December 16, 2021

移動やスポーツでない使い方

自転車はいろいろな使い方をされます。


一般的なのは、通勤や通学、買い物などの日常生活の移動でしょうか。スポーツやトレーニングとして乗る人もいるでしょう。趣味でツーリングに出かけたり、MTBでダウンヒルとか、電車と組み合わせて輪行など、さまざまに楽しんでいる人も多いはずです。

もちろん、ビジネスでの移動に使う人もいます。メッセンジャーや、最近はフードデリバリーも増えましたし、欧米などではカーゴバイクで宅配など、輸送にも使われています。自転車を改造するなどして、移動販売に使う人もいますし、使い方は挙げればキリがありません。

このパンデミックで自転車に乗り始めたという人も大勢います。公共交通を避けての通勤だったり、運動不足を解消するためなど、自転車に乗る人は世界的に急増しました。今までとは生活が変わり、一転してよく乗るようになった人も多いに違いありません。

自転車の利用に限らず、コロナのパンデミックで生活が変わった人は世界的に多いはずです。都市のロックダウンで外出が禁止され、なかなか人と会うことも出来なくなりました。テレワークでオフィスに出勤しなくなった人も多いでしょう。そして、職を失ったり、収入が激減するなど、困難な状況に陥った人も少なくありません。

Made In HackneyMade In Hackney

コロナ禍は社会の弱い部分に、より大きな困難をもたらしました。思いもよらず突然職を失った人、アルバイト先がなくなり退学を余儀なくされた学生、子どもを預けられずに働きに行けなくなった人、家賃が払えなくなって住む場所を失った人、追いつめられて自殺する人も出ています。

誰もが多かれ少なかれ影響を受けたと思いますが、社会の中で弱い立場にいる人たちへの打撃は深刻です。職と子供の預け先を失った非正規雇用のシングルマザー、接触を避けるため介護サービスが受けられなくなった高齢者、福祉サービスが止まったため買い物にすら行けない障害者など、困難な状況に陥る人たちがいます。

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行政もコロナ感染防止などに追われ、苦境にある人の完全な把握は困難です。訪問看護やデイサービスが受けられず、買い物にも行けなければ、今日食べる食事にも困る状況に直面するような人たちもいます。下手をすれば餓死しかねない状態になった人も少なくないと言います。

各国の政府や各地の行政府も支援の手を差し伸べようとしていますが、漏らさず行き渡らせるのは困難です。例えば住む場所を失った人は住所がないため、支援金が受け取れなかったり、ワクチン接種を受けられなかったりします。様々な支援策についての情報にアクセスすることすら出来ない人もいます。

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世界各地で、弱い立場にいる人たちを支援しているボランティア、NPOなど支援団体の人たちも、コロナの影響で、支援活動が難しくなっています。寄付が以前ほど集まらなくなったり、スタッフも人手不足になるなど、支援のニーズは増えているのに、活動が制限される場合も少なくありません。

イギリス・ロンドンのハックニーで、自治区全体に無料の食事を提供している、“MadeIn Hackney”もそうした慈善団体の一つです。資金不足を補うため、チャリティーのためのクラウドファンディングサイトで、募金を求めたりもしています。でも、不足しているのは資金だけではありません。

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人手不足です。特に食事を届ける人手が不足しています。食事を作って、いわゆる炊き出しのような形で提供することもありますが、その場所に来られない人もいます。病気で臥せっていたり、歩行が不自由だったり、コロナでなくても外出が難しい人もいます。

公共の支援施設に入居している人など、まとめて運べる場所だけではありません。それぞれの住居、居場所に届けないと、そのまま餓死しかねない人が、わかっているだけでも、少なくとも200人ほどいます。それらの人に対して、毎日食事を届けなければなりません。( ↓ 動画参照)



食材は、企業や団体からの寄付などを使って、やり繰りしていますが、ただでさえ資金が不足しています。食事の宅配のために人件費を払うなど、とても出来ません。ボランティアに頼るしかありませんが、スタッフを集めるのも困難になっているのです。

