January 15, 2022

自転車の台所が利用を支える

日本と欧米では自転車文化が違います。


例えば、欧米では自転車のロードレースがサッカーと二分するくらいの人気を誇り、プロ選手は国民的ヒーローだったりします。もちろん、国によっても差異がありますし、同じ国でも地域によって、地形などの条件によっても変わりますが、自転車のスポーツとしての認知度が日本とは大いに違います。

一般の人が乗る自転車も、便利でクリーンで健康的、環境負荷も低い移動手段として選ぶ人が多く、総じて好感度は高いと言えるでしょう。一方、日本では、自転車=ママチャリと思っている人が圧倒的に多く、あまりいいイメージを持たない人が大半です。子どもの乗り物くらいに思っている人も少なくありません。

一部の趣味のサイクリストを除けば、自転車は最寄り駅までの移動や買い物に使う、ただのアシに過ぎません。日本の自転車市場を、格安粗悪なママチャリが席捲していますし、放置自転車など社会問題もあります。無謀で傍若無人な走行などマナーが悪く、危険であるなど、多くの人にとって印象が良くないのは否めません。

BIKE KITCHENBIKE KITCHEN

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私は、それら諸悪の根源だと思っているのですが、自転車が歩道走行をしているのも問題です。歩行者の間を縫って走ることになります。そのため、足つき性がよく、スピードが遅くても安定するようタイヤが太く、車重も重いママチャリが日本では圧倒的多数となりました。

必ずしもママチャリが悪いとは言いませんが、鈍重で、自転車の楽しさをスポイルしているのも確かでしょう。スピードは出ませんし、重くて坂も大変で、長い距離の走行も困難、移動手段としての有用性も低くなります。最寄り駅や、近所までのアシとなり、欧米のように都市交通の手段として見なされていません。

日本の交通行政として歩道走行が進められてきた結果、歩道を広げるのが自転車インフラのようになっています。車道走行しようにも、走行空間が乏しく、危険に感じる人が多くなっています。クルマのドライバーの多くは自転車は歩道走行と思っており、邪魔だとクラクションを鳴らされたり、幅寄せされたりします。

BIKE KITCHENBIKE KITCHEN

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多くの日本人は、自転車の整備やメンテナンスをしません。格安粗悪なママチャリは、壊れたら捨てるものになっています。一方、欧米では、自転車も機械ですからメンテナンスするのは当たり前で、修理したり部品を交換しながら乗るのが当然と考えています。このあたりの意識も違うと言えるでしょう。

欧米と日本で、自転車走行環境の違い、文化の違いは大きいわけですが、コミュニティも違うと思います。例えば、欧米には自転車の『台所』があります。『自転車キッチン(BIKE KITCHEN)』です。これは必ずしも広く認知された普通名詞とは言えませんが、似たような場所が、欧米諸国に広く存在しています。

自転車ワークショップという言い方をするところもあります。ワークショップと言うと、日本では体験型の講座を指す場合が多いと思います。ただ、本来の英語の意味からすると、作業場とか工房です。つまり、自転車の修理やメンテナンスをするための、文字通りの作業場を意味しています。

BIKE KITCHENBIKE KITCHEN

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地域の人が利用する、共有の作業場です。呼び方は、自転車キッチン、自転車ワークショップ、そのほか自転車小屋などオリジナルの名前も含めていろいろであり、内容も決まった定義があるわけではありません。ただ、ほとんどは修理やメンテナンスをするためのスペースがあり、機器や工具などが使えるようになっています。

多くは地域のコミュニティが運営しており、非営利です。自由に使えるだけでなく、ボランティアが無料で修理やメンテナンスの仕方を教えてくれたりします。自転車に乗り始めれば、修理やメンテナンスが欠かせません。近所の自転車屋に頼むこともありますが、ふだんのメンテナンスや部品交換、簡単な修理は自分でするでしょう。

そのための作業場や、工具・機器などを地域で共有しようというものです。個人では所有しないようなツールが使えたりします。欧米では日曜大工、DIYという文化があるので、その一部という面もあるでしょう。ボランティアもありますが、サイクリスト同士が互いに教え合ったり、集う場になっていたりします。

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地域の自転車ショップが元になる場合もありますが、地域の自転車仲間が中心になって立ち上げるケースが多く、基本的に非営利です。安く部品が購入出来たり、メンテナンス教室の講師を呼んだりすることもあります。日本のそれとは少し違いますが、自転車の協同組合の面もあります。欧米の伝統的な協同組合です。

