April 24, 2022

子供たちの未来のために必要

ドイツの人も気づき始めています。


それは、都市においてクルマがあまりに優先になっていないかということです。そもそも都市は、人間が住んだり、交流したり、交易をしたり、楽しむ場所だったはずです。古代、中世まで遡らずとも、クルマが普及するまではそうでした。しかし、モータリゼーションによって大きく変わりました。

経済効率からクルマの移動が優先され、人間は隅に追いやられ、安全でなくなり、事故で命まで奪われかねない立場になりました。たしかに、クルマは便利な面がありますし、物流や移動など恩恵を被る面もあります。しかし、もはや酷い渋滞が慢性化し、とても効率的とは言えません。

物流とか清掃とか建設、消防や警察など、クルマが必要な場面はあります。しかし、都市を走るクルマの多くは、都市の住民に関係のない郊外からの流入や通過だったりします。郊外から訪ねてきたクルマが街中に違法駐車して、個人的な用事を足すのに、どれだけの公共空間が無駄になっているかという指摘もあります。

何度も書いていますが、ヨーロッパでは大気汚染の影響が深刻です。呼吸器系に加え、血液に入り込んで心臓疾患などの循環器系の病気など、域内で50万人規模の人が早死にする原因になっていると専門機関は指摘しています。ヨーロッパはディーゼル車を普及させてきたため、有害物質やPM2.5などの影響が甚大です。

Kidical MassKidical Mass

環境負荷を高め、温暖化ガスを排出し、交通事故で人間が死傷し、騒音や振動公害も増やし、酷い渋滞は大きな経済損失となっています。相変わらずクルマの利用や輸送は必要としても、もはや都市でクルマを優先する意義は失われています。

クルマが優先され、人間が我慢を強いられているのはおかしいことに、ドイツ人も気づき始めているのです。そうした主張を掲げるイベント、キャンペーンがあります。“Kidical Mass”(キディカルマス)です。“KinderaufsRad”(英語だと、Kids on Bikes)というキャンペーンです。

Kidical MassKidical Mass

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似た言葉に、クリティカルマスがあります。このブログでも何度か取り上げましたが、多くの自転車利用者が、週末などに大勢集まって一緒に走るイベントです。誰かの主催とは限らず、自然発生的に起こることが多く、世界各地の都市に広がっています。

これは、一般的にクルマの害を問題視し、自転車のエコロジーさをアピールしているものとされています。場合によってはテーマが別にある場合もありますが、一般的には、随時発生する、『現象』であり、プラカードを掲げたり、デモをするようなものとは違います。

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Kidical Mass”も、自転車に乗って、みんなで一緒に走るのは同じですが、参加者に子どもが多いのが違いです。主催者がいて、日にちも決められています。主導する、Kidical Mass アクションアライアンスは250を超える地域の組織やイニシアティブがあり、分散型の独自のネットワークです。

この“Kidical Mass”の主張は、街で子供たちを制限するのではなく、クルマのほうを制限しようということです。今の親たちは、クルマに気をつけろとか、ヘルメットを着用しろとか、子どもたちに自転車で大通りに出てはいけないなどと言います。

Kidical MassKidical Mass

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しかし、本来は都市では人間が中心であるはずです。そして、全ての子どもや青少年は、街を安全かつ自律的に自転車で移動できるべきだと言うのです。誰にとっても不安のないサイクリングが出来ること、そして学校へ行くための自転車道の安全なネットワークがある状態にすべきと考えています。

クルマ優先ではなく、子ども優先です。都市の公共空間は、人間の安全、安心、豊かな生活だけでなく、子どもの成長をサポートするのに非常に不適切な環境になっています。もちろん親、大人にとっても好ましいものではないはずです。

Kidical MassKidical Mass

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子供たちは、いつ路上で遊ぶのをやめたでしょうか。学校はいつ子ども達の自転車通学を禁止し始めましたか。親が子どもにヘルメットを着用させなかったことが、いつから過失と見なされるようになりましたか。なぜ、子どもが行動を禁止されたり、萎縮したり、あるいは自転車に乗りたくても乗れないのでしょうか。

子どもたちが、自由に自転車で走りまわれることは、どれほど幸せでしょうか。むしろそれが当たり前のはずで、いま損なわれている事実を再考すべきと主張しています。カーフリーデーなどで、通りにクルマがいなくなり、自由に自転車走行できる環境を経験すれば、それを実感するはずです。

Kidical MassKidical Mass

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“Kidical Mass”の走行で、子どもたちも、その走りやすさ、快適さ、楽しさに感激しています。クルマに気をつけて、狭いスペースを緊張しながら走ることに、子どもにも相当のストレスがあったのでしょう。大人も、これが都市の本来あるべき姿、人間優先だと実感したのではないでしょうか。

クルマを通すな、排除しろという話ではありません。でも、都市では人間のほうが優先されるべきだという主張です。子どもが安全、安心していられる環境の構築を求めています。自転車が隅に追いやられて、クルマに生命を脅かされたりするのは本来、おかしい状態ではないのかという問題提起です。( ↓ 動画参照)





このコミュニティでは、子どもに優しい都市計画や道路交通法を求めています。構造的に分離されたり、安全で安心して走行できることが必要なのです。連邦政府だけでなく、州レベルでも必要です。子供たちの保護の必要性に焦点を合わせ、ビジョンゼロ、すなわち道路での死者ゼロを目指す必要を訴えています。

単に危険な場所を修復するとか、自転車レーンの幅が60cmか90cmかという話ではありません。子供たちが安心・安全に移動できる街にする、クルマ優先ではなく、本来あるべき、人間優先の思想で都市を構築していくということを求めているのです。道路は市民のもの だと主張しています。( ↓ 動画参照)





前回は、2021年9月に行われ、次回は2022年の5月に予定されています。この“KIDICAL MASS”は、多くの自転車乗りに支持され、開催もドイツや隣国の130以上の街へと広がっています。つまり、多くの人々が、クルマ優先はおかしい、意味がない、有害だと気づき始めているわけです。

このような、都市でのクルマ優先をやめようという動きはヨーロッパ各国に広がっています。このブログでもいろいろ取り上げてきました。日本にいると、こうしたムーブメントは全く感じられず、相変わらずクルマ優先が当たり前です。しかし、欧州では変わりつつあります。( ↓ 動画参照)



子どもの視点で見ても、子育ての観点からも、都市はクルマ優先で人間は虐げられています。何のために市民は我慢しているのでしょうか。子供たちは運動技能の発育不全になったり、ストレスに苛まれたり、健全な生育環境を脅かされているのではないでしょうか。

そして、このことに気づいたら、アクションを起こすべきと説いています。子供たちをもっと伸び伸びと、本来あるべき環境で育てられてしかるべきです。これは子供たちの未来のためでもあります。いつの間にか当たり前になっているクルマ優先が、いかに理不尽なことなのか、考えてみる必要がありそうです。




◇ 日々の雑感 ◇

いい陽気になってきました。昨日も自転車で出かけましたが、もう水分補給や紫外線も気にすべき時期ですね。

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