そこで頼りにしているのが一般のサイクリスト、普通に自転車に乗っている市民です。ボランティア活動に割けるまとまった時間はないけれど、出来る範囲で協力をしてもいいというサイクリストの人たちです。通勤や通学、買い物などのついでに、一食でも二食でもいいから配達してもらうのです。

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どうせ自転車で移動するのだから、目的地の方向だったら、少し余分に走行してもいいという人は多いはずです。労力も時間もそれほど負担にはならないでしょう。個別に配達するニーズなわけですから、普通の自転車でも十分に運べます。少し立ち寄って、そのまま自分の目的地に向かえばいいだけです。

徒歩で配達してもいいわけですが、自転車よりは時間もかかります。日常的に自転車に乗っている人なら、ついでに少し余分に走行するくらいなんでもないという感覚は理解できるのではないでしょうか。自転車なら、移動の合間とか、ついでに協力しやすいのがサイクリストに声をかけている理由です。

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仕事が休みの日なら、気晴らしのサイクリングの代わりに、もっと配達を手伝ってもいいという人もいるでしょう。少しずつでもいいので運んでもらえれば、食事の提供活動に大きな力となるのです。“MadeIn Hackney”は、少しでも多くの協力してくれるサイクリストを探しています。

元々、キリスト教の国ですから、寄付やボランティアに理解のある人は少なくないと思います。そして、一度、食事を届けて、困っている人から感謝されれば、多少の労力や時間など、ものの数ではないと感じる人は多いに違いありません。口コミなどでも協力者は広がっているようです。

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もちろん、資金を寄付するのも大きな貢献になります。でも、自転車で食事を運ぶだけてでも、貴重な支援となります。配達員を雇うことを考えれば、少しづつの配達でも積み重なれば、決して小さくないコスト負担になるでしょう。つまり、自転車で届けること自体が、ある種の寄付行為になっているわけです。

イギリスには、国民の誰もが満足な栄養をとるための食料が十分にあります。しかし、現実には毎日800万人の人が空腹をこらえています。その日の食料すら手に入れられない人がいる一方で、廃棄される食料が膨大な量であるのは、他の国と変わりません。

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この、“MadeIn Hackney”、元々は、食事や調理を通してコミュニティの健康増進や疾病改善の支援などを展開していました。しかし、コロナのパンデミックを受けて通常のプログラムは一時停止しました。そして、コミュニティでのミール配達サービスを、パンデミックが始まった2020年3月に緊急対応として開始しました。

スタッフやボランティアが食事を作り、まさに今必要としている人たちに食事を届けることが最優先と判断したわけです。報道されているようにイギリスでは、ここへ来て感染者が過去最高を更新し続け、一日に7 万8千人を上回ります。まだまだ食事の配達は欠かせません。

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“MadeIn Hackney”では、缶詰とか保存食、食材を届けるのではなく、調理された食事、それも植物性を中心とする健康的で、美味しい食事を提供することにこだわっています。でも大切なのは食事だけではありません。自分たちの活動は、食事以上のもの、コミュニティ、人と人とのつながりを作っていると考えています。

誰でも、失業や病気、事故などで突然生活が激変することがあります。それに備えて貯金や保険なども大切でしょうが、人とのつながり、いわゆる共助ということも大きな助けになります。地域の人たちの手で届けてもらうことで、人と人とのつながりが作られています。

自転車の使い方にはいろいろあります。移動や運搬、運動や趣味だけでなく、寄付の手段にもなります。さらに地域のコミュニティの絆を深める、人と人とのつながりを築くことにも貢献します。これは素敵な使い方です。こうした使い方は、もっと意識されてもいいと思います。




◇ 日々の雑感 ◇

政府は追加のワクチン接種の前倒しを打ち出しましたが、足元で感染が落ち着いているせいか、さほど切迫感はありません。でも5波の時に、もう少し早くワクチン接種が進んでいればと悔やんだ教訓を思い出すべきでしょう。

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