横から切ると隠れている無駄
名古屋が、去年の博覧会や新空港だけでなく、最近何かと話題になります。
名古屋嬢のファッションが注目されたり、食などにも名古屋独特の文化があります。名古屋圏の経済という面でも他が不況の時でも活気があり、その存在感が増しています。名古屋と言えば、道が広いのもうらやましいところです。私も何度か行った事がありますが、広い道が多いです。
以前何かの本で読んだ記憶がありますが、戦後の焼け跡だった頃の名古屋市長が偉い人で、非常に先見の明をもっていたと言います。当時、クルマと言えば、ほとんど進駐軍のものしかないような時代です。舗装している道路もほとんどない中で、これだけ太い道路にしたのは凄いと思います。
当時の人 には、とてつもない無駄に見えたでしょう。 でも、おかげで、東京や大阪が道路拡幅のための用地買収に四苦八苦するのを尻目に、余裕で都市計画を進められたわけです。都市交通の面だけでなく、火災の延焼防止や震災への備えなどの防災面の功績も見逃せません。
私の友人で、名古屋へ転勤になった人がいて、そんなにクルマの運転が下手というワケではないのですが、広すぎて右折の為の車線変更が間に合わないと言っていました。最初から左の方の車線を通って、右折したい場合は左折を3回するそうです(笑)。
その名古屋で全国初の自転車レーン設置というニュースがありました。読売新聞の今月3日の記事ですが、下に引用しておきます。
伏見通に自転車レーン 中区の国道19号 車・歩行者と完全分離 幹線道で全国初
国土交通省と愛知県警、名古屋市は、同市中区を走る国道19号線(通称・伏見通)に、幹線道路としては全国初の自転車専用レーンの整備を決めた。市中心部では自転車利用者が多く、歩道を走る自転車と歩行者の接触事故や、無秩序な歩道上の駐輪が問題になっている。
専用レーンの設置は、歩行者と自転車、車の3者を完全に分離し、新たな道路モデルとするもので、5月に着工、来年度中の完成を目指している。
国交省名古屋国道事務所などによると、19号線の若宮北―日銀前交差点間約1・2キロで、片側4車線のうち道路両側の歩道沿いの各1車線を自転車レーン(幅2メートル)と駐輪場(同)、車の荷物の積み降ろしなどに使う「停車帯」(幅2・5メートル)として整備する。歩道を含めた道幅全体は広げず、中央分離帯などを細くして、専用レーンなどのスペースを確保する。レーンの車道側には、ガードパイプなどを設けて安全を図る。
また、対象区間沿いには、オフィスビルや飲食店などが立ち並び、歩道側の1車線は荷降ろしなどの車が頻繁に停車しているため、避けようとして車線変更する車が多く、事故や渋滞の原因になっていた。しかし、車線は減少するが、停車帯の整備で車の流れもスムーズになり、事故防止にも役立つとみている。
県警や名古屋市などでは、現状を把握するため、昨年12月からこの区間で、自転車の利用者や荷降ろし中の運転手らを対象に、通行目的や停車時間などのアンケートを実施しており、今年度末に調査結果をまとめ、4月には現地の工事測量に取りかかりたいとしている。(2006年1月3日 読売新聞)
先月末取り上げた
大分市の社会実験より一歩進んで、実際に車道をつぶして自転車レーンを設置するという話です。記事を読んだ限りでは、駐輪スペースや車の停車帯、ガードパイプを備えた、理想的な形に思えます。ただ道が広い名古屋だから出来ること、と言えばそれまでです。果たして他の都市では出来ないのでしょうか。
個々の道路はケースバイケースですが、他の都市でも意外に活用できるスペースはあるのではないでしょうか。大分の例では一車線をつぶしていました。
仮に車線をこれ以上減らせない道だったとしても、この例でも書かれているように、中央分離帯や歩道との間の植栽の幅を減らすという英断は、大いに評価できます。
せっかく広い中央分離帯や植栽を設けたのに、というのもあるでしょう。しかし貴重な空間を、より交通安全に貢献させる形に柔軟に利用して欲しいものです。木陰を提供する街路樹にしても、最近はその弊害も認識され、見直す動きがあるようです。もちろん緑は多いに越したことはないですが、地元の人にしてみれば、側溝が詰まって冠水の原因になるため、落ち葉を集めるだけでも大変な苦労をされているところもあると言います。
太い植栽帯が格好のゴミ捨て場になっていたり、人々の横断のために枯れてしまうところもあるでしょう。あまり背の高い植込みは子供の登下校時に死角になったりもします。不審車が停車していても気づきません。植栽の手入れにかかる多額の経費負担の問題もあります。意外に検討の余地が隠れています。
歩道にしても、駅から離れて実質歩行者数が少ないところも多く、もっと狭くていい場所もあるはずです。実際に歩道上に違法駐車されるほど広い歩道もあります。歩道が広いぶん沿道の店の私有地のように使われていたり、看板や陳列台に不法に占有されている例もよく目にします。路側帯やパーキングメーターなどの配置によっては、クルマも自転車も走りにくいデッドスペースが生まれている場所もあります。こうして道路を断面図で考えたときに、まだまだ改善の余地もありそうです。
それでも無理なら、必ずしも大通りに自転車レーンを設置する必要もないでしょう。都市部の道路であれば、すぐ一本裏に平行した細い道が通っている場合も多いです。そうした道は、表通りの抜け道になっていたり、違法駐車が占領していたりします。こうした道に違法駐車のスペースを排除したり、一方通行にするなどして自転車レーンを作る手もあると思います。
