June 20, 2022

自治体は何に金を使うべきか

全国のコロナの感染者数が減少しています。


警戒感は薄れ、県民割が全国に拡大したり、徐々にインバウンドの受け入れを拡大するなど、経済再生へ動き出しています。しかし、ピーク時に医療がひっ迫し、それで死者が出たことも忘れてはなりません。欧米と比べて多いはずのベッド数が、なぜ足りなくなったかなどの検証や改善は遅々として進んでいません。

幽霊病床をはじめ、さまざまな問題や体制の不備などが指摘されました。このまま終息すればいいですが、また新たな変異種で爆発的な感染が広がらないとも限りません。発熱外来や往診、重症患者受け入れ病院、回復期支援施設などの分担や整備、保健所との連携、体制の充実や法整備などやるべきことは山積しています。

今のうちにやっておくべきことは多いはずですが、進展しているという話はあまり聞きません。一方でコロナに対応するため国が地方に配る地方創生臨時交付金、いわゆるコロナ交付金の使い道に、多くの不適切、あるいは不透明な事例が明らかになっています。コロナ対策とは名ばかりのものが少なくありません。

コロナ交付金例えば、「佐賀誓いの鐘」というモニュメントを建てたとか、新潟県立歴史博物館の修繕費に充てた、北海道遠軽町スキー場のライトアップに使った、山形の国宝「縄文の女神」のレプリカを作製した、新潟では婚活アプリ入会登録の助成に使った、東京都港区の観光施設利用のポイント還元に使った、といった事業です。

三重県御浜町のグランド整備用トラクター購入、石川県能登町の巨大イカモニュメントの作製、福井県内で結婚する人へのギフトカタログ費用、広島県三次市の公用車購入、鹿児島県出水市ツルの飛来地の立ち入り規制費用、沖縄県宜野座村のコロナ収束祈願の花火打ち上げ、長崎県川棚町長の出張用公用車購入など、枚挙に暇がありません。

よくもまあ、こんな使い方がと呆れるばかりです。地方創生で、傷ついた地元経済の立て直しと言えば、そうなのでしょうが、この時とばかり物品を買ったり、少しでも余すことなく使おうとしたのが現れています。金額は書きませんでしたが、どれも数百万円から数億円単位の事業です。これでは国の財政収支も悪化するわけです。

一方で、新規感染者や入院患者が減少する中、後遺症に悩む人も増えていると言います。感染しても症状が無かった若い人でも後遺症が重い例もあると聞きます。まだ未解明の部分も大きいわけですが、少しでもコロナの影響を減らしたり、元のような暮らしや社会を取り戻す努力が求められます。

感染や後遺症がなくても、コロナ禍でのストレスや職場・生活環境の変化により、メンタル面で影響を受けている人は多いはずです。コロナ禍以降、ストレスや悩みの増加を訴える人は6割に上るとの調査もあります。自分で自覚していない部分もあるので、関連性は明らかにならなくても影響は広がっているものと思われます。

直接の原因はともかく、2020年以降の自殺者は増加していると言います。失業や経済的な不安、うつ病になる人も増えている可能性が高いでしょう。コロナ禍の間に起きた小田急線の切りつけ事件、京王線の事件、大阪のクリニック放火事件など、拡大自殺が指摘されるような事例が増えているのも指摘されるところです。

CyclingCycling

一般的に、周囲だけでなく、自分がうつ病であると気づかないケースも多いと言います。ストレスや疲れは感じていても、頑張ってしまう人は多いに違いありません。厚労省の調査では通院するうつ病患者は96万人ですが、WHOの調査推計によれば、日本人の360万〜600万人がうつ病を自覚できていない患者と見られています。

ところで、うつ病の予防には自転車に乗るのがいいという研究結果はたくさんあります。このブログでも、これまでいろいろ取り上げてきましたが、最近のアメリカ・アイオワ州立大学の、Jacob Meyer教授らのグループによる研究によれば、予防だけでなく、症状の軽減や治療効果を高めると言います。

被験者にサイクリングをしてもらう実験では、症状の改善が見られました。サイクリングは、セロトニンレベルを増加させるのが理由と見られます。セロトニンは一般的に、気分の調節に役立つとされています。そして、セロトニンレベルの上昇は、うつ病の治療に使われるSSRIという薬の目的と同じなのです。

SerotoninSerotonin

自転車に乗って楽しいのは、セロトニンが、心地よいと感じさせる神経物質だからなのだそうです。サイクリングが楽しいと感じるのは化学的に当然の帰結でもあるわけです。そのほか、消化や快眠、骨密度、性機能、血液凝固などにもいい影響を与えると言います。

自転車がメンタルヘルスに役立つことは、医学的に証明されています。脳を成長させ認知能力を高めることもわかっています。セロトニンレベルだけではなく、もっと複雑な説明がされていますが、予防効果だけでなく、軽度のうつ病にある人にとって強力で効果的な治療でもあると、複数の専門家が結論づけています。

サイクリングをする人が増えれば、うつ病になる人が減り、軽度の人は改善し、治療中の人は改善を助けることになります。周囲が心配しても病院に行かない人はたくさんいます。うつ病の治療という点では、うつ病と自覚していない人にまで効果が及ぶという点で画期的と言えるでしょう。

Iowa State UniversityIowa State University

家族にうつ病の疑いがあって、病院に行って欲しいのに頑として受診しない人もいるでしょう。そんな場合、それとは全く関係ないふりをして、自転車に乗せるのがいいかも知れません。一緒に始めるとか、出てきたお腹をひっこめるとか、ガソリン代を節約して家計を助けるとか、きっかけはいろいろ作れるはずです。

自転車に乗る人が増えれば、うつ病の予防や症状の軽減になり、メンタルヘルスが改善し、拡大自殺を含めた自殺者が減る可能性があります。コロナとは関係なく見えますが、人々のメンタル面の改善という点で、コロナ禍後の悪影響を減らす効果が見込めることになるでしょう。

そんな単純な話ではないと言われそうですが、人々が自転車に安全・快適・便利に乗れるようにすることには、コロナ対応としての意味があることになります。少なくともモニュメントの作製や花火の打ち上げよりマシでしょう。自治体は余計なものに使うより、自転車インフラの整備にこそ、コロナ交付金を使うべきではないでしょうか。




◇ 日々の雑感 ◇

石川県などで地震が起き今日も余震が続きました。最近各地で頻発している感のあるのが不気味ではあります。

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