細かな定義はありませんが、自転車乗りのコミュニティに支えられている場所と言えると思います。欧米は寄付の文化があり、多くは寄付や無料奉仕、実費負担で成り立っています。自分の住む地域に自転車キッチンがあれば便利ですし、コミュニティの一員となればメリットもあり、寄付や応分の無償労働などは当然という感覚です。

基本的に非営利のコミュニティですが、NPO、非営利法人として活動するようになる場合もあるようです。あるいは、存続させるために社会的企業のような運営者が関わる場合もあります。一方で、地域コミュニティのメンバーが変わったりすることにより、閉鎖されたり消滅してしまう場合も少なくないようです。

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地域の活動家、世話好きな人、社会的志向のサイクリストが立ち上げ、非営利で草の根の法人格を持たない集まりというのが一般的でしょうか。基本的に、その地域だけの活動です。自分のメンテナンスのついでに、趣味の仲間と交流すると共に、社会的に不利な立場にいる人を支援したり、教えてあげたりもします。

活動内容も、修理以外に、廃棄された自転車の再生をしたり、移民など困っている人に譲渡したり、さまざまな活動をするグループもあります。サイクリストの地域コミュニティの核となっています。厳密に定義することは出来ませんが、同様のコミュニティが欧米諸国の、各地にあります。

近年、自転車の活用を推進したいと考える自治体は少なくありませんが、道路インフラを整備しただけでは、利用者が今以上に増えにくいこともあります。このようなコミュニティが人々の利用を助ける面があります。そこで、行政が何らかの形で、活動のサポートをするところもあるようです。

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アメリカ・カナダ、ヨーロッパだけではありません。定義も曖昧ですし、正確に調べられた調査はないので確かなことは言えませんが、ほかに中南米やオセアニア、アジアの一部の国なども含め、少なくとも数十か国の数百に及ぶ地域に、おそらく何千しいう単位で存在しているものと思われます。

日本にも、自転車ショップを中心にしたチームなどのコミュニティはありますが、普通の自転車に乗る地域のコミュニティというのは、あるかも知れませんが聞いたことがありません。自転車を修理しながら、メンテナンスしながら乗る人が限られているので、当然と言えば当然かも知れません。

欧米流の自転車文化も、自転車の走行環境も、自転車の地域コミュニティも、それぞれ相関していると思いますが、日本にはどれも乏しいと言わざるを得ません。欧米のスタイルがいいと考える人ばかりではないと思いますが、欧米のような自転車の走行環境の充実も、それだけでは得られないということかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

大学入学共通テストの会場で殺傷事件が起きました。被害者に罪は無く本当に気の毒です。最近この手の事件が増えています。動機はそれぞれとしても、増加の背景にコロナ禍が続いている影響もあるのかも知れません。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんばんは.

凡そ世界の先進国群のなかでも日本ほど自転車を毛嫌いし,虐待し,差別する国は無いと私も思います.その大きな要因の1つに,過去に競輪にまつわる様々な事件が大きく社会問題化し,それによる偏見が現在も根強く残っていること,それにもう1つ,ある意味で全く近代化の進まない日本の自転車業界の体質にも問題があるのではと思っております.

それは何かと言いますと,私の見る限りでは,現在は一部にその専門学校が存在するものの,かつて日本の自転車業界,特に小売りの現場ではスポーツ自転車の販売促進や,長距離を安全に楽しく走る知識や走行技術の普及指導に意欲のある人材を全国規模で募って育成する仕組みができておりませんでした.約50年前のサイクリング人気,約30年前のMTB人気,近年のロードバイク人気,そのいずれも安易な増収に利用しようとしては失敗し,不採算部門と決めつけてサジを投げてしまっているというのが実態だと感じております.

