July 14, 2022

自転車生活を始めるきっかけ

自転車に関心のない人はたくさんいます。


このブログをお読みになるような方は、多かれ少なかれ自転車好きか、自転車に関心があると思いますが、全体からすれば少数派です。日本は台数的には自転車大国であり、日常的にママチャリを使っている人は多いですが、ほとんどの人は、特にそれを意識することもないでしょう。

最近は自転車が注目されたり、話題になることもありますが、多くの人にとっては、単なる話題に過ぎません。いま何のグループが人気だとか、こんなものがブームになっているといった話題と変わらないでしょう。家にあって乗ることはあるとしても、取り立てて興味のない人が大半です。

職場までの自転車通勤が話題にはなっても、実行している人はごく一部です。自転車は環境負荷が低いという理由で乗っているという人も少なく、話題にもなりません。自転車の事故やマナーの悪さはよく見聞きしますし身近ですが、自転車走行環境の整備とか、自転車の効用といったことにも興味はないでしょう。

Bike ChicagoBike Chicago

このブログで再三取り上げているように、欧米での自転車の位置付けは日本とは違います。全体的には人々の環境への意識も違いますし、自転車そのもののイメージや、そのもたらす影響への関心などについても違いがあります。ただ、欧米と言えども、自転車に関心が無く、乗ろうと思っていない人が大多数です。

アメリカでも、パンデミックでのロックダウンもあって自転車に乗る人が増えています。しかし、クルマ大国でもあり、ほとんどの人はクルマで移動します。ガソリン価格が高騰し、不満を感じながらもクルマに乗ります。自転車に乗り換える人の話を聞いたとしても、自分がそうするつもりはありません。

そこでイリノイ州・シカゴの、 Lori Lightfoot 市長は新しい自転車政策を打ち出しました。“Bike Chicago”というプログラムです。市民に自転車を無料でプレゼントするという単純明快なものです。ロックやヘルメットなども同時にプレゼントされます。

Bike ChicagoBike Chicago

今年の夏から始め、当初は500台、4年間で5千台を配布する計画です。自転車を持っていない人で14歳以上が応募できます。収入要件などはありますが、自転車を贈呈することで、市民に自転車に乗ってもらおうという狙いです。買ってまで乗ることは考えていないものの、無料ならもらおうという人は少なくないはずです。

これによって、住民の移動の利便性を向上させ、持続可能な交通手段の利用促進にも寄与します。このための資金は、“Climate Recovery Bond” 気候回復債券から支出されます。気候変動対策となるだけでなく、市民の健康増進にも貢献することになるでしょう。

Bike ChicagoBike Chicago

自分で自転車を購入して乗る気など全くなかった人が、これを機会に乗るかも知れません。市長は、“biggest expansion and upgrade of low-stress bike routes” 「低ストレスの自転車ルートの最大の拡張とアップグレード」と呼ぶ自転車環境の整備政策を進めており、これを多くの人に使ってもらおうというわけです。

たしかに、自転車に関心が無く、乗ろうとも思わない人が市民の大半でしょう。せっかく自転車レーンなどを整備しても、使ってもらわなければ無用の長物です。自転車を無料で配り、一度乗ってもらえれば、自転車の魅力や利便性、経済性などに気づいて使うようになる人が一定程度見込めるはずです。

Bike ChicagoBike Chicago

このプログラムは、市長が進める1億8800万ドルのシカゴ復興計画の一部でもあります。気候変動対策と、市民の移動オプションを増やすという市の目標にも合致します。より多くのシカゴ市民にとって、サイクリングを安全で手頃なものにするという計画の一環でもあります。

自転車を使うことを強制は出来ませんが、自転車の無料プレゼントを呼び水として、自転車に乗る人が増えることを期待しています。これはシカゴ市の政策ですが、個人で自転車に乗る人を増やそうとしている人が、同じアメリカのオレゴン州・ポートランドにいます。

Glorious bike propagandaGlorious bike propaganda

Jenna Phillips さん、27歳です。彼女は、自分のクルマの無い生活を、SNSのフォロワーと共有しています。これを彼女は、 “Glorious bike propaganda” と呼んでいます。「素晴らしい自転車の宣伝」とでも訳せばいいでしょうか。彼女自身、自転車の魅力に気づき、それを発信したいと考えたのです。

