September 18, 2005

なぜあなたは限界に挑むのか

自転車レース先日、10代後半から20代前半の若者何人かと話す機会がありました。


と書くと何やら年寄りみたいですが(笑)、少し年下の人たちと自転車の趣味の話題になりました。その中で、世代ということなのか、たまたまなのか判りませんが、彼らの感じ方、考え方に違和感のようなものを感じました。けっこう考えさせられた部分がありました。

彼らの話を要約すると、「天気のいい日にサイクリングをする楽しさはわかるが、素人が一生懸命練習して、大会などに出る理由がわからない。例えば長い坂を登ったりして何が楽しいのか。なんで、そんな意味のない、苦しいことをするのか、熱中するのかわからない。」と言うのです。

それは、好き好きというか、それぞれの趣味だから、と言いましたが、そういうことではないらしいのです。つまり、「何の種目であれ、プロが金を稼ぐためにレースに出るのはわかるが、素人がレースに出ても意味がない。」というのです。冷めているという感じでしょうか。

「アマチュアでも、例えば国内最高を決めるレースなどなら、ある程度の名誉やメリットもあるだろうから一生懸命にもなるだろう。でも単なる草レースで、ぱっとしない成績しか出せないのに、なぜやるのか。」ということらしいのです。そんなの理屈じゃないだろ、という感じですが..。

なんのスポーツであっても、「プロやプロを目指すようなクラスなら、やる意味がある。また自分達が、単なる遊びでやるのも楽しい。でも、到底金を稼げるレベルでも無いのに一生懸命練習して、長い時間を使って、草の根大会に出て、結果自慢にもならない成績で、何の意味があるのか。」と言うことらしいのです。

「いや、やってみると楽しいぜ。」とか、達成感があるとか、ひと汗かいた後のビールがうまいとか、いろいろ言いましたが、あまりピンと来ていないようでした。私もいまいち、彼らの気持ちがわからなくて、話がかみ合わない感じがありました。

彼らが、何を抱えているのか、よくわかりません。無気力なのでしょうか、達観しているのでしょうか、焦燥、諦め、無力感、シニカルなのでしょうか。単に経験が乏しいだけなのか、一生懸命さに対する照れなのか、今ひとつ、つかめませんでした。若い世代なのに、何かに熱くなれないのは何故なのでしょうか。

あるいは、スポーツ以外なら熱くなれるのでしょうか。いや、熱くなっている人だって大勢います。今どき、やる前から情報がたくさんあるので、もうわかった気になってしまうのでしょうか。真面目なのか、冷めてるのか、それとも流行でないとか、スポーツすること自体色あせてしまっているのでしょうか。

よく言われるように、無気力、無感動、無関心といった世界なのか、単にコミュニケーションが取れないのか、とらえどころがない感じでした。私は何と答えればよかったのでしょうか。私は、それをおかしいことだとは思ってもいなかったので、その場ではうまく答えられませんでした。

自転車レース

改めて、なぜ苦しい練習をしたり、何の意味も無いレースに出たりするのでしょう。そういわれると考えてしまいます。人それぞれ理由はあるでしょう。友人との競争だったり、家族とのリクリエーションだったりするかもしれません。結論として私が思うには、つまるところ、楽しいということなのだと思います。

何が楽しいのか、という部分が問題ですが、思うに人間の本質的な部分だと思います。すなわち、挑戦することの楽しさ、喜びです。挑戦して、勝利する喜びなのではないでしょうか。自分の限界や、従来の記録を打ち破る喜び、それに挑戦している楽しさを感じるのではないでしょうか。

それが日本記録である必要はなく、自己ベストを目指す。苦しいけど、自分に打ち克つことを目指す。そんな喜びのような気がします。スポーツでなくても、仕事でも勉強でも、日常生活においても、無意識にいろいろなことに挑戦しています。今まで出来なかったことが出来ればうれしいし、より良い結果が出ればうれしい。

地球規模で考えても、絶え間ない偉大な挑戦により、人類は進歩してきました。これからもそうでしょう。それが何であれ、一人一人の人間の持つ、さまざまなことに挑戦する楽しさ、喜びの総和なのではないでしょうか。個人で見ても、人生における挑戦から、身近な、とるに足らない事での挑戦まで、いろいろあるでしょう。

成績のアップに挑戦したり、給料のアップに挑戦することもあれば、ゲームの高得点に挑戦する、少しでも安く買うことに挑戦する、いかに手を抜くかに挑戦する、全く意味の無いことでも、無意識に挑戦していたりします。大した事でなくても挑戦する楽しさがあります。それが無いと、生活にハリがなくなり、人類に進歩がなくなります。

そんな中で、自分の肉体を使って挑戦するスポーツというのは、とても明確で大きな喜びです。レースは、挑戦の目標でしょう。その記録自体は、社会的にみても何の意味も持たないでしょうが、余暇としての楽しさであり、生きていくうえでの楽しさ、大げさに言えば人生の喜びの一つ一つなのではないでしょうか。