多くの子どもらに夢や希望を与えることのできない,学校を卒業すれば見向きもされない日本の自転車界の現状は嘆かわしい限りです.売る方が売る方だから,買う方も買う方という実態はありますね.
Posted by マイロネフ at January 15, 2022 20:30
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
過去に競輪をめぐる社会問題があったというのは、生まれる前なので、よく知りませんでした。私は業界の関係者ではないので、自転車業界の体質というのも、よく知りません。
おっしゃるように、小売りの現場とか、小売業者の姿勢などが影響した部分もあるのかも知れませんが、よくわかりません。

私が思うのは、社会的に自転車のポテンシャルが理解されておらず、欧米のようにその利点や活用のもたらすメリットが、一般的に理解されていないのではないかという点です。
それ、すなわち日本的な自転車文化、認識をもたらしたのは、欧米との違い、あるいは世界の常識外れである歩道走行、ママチャリの標準化、格安粗悪な輸入品の市場席捲などではないかと感じます。
ご指摘のような理由が、どれほど影響したのかよくわかりませんが、業界より、社会的な環境、交通政策などのほうが、一般の人の自転車の利用に影響したのではないかと感じています。
Posted by cycleroad at January 18, 2022 14:17
cycleroadさん,ご返信有難うございます.自転車やその部品,役物類の購入を通して長年に亘ってその専門ショップと付き合っていても,業界の大まかな傾向はある程度は分かります.

日本で自転車の機能が正当に評価されないのは,やはり自転車業界自身の責任も大きいと思います.

歴史的に,日本のスポーツ自転車の製造技術は欧米と比べ数十年の遅れをとっており,殆ど古色蒼然とした実用系自転車オンリーで“この道○十年”と職人気質を気取って旧態依然としていた多くの自転車販売店の体質にも問題があると思っております.

大量の放置自転車の問題を,C国製等の激安❝粗製乱造❞自転車の流入の所為にしていた販売店がありましたが,それに対抗しうる戦略を持った販売店がどれだけあったでしょうか.結局はここ20〜30年の間だけでもかなりの店が後継者も無く高齢化して淘汰されたのです.

自転車の歩道通行に多くの問題があるのは何十年も前から分かり切っていた筈の事です.それに毅然と抗議の声を結集することもできずに今日に至っている日本の自転車業界は本当にだらしがなさ過ぎます.
Posted by マイロネフ at January 19, 2022 22:02
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
考え方はいろいろなので、ご意見を否定するつもりはありません。おっしゃるように、自転車業界の問題があるのかも知れません。前にも書いた通り、詳しくないので、そこはなんとも言えません。

ただ、馴染みの専門店の様子だけでは、ごく一部の傾向ということになるでしょうし、零細な小売店に古色蒼然で問題というのも酷な気がします。他の小売業でも、旧態依然とした小さな店はたくさんあるでしょう。
中国の格安製品の攻勢で工場の海外移転や廃業を迫られた業種というのは多いわけで、それこそ世界的な構造転換、グローバル化でしょう。業界の戦略でそれを回避できたとは思えません。

自転車の歩道通行を変えられなかったと言えばそう言えるかも知れませんが、個人的には、自転車販売店の体質の問題とは別、むしろ業界に期待しすぎな気がします。
Posted by cycleroad at January 21, 2022 14:00
cycleroadさん,ご返信ありがとうございます.

かつては専門誌に広告を出していた大都市部の専門ショップでさえ,販売不振や後継者難等のためか,廃業が相次いでいるようです.その要因は少子化に伴う若年層の減少という社会的なトレンドの影響もあるのは確かでしょう.

自転車業界自身の問題もですが,もう1つ,私は自転車スポーツにどこか差別的な日本の新聞社や放送局等の影響もまた小さくないと思います.

自転車の絡む事故や事件があると日本のジャーナリズムの中にはその取扱いや表現に好ましくないものが見受けられ,これによってスポーツ自転車に対する偏見が助長される影響は決して小さくないと思っております.

彼等は野球の事なら立て板に水でも,こと自転車の事となると専門的で正確な知識や経験を欠いているためか,まるでトンチンカンで問題の本質をすり替えるような伝え方をされることがあります.

例えば自転車の歩道通行の問題にしても,広過ぎて歩行者と自転車が入り乱れる歩道の構造は,そこを1/3〜1/2削って自転車専用の通行区分を車道と一体に転換し,仮設のガードレールでも並べればできない事は無い筈.そういった提言は一切しないまま自転車を悪玉に仕立て上げようとする彼等の報道姿勢には我慢がならないものを感じます.

昨年の東京オリンピックの自転車ロードレースでも,元々日本選手には勝ち目が無かった所為もあってか,コロナ禍なのに観衆が集まった事を非難する伝え方が目立ったのは残念です.
Posted by マイロネフ at January 23, 2022 09:58
 
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