Phillips さんが2017年にポートランドのダウンタウンに引っ越してきた時、クルマの駐車場のために200ドルも必要でした。あまりクルマを使わないのに腹立たしい出費です。もちろん、クルマのローンやガソリン代、保険料、メンテナンス代、駐車やスピード違反のチケット代などにも1万ドル以上かかっていました。

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92%の世帯がクルマを所有し、76%の人がクルマで通勤するアメリカでは珍しい話ではありません。しかし、出費がかさむのに加え、ある時、彼女のクルマは故障してしまいました。そこで思い立って、クルマを処分し、所有するのを止めたのです。

Phillips さんは、その後、市の郊外に引っ越しましたが、自転車と公共交通機関だけで移動する生活になりました。もちろん不便なこともありますが、金融引き締め政策でクルマのローン金利が上がり、ウクライナ情勢などでガソリン代が高騰する中、家計の面では大正解でした。

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週三日の通勤に6マイル25分、自転車に乗り、さらに電車に乗り継いで20分かかります。でも自転車に乗るようになったことに完全に満足しています。このことをSNSで発信したいという気持ちになり、TikTokInstagramTwitter などで自転車生活の様子をシェアすることにしました。

クルマの無い生活という発信は、特にミレニアル世代やZ世代に刺さったようです。短い期間で、TikTok のフォロワーは1万6千人以上増えました。サイクリストや自転車好きが発信しているわけではなく、いわゆるバイカーとは見なされない、Phillips さんが、自転車生活について発信しているところに意味があります。



乗っている自転車は、最近電動アシストに乗り換えました。サイクリスト向けではなく、今まで自転車に乗らなかったような人に向けて、自転車生活の経験を共有するものです。自分の経験から、安全なロックはどうするの?とか、汗の対策は?といった身近な質問にも答えています。

一般的な自転車コミュニティとは違います。趣味で自転車に乗るサイクリストのコミュニティには、いないような人々が、Phillips さんに共感しています。自他共に認めていますが、少しふくよかで、サイクリスト体型でない女性の発信を見て、自分にも出来ると感じるのだろうと彼女は話します。



今まで考えもしなかったけど、自転車生活を始めてみようと思い立った人、始めてみるきっかけになった人は少なくないようです。そのような人たちに、自分の経験や、さまざまなヒントをシェアすることに加え、グループライドなども企画しています。

実際問題として、クルマのない生活に困難な部分がないわけではありません。ですから、全くクルマのない生活ではなく、あまりクルマを使わない生活でいいのです。それは自転車乗りとして恥ずかしいことではないことを強調しています。Phillips さん夫妻も必要な時はレンタカーを借りたりします。

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自転車を好きになりましたが、クルマはダメと言っているわけではありません。最初は、クルマ所有の経費の高さに辟易としてクルマの無い生活になりましたが、気候変動とかを掲げているわけでもありません。自転車に乗り始めたら楽しくて、その良さを実感していることを、少しだけ共有したいだけです。

自転車が趣味の人なら、自転車は人に勧めたくなる部分があると感じる人もあるのではないでしょうか。例えば、子ども時代以来、自転車に乗ってない人に、また乗ってみたら、けっこう楽しいよと勧めてみたら、その人が乗るようになったなんて経験があるかも知れません。

@jennabikes Errands are refreshing via bike ?? Consider leaving your car behind next time #carfree #bikelife #bikeportland #bikefit #portland #traderjoes ? BEE GEES VS 50 cent - EZ


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Lightfoot シカゴ市長の政策も、オレゴン州在住の、Phillips さんのSNSも、自転車に乗ってみようという人を増やす可能性があります。もちろんインフラの整備も重要ですが、自転車に全く関心のない人は多いわけで、最初に少しだけ興味をひくような、「きっかけ」も必要ということかも知れません。





◇ 日々の雑感 ◇

全国でまた新型コロナの感染が急拡大しています。極力感染対策をして行動制限のない生活を続けたいですね。

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