彼らとの話がきっかけで、ここのところ、そんなことを考えてました。彼らが、そうした喜びが感じられないとしたら、問題なのかもしれません。彼らが悪いわけではなく、今の社会状況を反映しているのかもしれません。最近よく聞く、ひきこもりやニート、ネット自殺や短絡的な犯罪などの背景につながる話なのかもしれません。

でも、10代から20代前半なんて、いろいろ悩む時です。いろんなことがあり過ぎて見えないこと、迷いもあるでしょう。彼らもこれから、きっとわかっていくと思います。また、逆に言えば、そんなモヤモヤしている時こそ、自転車にでも乗って、無心でペダルをこぐのがいいのかもしれません。





全国的に天気がいいようですね。連休でお出かけの方も多いでしょう。つい、こないだまで暑かったですが、急にいい季節になってまいりました。外に出ないとモッタイナイ、ですね。

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この記事へのコメント
cycleroad様

はじめまして。tshinnyoと申します。
ちょっと考えさせられるお話でしたので、若者の立場で(もう25ですが…)コメントさせていただきます。

お話された若者と言うのは、自転車乗りではなさそうですね。
というのは、自転車乗りなら良いパーツが欲しい、少しでも速く走りたいと思うのが自然だからです。
何故自然かというと『好き』だからです。これが結論です。

>今まで出来なかったことが出来ればうれしいし、より良い結果が出ればうれしい。
これは自転車に限らず、『好き』全般に言えることですよね。
彼らはまだ『好き』を模索しているのだと思います。
Posted by tshinnyo at September 18, 2005 13:58
続き

10代後半から20代前半といえば、将来を真剣に考える時期です。
例えば、この就職難の時期に少しでも有効に働くために資格の勉強をする。
これは彼らにとって意味のあることです。草レースで優勝するよりもずっと。

彼らは大人が考えているよりもずっと真剣に『実用』について考えています。
それは彼らの責任ではなく、彼らに余裕を与えない社会に問題がある訳です。

なんだか話が混沌としてきましたが、彼らを諦めないでください。
「スポーツに意味を見出せない」と嘆くレベルまで彼らは必死なのです。
楽天的なお馬鹿さんなら、こんな台詞は出てきません。

エラーが出たので二つに分けました。
長くなってすみません。
Posted by tshinnyo at September 18, 2005 14:00
tshinnyoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
若者の立場のご意見、大歓迎です。
ええ、全くのアンチ自転車派でした。
私の元々の記事の文章が良くないので、誤解を与えた部分があるようです。なるほど、おっしゃることはよくわかります。おそらくtshinnyoさんのイメージされた若者達とは違うのだと思います。
趣味よりも優先すべき事があるということではなく、何かに打ち込むことが、かったるいとかカッコ悪いとか、疲れるとか、そんな感じなのです。そんなことに力を使って馬鹿みたいと思っているのではないかと感じました。
tshinnyoさんほど、真剣に考えているとも、到底思えません。はっきりは言いませんが、くだらないと馬鹿にしている感じなのです。やったことも無いのに..。
Posted by cycleroad at September 19, 2005 07:43
おっしゃるように将来を真剣に考えて、何に価値をおくかとか、何をしたらいいのか考えているというのであれば、むしろ問題にすることはないのですが、そうは見えないんですよね。
スポーツに意味を見出せないというより、そんな下手なスポーツをやるなんてくだらない、だるいと言わんばかりなんです。意味も無いスポーツをやる人の気が知れないというか..。
彼らの言葉を、そのまま再現すると、余計ややこしいので、要約しましたが、うまくニュアンスが伝わりませんでしたね。私の筆力の問題です、すいません。
決して彼らを見下したり、諦めているわけではありません。ただ、無気力っぽいのが気になります。
もっとスポーツ以外のことに関心が向いており、真剣に人生を考えているなら、おおいに結構です。でも、むしろ何に関しても諦めてしまっている、やる前から決め付けてしまっている感じです。
Posted by cycleroad at September 19, 2005 07:48
うまく表現できませんが、その辺の何かに熱中すらしない、むしろ必死ではない感じが気になったので、記事にしました。

彼らは、言葉は悪いのですが、たまたま澱んだ感じになってしまっていたのかもしれません。無論ずっとこのままだとも思いませんが、人の意見を入れたり、自分を客観的に見られない状態のようでもありました。

いえいえ、長文でも構いません。真摯なご意見をいただき感謝します。おそらくtshinnyoさんとは、考え方が近いような気がします。
Posted by cycleroad at September 19, 2005 08:05
初めて書き込みをさせて頂きます、tmtbtと言います。

私は、いくらかはcycleroadさんより若者寄りかと思いますので、若者の擁護をしたいと思います。
現在「若者」と呼ばれる年齢層の人間は、早い段階から情報に晒されているので「情報に踊らされない」事を美徳とするような
雰囲気があると思います。

自転車に関しては、私も友人や職場の若い人に聞かれる事は多いですが、その際気をつけることは
「レースリザルト、自己鍛錬や克己心と言うような、自己満足の話をしない」
「興味を持って欲しいなら“あそこの駅まで何分"“何処其処までなら日帰り”」
というような具体例を示す様にする事です。