表通りの自転車レーンがいきなり終わっているのも困りますが、きちんと誘導する形にして連続性が保たれれば、多少の迂回は仕方ないところです。平行した裏通りも無ければ、もう少し大きく迂回させることも考えられます。あくまでもレーンとしての連続性は求められますが、走りやすければ多少迂回していても利用されるでしょう。
工夫さえすれば、どんな街でも自転車レーンの整備は進むと思います。このような新しい考え方による道路モデルも期待したいものです。一方、こだわりすぎるとレーンの設置が進まないのも目に見えています。場所によって柔軟に考えて欲しいところです。
幹線道路での自転車専用レーンは全国初ということですが、他の都市にも波及することを期待します。個人的に、どうしても自転車道のニュースには反応してしまうというのもありますが、自転車と自転車道にこだわったブログなので、今年も取り上げて行きたいと思っています。
今どき、どこかの自治体のように歩道に色を塗っても意味の無いことは明らかですし、こうした、クルマと自転車と歩行者を3者完全分離する自転車レーンという流れが広まっていって欲しいと思います。
◇ ◇ ◇
日本海側の大雪は、ますます大変なことになっているようです。融雪装置なども、この雪の降り方では歯が立たないのかもしれません。
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Posted by cycleroad at 08:00│
Comments(5)
shunさんからの情報で、調べてみたら、「伏見通に自転車レーン 中区の国道19号 車・歩行者と完全分離 幹線道で全国初」というニュースを知りました。
ナゴヤで自転車がクルマを追いだした!【ヒマジンWattsuのどこまでいくの?】at January 15, 2006 23:06
名古屋で自転車に乗っている者です。
web上の知り合いからこのニュースを聞いて、こちらのblogで詳しい情報を入手させていただくことができました。ありがとうございます。
この自転車レーンの考え方は、自分も以前からそうならないものかと考えてたものだったので、この名古屋で実現することとなってうれしい限りです。
才倉黄土さんは、自転車レーンの普及のために深い見識をお持ちなのですね。自分もその考え方に賛同させていただきます。またいろいろと情報を頂けるとありがたいです。
リンク&トラックバックさせていただきます。
Wattsuさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、名古屋の方ですか。まだ完成したわけではないので、おめでとうございますと申し上げるには早いですが(笑)、良かったですね。でも用地買収に何十年もかかるわけでもなく、もともと余裕で実現可能なくらい道が広いですから、決まれば早そうです。うらやましい限りです。名古屋がいいお手本となって、全国に波及することを期待したいですね。
いえいえ、深い見識だなんてお恥かしい限りです。私も以前から考えていたことを、あれこれ書いているだけなんです。でも、ご賛同いただき、とても嬉しいです。
同じように考える人も少なくないと思うのですが、そうした方が増えれば、行政にも少しずつ反映されていくでしょう。日本中が走りやすくなったらいいですね。
こちらこそ、名古屋情報も含めて、いろいろ教えてください。
三十路を超えてから本格的にケッタ(名古屋・尾張地方で自転車のことです)に目覚めましたPートと申します。
Pートは名古屋市北部の20キロ圏内の町に住んでおり、名古屋市内の大須(名古屋の電脳街)や、名駅(名古屋駅)、自転車屋さんへ、ケッタで1ヶ月に一度くらいは足を運んでおりまして、WATTSUさんのブログに『伏見通りに自転車専用道』と言う内容をたまたま見掛けまして、辿って行きましたら才倉黄土さんのブログにたどり着きました。
愛知県人にもかかわらず『伏見通りに自転車専用道』の話はまったく気づかず、自分の無知さに情けなくなりました。
この伏見通りは、ケッタでたまに通りますので完成する日がとても楽しみです。
今後も楽しみに読まさせていただきますので頑張ってください。
最後に、貴殿のブログを当方のブログにリンクをかけさせていただいて宜しいでしょうか!??
Pートさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ケッタとかケッタましんと呼ぶみたいですね。私も名古屋の友人がいますので知っていましたが、最初は雪駄(せった)の親戚か何か、草履のことかと思ってしまいました(笑)。近い感覚なのかも知れませんが..。
WATTSUさんの所からですか。ようこそお越しくださいました。
いえいえ、私も地元の公共施設などが出来てから気づくこともありますから、行政のニュースなんてそんなものですよ。
でも何だか今後にも期待が持てそうな雰囲気のニュースなので、その意味でも楽しみですね。うらやましいです。
ご声援(笑)、ありがとうございます。
もちろん、リンクでもトラックバックでもご自由にどうぞ。わざわざご丁寧に、かえって恐縮です。
ありがとうございます。
リンク掛けさせていただきますのでよろしくお願いします。
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