
自転車の後ろにベビーカーを改造したカートを取り付け、全国の図書館を巡っているそうです。26歳のこの写真の方は、今年1月からこれまでに約550カ所を訪問し、自分が感銘を受けた本を図書館に置いてもらうよう要請して回っているそうです。
昨年春、偶然みた写真集を全国の人に読んでもらいたいと思い立ち、勤めを辞めて自転車で日本1周の旅に出たそうです。各地の図書館に立ち寄って写真集を備えてくれるよう文書で依頼しながら、全国の図書館約3000カ所をあと2年ぐらいで全部回りたいと、ペダルをこぎ続けているそうです。自転車でまわらずとも、文書を送付して依頼したらどうかという素朴な疑問もわきますが、どんな本か見たわけではないので、それは置いておきます。
ところで、10月27日から11月9日までは読書週間です。昨今よく語られる日本の児童や学生の読解力の低下もあって、今年7月、「文字・活字文化振興法」が制定されました。秋の読書週間のスタート日となる10月27日は、「文字・活字文化の日」とも制定されました。
この法律は、文字・活字文化の振興に関する施策の総合的な推進を図り、知的で心豊かな国民生活や活力ある社会の実現に寄与することを目的としています。昔から、読書の価値、本を読むことの有益さや大切さは誰もが認めるところです。それは洋の東西、老若男女、今昔を問いません。
かのソクラテスも、「書物を読むということは、他人が苦労して成し遂げたことを、容易に自分に取り入れて自己改善をする最良の方法である。」と述べています。しかし現代の日本の青少年の読書離れは、以前から指摘されるところであり、先日は
四十歳代の活字離れが深刻という調査結果も出ました。全体では、この1か月間に本を全く読まなかった人は52%だったそうです。

ただ、どんなに本を読めと言われても、本当に読書をする習慣は、人に言われても、そう簡単に出来るものではありません。なぜなら、人生における大切な学びは、自分で気づくことによってしか、手に入れることはできないからです。
また、自分が読みたくてする読書でなければ、得られるものも少ないでしょう。本当の読書の必要性、有益性を自ら感じた経験のある人なら自明の理ですが、なかなかその機会が得られない人もいます。
そういった意味では、地味な法律ではありますが、こういった努力は必要でしょう。一時期話題になった「米百俵の精神」ではありませんが、国家百年の礎にもなります。
デカルトは、「すべて良き書物を読むことは、過去の最もすぐれた人々と会話をかわすようなものである。」と述べています。少しでも読書の必要性、有益性に気づく人が増えるよう、良書に触れる機会を増やすことは無駄ではありません。子供に言うだけでなく、自ら親しむべき大人も多いはずです。
ただでさえ、学生も含めた現代人は忙しくなっています。多くの人はメールをチェックし、インターネットを使い、新聞や雑誌にも目を通すでしょう。情報収集に忙しく文字情報に触れている分、読書はしなくても読んでいる気になっている人も多いと思います。
でも、そうした情報収集と読書は別です。実は忙しい人ほど読書をしているものです。読書をする暇のない人ほど損をしているのです。
イギリスの大英帝国時代の歴史家エドワード・ギボンは、植民地だったインドに住み、歴代のマハラジャたちが遺した絢爛豪華な財宝に驚きますが、「インドの全財宝をあげても、読書の楽しみには換え難い。」と語っています。
昔から読書の秋と言いますが、秋の夜長は読書に持って来いです。日中の貴重な晴れ間は自転車に乗りに行くのがいいと思いますが、雨の日も多いです。晴耕雨読ならぬ、晴輪雨読もいいのではないでしょうか。
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せっかく税金を払っているのに、地元の図書館を利用したことがないという人も多いのではなでしょうか。場所によるでしょうけど、けっこう使えたりします。地元の図書館はあまり充実してない、ということであれば、自転車に乗って違う町の図書館に出かける、なんてのもアリだと思います。
Posted by cycleroad at 04:00│
Comments(2)
雑誌「city【fu_r Notizen】at October 30, 2005 11:55
トラックバックを下さいましてありがとうございました。図書館に真摯に関わろうとする自転車乗りの話を興味深く読ませていただきました。また、「人生における大切な学びは、自分で気づくことによってしか、手に入れることはできないからです。また自分が読みたくてする読書でなければ、得られるものも少ないと思います」とのメッセージ、本当に同感です。こちらも図書館に関わる者の一人として、一歩一歩できるところから進んでいきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします。