January 30, 2022

アナログを対面で売る人たち

近年はデジタルが当たり前です。


いまや情報はデジタルでやり取りされるのが当然のようになっています。スマホの普及で、どこにいてもネットに接続でき、ニュースや気象情報、現在地の近隣のショップ情報からSNSの口コミ情報まで、何でも即座に取得できます。情報がデジタルでないと不便で仕方ありません。

一方、アナログのメディアも残っています。例えば、本などの紙媒体はアナログです。ただ、近年は本も電子書籍となって、デジタルでやり取りされるようになってきました。瞬時に手に入り、端末があれば何冊持ち運んでも重くならず、保存するにも場所をとらないなど、そのメリットは多々あります。

現在の書店の流通システムだと、多くの返本が発生するのは避けられません。返品された本は、ほぼ廃棄せざるを得ず、資源の無駄使いにもつながります。製本や流通等のコストも小売価格に載せられるなど、デメリットも多いので、アナログからデジタルへの流れは変えられないでしょう。

もちろん、デジタルにないアナログの良さ、紙の本の有用性を指摘する人もいます。ネットで検索して得られる知識と違って、本を読むと体系的な知識が得られたり、思わぬ情報、自分から探していたのでは知り得ない知識と出会ったりすることもあるでしょう。

まだ全てが電子書籍にはなっていませんし、電子書籍ならば即座に読めるアドバンテージがありますが、同じ内容であっても、電子書籍よりも紙の本で読みたいという人も少なくありません。ただ、そんな紙の本が好きな人であっても、購入はネットだったりします。

かなりニッチでマイナーな本でも見つけられますし、本屋に行って取り寄せを頼む手間もありません。紙の本をネットで購入して、配送を頼む人はまだまだたくさんいます。本が電子書籍に移行していくのとは別に、紙のままでも流通経路が大きく変わってきているのは間違いないでしょう。

そうなると困るのは街の書店です。近所の本屋が閉店してしまったなど、実感している人は多いと思いますが、全国の書店数は右肩下がりで減る一方です。特に中小型書店の廃業、撤退が増えています。近所の本屋で立ち読みしたり、週間誌、月刊誌などの取り置きを頼めなくなって不便になった人も多いに違いありません。

本好き、本屋好きの人なら、特に目的の本がない場合でも、店内をブラブラしたりすることも多いと思います。ネット書店で検索するのでは絶対に出会えない本が目に入ったり、ふだん読まないようなジャンルのコーナーで目についた本を読む気になったりするのも、本屋に行く利点と言えるでしょう。

街の書店が苦境にあり、減っているのは日本だけの話ではありません。Amazon が進出している国はもちろん、そうでない国でも他のネット書店が成長しています。ターミナル駅などにある大型書店はともかく、街の本屋はジリ貧で、消えつつある運命なのかも知れません。

libraio itinerante a pedalilibraio itinerante a pedali

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しかし、そんな中でも奮闘している書店もあります。イタリアのミラノ在住の、Luca Ambrogio Santini さんは、ネットに押され、個人で営んでいた本屋を閉店せざるを得ませんでした。そこで、実店舗はなくなりましたが、自転車での配達のみで商売を再開しました。SNSで注文すると、すぐ届けてくれるので顧客は助かっています。

宅配による販売が主ですが、カーゴバイクに本を積んで移動販売もします。もともと趣味でいつも街をサイクリングしていたので、全く苦にはなりません。街の人は親しみを込めて本屋のドン・キホーテと呼んでいます。立ち向かう風車はもちろんアマゾンです。

libraio itinerante a pedalilibraio itinerante a pedali

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以前取り上げましたが、ロンドンでは街中のリアルの書店を束ねて、アマゾンなどのオンライン書店と対抗しようと考えるところもあります。各店舗の在庫データを統合し、ネット上で検索を可能にして、注文を受け付けます。スタイルはネット書店と一緒ですが、実際はロンドン市内のリアルの本屋から買うことが出来るわけです。

郵便番号を入力すると、自宅から一番近い本屋から本を買えるようになっています。取り置きして買いに行くことも出来ますが、配達してもらうことも出来ます。家から近い書店に在庫があれば、最短で10分とか15分で届きます。アマゾンよりも圧倒的に早く入手できるわけで、これは大きなアドバンテージでしょう。

そして、その配送手段は、当然ながら自転車です。一部スクーターですが、市内の本屋から、本を一冊だけピックアップして顧客の元へ届けるのに、いちいちトラックやバンを使っていたのではコスト的に合いません。自転車だったらコストも安く、小回りも効いて、トラックより素早く届けることが出来るというわけです。

街の本屋が束になっても品揃えではかなわないかも知れませんが、たいていの本なら扱っています。最寄り店に無くても、近隣の在庫のある書店から届けてもらうことも出来ます。これは各国にある動きのようです。ミラノでも最近立ち上がりました。Luca さんは、この書店連合の一員にもなりました。

Mobile BookshopMobile Bookshop

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カーゴバイクを使って、本の街頭販売をする人は、イギリスのマンチェスターにもいます。いわばモバイル書店です。定期刊行の雑誌を中心に、本や文房具なども売っています。昨年、コロナ禍で始めましたが、街まで出なくて済むためか、大学の近くで付近に書店がないからか、需要があるようです。

同じイギリスのローストフトでは、街の書店がイベントの際などに自転車でトレイラーを牽引して、移動書店を開きます。トレイラーに積んだ本箱は手作りで、展開すると本棚のような形状になります。店の宣伝にもなり、自転車を押して歩行者天国でも広場でもどこでも入っていけます。人が集まれば、立ち止まってくれる人もあるでしょう。

Mobile BookshopMobile Bookshop

アメリカ・ウィスコンシン州のミルウォーキーにも、イベント等で自転車で本を売り歩く人がいます。Cetonia Weston-Roy さんは、自転車に積んだ本棚を広げ、黒人作家の文学や黒人キャラクターが登場する本を並べて売ります。彼女自身、自費出版の本の著者でもあります。こちらは逆に移動販売から街の本屋を目指しています。

Niche Book BarNiche Book Bar

カナダ・アルバータ州のエドモントンでも街に出て、モバイル書店を開いている人がいます。Yvonne さんと Jared Epp さん夫婦です。 その名も“Nomad Books”、路上販売の書店というのは、珍しいですから、興味を持って立ち止まってくれる人もあるでしょう。そのほか自転車で本を売る人は、少ないですが各地にいるようです。

Nomad BooksNomad Books

Nomad BooksNomad Books

ちなみに、似たようなスタイルでカーゴバイクやトレイラーに本を積んで街に出る人たちがいます。以前取り上げましたが、自転車による移動図書館です。公的な図書館が、学校やイベントなどに出張したりするものが多いようです。アメリカ・図書館協会によれば、自転車移動図書館は増加傾向だと言います。

これも以前取り上げましたが、“Street Books”、ホームレスの人に本を貸すことで、支援するNPOなどもあります。なぜホームレスへの移動図書館が支援なのかについて興味のある方は、以前の記事を参照いただくとして、自転車で図書館というのは世界各地に存在しています。無料の貸し出しなので、こちらはやり易いでしょう。

書店は販売なので簡単ではないと思います。最近のコロナ禍で外出や接触が避けられる中、苦戦を強いられているところもあるでしょう。そんな中でも対策をしながら頑張っている自転車乗りは多いようです。自分の街に本屋を残そうと考える人もいて、地域に支えられている書店もあります。

Bolton Bicycling BookshopBolton Bicycling Bookshop

街の書店は、お客の来店を待っていてもジリ貧でしょう。小規模書店で設備投資は難しいでしょうが、自転車で外に出るくらいなら比較的容易です。よく通る通りから一本違っていれば、本屋の存在を知らない人もいるかも知れません。自転車での移動販売が宣伝になったり、新しい顧客を獲得する可能性もあります。

実店舗で買わなくなって久しい人でも、ふと通った道端やイベントなどで本が売られていれば、思わずのぞいてしまう人は少なくないに違いありません。本好きなら、どんな本かは別として、思わぬ出会いがあれば、買おうと思っていなくても買ってしまう人は、一定程度いるはずです。

自転車図書館は比較的見かけますが、自転車書店は珍しいと思われます。しかし、意外と自転車による本の移動販売が、書店の存続に一役買うこともありそうです。趣味のサイクリングと思えば、ペダルも重くはないでしょう。本と自転車、どちらもアナログですが、案外相性がいいのかも知れません。




◇ 日々の雑感 ◇

ブースター接種の停滞はファイザーへの人気の偏りもあるようです。最初も自治体と職場で選べなかったのですから、選択でなく割り当てにすればいいのに浅はかです。検査キットの増産備蓄や、保健所のひっ迫を防ぐ方策なども含め、岸田政権は5波後の落ち着いてた時期に、何も対策や準備をしてこなかったと言わざるを得ません。

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