

メーカー、ロック開発者、警察と、関係者は自転車盗を減らすべく努力をしています。世に盗人の種が尽きないのは一面の真理だと思いますが、盗人が盗むのをためらうような効果的な仕組みが広がり、盗難件数が大幅に減るならば、サイクリストの悩みも減るのは間違いないでしょう。




◇ 日々の雑感 ◇

昨日の東京の新規感染者数は僅か7人でした。100万人に0・5人です。最近は飲食店での感染は1割以下と言いますし、ワクチン接種でリスクも低いわけで、私も今だとばかりに飲みに行って景気回復に貢献しています(笑)。

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