すると彼らは「自転車にはそういうポテンシャルがあるのか」という突っ込んだ会話をする事に興味を持ってくれます。
Posted by tmtbt at September 19, 2005 18:34
情報の「実効性」とでも言うのでしょうか、
そういった所には非常に敏感であるし、それが提示されれば
「自分はしないけれども、自転車をそういう風に楽しむ、或いは熱中する人達が居る」世界を、甘く見るような発言はしないでいてくれます。

ジェネレーションギャップ、と言ってしまったらそこで終わりだと思います。
迎合するのではなく
「若者に分かるように、彼らの価値観に合うように自転車の素晴らしさを伝える」というのも年齢や経験の先んじた私達の出来る事なのではないでしょうか。

ま、私の切り札は「とにかくさ、自転車は痩せられるよ」と脚を見せてしまう、大人げない方法ですが。
Posted by tmtbt at September 19, 2005 18:46
cycleroad様

なるほど、私は良い方に思い違いをしていた(そうしたかった)ようです。
確かにそういう若者はいます。私も近い世代ですが、彼らとどう接して良いのか判りません。
ただ言える事は、彼らは実に冷静です。冷めた目で世の中をみています。
彼らは意識の中で「自分は物事を無駄なく見ている」と思っているのかもしれません。
もっとも、これは私の勝手な想像ですが。

>天気のいい日にサイクリングをする楽しさはわかる
という辺り、彼らは虚無ではありません。
そこから導き出される答えは『彼らは知らないだけ』という事です。
cycleroad様の言われる通り、彼らはこれから社会に出て色々な事を経験し、判っていくでしょう。
無知の知を繰り返して、大人になります。
Posted by tshinnyo at September 19, 2005 19:31
「最近の若者」を嘆くのは大人の常です。
大人は一部の若者を見て全体を判断しがちですが、今回の彼らもまた一部です。
もっともニート等、社会問題にまでなれば嘆かざるを得ないのが現状ですが。

ところで、彼らを作り上げたのは今の教育、彼らの親です。
威厳ある父という像は崩壊し、友達感覚がそれに代わりました。
それが良いか悪いか、私には判りません。ゲンコツで頭を殴るのは『愛の鞭』か『暴力』か。
時代は常に流転します、我々はそれに臨機応変に対応していかなければならないのだと思います。
上の書き込みをされておられるtmtbt様など、巧いなぁ、と思ってしまいます。

色々偉そうな事を言ってしましましたが、
cycleroad様のように警笛を鳴らす大人がいるのはいつの世も有難い事です。
また長くなってスミマセン。。。
Posted by tshinnyo at September 19, 2005 19:32
tmtbtさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど。おっしゃること、納得しました。そういうのが、カッコいいと思っていたりもしますね。私だって同じ年代の時に、必ずしも熱かったわけではないですし。その当時は、クールに反応しているつもりで、周りの大人から同じように見られている部分があったかもしれません。
ただ私から、自転車を熱く語ったわけでは全然ないんです。基本的に人それぞれと思っていますから。最初はそうかもね、くらいしか反応してませんでした。でもなぜか、突っかかって来られて、何が面白いのか教えてくれよ、という感じもあったので、それなりの話をしました。
私の説得力のなさもあると思うのですが、理解してたとしても、素直に興味を示す態度が取れなかったのかもしれません。
Posted by cycleroad at September 20, 2005 07:16
反発もあったかもしれません。単純にスポーツに興味がもてないタイプとか、興味がもてない時期だったのかも知れません。
こだわるわけではないのですが、理解とか情報、価値観、伝達とは全然別の部分で、彼らの美徳の部分を理解したとしても、無気力とか諦めっぽいところはあった気はします。若者一般論ではなく、多分個々の問題なのでしょうけど。
Posted by cycleroad at September 20, 2005 07:17
tshinnyoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、何が面白いのと言い、心は開かなくても冷静に観察している、あるいはそう思っている感じはありますね。おっしゃってるイメージ、わかります。
知らないことを聞いても、自分から知ろうとしなければ、理解すらできないこともあるでしょう。自分からわかろうとしない限り、いくら他人が教えても無駄です。そうですね、無知の知です。
確かに、彼らの、しかもたまたまその時の反応だけをとって、あまり一般論を語ってはいけませんね。その部分は反省します。
教育の問題はありますね。それと「最近の若者は..」と年寄りっぽく言うつもりはないのですが、そうなってしまいがちです。
Posted by cycleroad at September 20, 2005 07:23
そこには、相互理解の不足、コミュニケーションの不足、あるいは思い込みなどがあるかもしれません。批判や決め付け、嘆き、わかったつもりでなく、まず理解することが必要ですね。そんなに世代が違うとも思ってないですし(笑)。

いえいえ、偉そうなんてことないですよ。皆さんのお陰で私も勉強になりましたし、いろいろ考えを深めることが出来てよかったです。改めてありがとうございます。

私こそ、文章長くなってしまうんですよね(笑)。
しかし、このコメント欄、文字数制限が少な過ぎるな。
Posted by cycleroad at September 20, 2005 07:24
 
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