
昨日は夢のような
ベロシティ構想の話を取り上げましたが、本当にただの夢物語に過ぎないのでしょうか。
この
ベロシティ構想、日本だったらどういう反応になるでしょう。まず自転車に乗らない人、乗ることに積極的でない人にとっては、全くナンセンスな話です。また自転車は使っても、最寄り駅まで以上の距離を乗ることに否定的な人の賛成も期待できそうにありません。暴走自転車や迷惑駐輪など、負のイメージにネガティブな人々も少なくないと思われます。なんと言っても、自転車好きの人々はマイノリティだという現実を認めなければなりません。
確かに、このベロシティ構想を実現するためには多額の建設費用がかかります。その費用負担をどうするか考えなければ、全く現実的な話たりえません。道路特定財源による整備なら、あるいは可能かもしれません。しかし、費用負担するクルマのドライバーには、簡単に受け入れられる話ではないでしょう。高速道路のような有料道路にする手もあるでしょうが、果たしてどれほどの人が利用するでしょうか。同じ払うなら、電車賃払って楽に移動するのが普通の感覚だと思います。

このベロシティ構想への、主として北米に住む人々の反応を見ても、必ずしも賛同が多いわけではありません。「あら、涼しそうね。」などという反応もありますが、むしろ現実的な意見も目立ちます。
「そのうち景観的に目障りになる。」とか「自転車を隔離することに反対する人々や団体も多い。」という意見もあります。積極的に反応するのは興味のある層、すなわち自転車に乗る人々のはずですから、サイクリストと言えども手放しで賛成するわけではないようです。
もちろん、その危険性を指摘する声もあります。事故発生時の救護態勢が問題視されています。どうしてもツール・ド・フランスなどのレースで発生するような、一人の転倒が多くの人を巻き込む連鎖的事故を連想させるみたいです。そもそも分離合流や右左折など、構造的問題を指摘する声も少なくありません。
また、「なんで自転車だけなんだ。スケートボードやスケーターにも開放しろ。」といった意見もありますし、「まず、こんなものを作ること自体の環境への影響はどうなんだ。」と批判する人もいます。確かに、「高架にしてチューブで覆って送風する」設備は、建設にもより多くの資源を使うでしょう。常に送風して空気を循環させるなら、施設としても大きなエネルギーを消費するわけで、決して環境に対する負荷が小さいとは言えません。
日本でこれを実現するとなると、用地買収の問題も出てきますし、都市における土地はすでに高度に利用されていることも多く、物理的なスペース不足の問題も出てくるでしょう。では、まるで夢物語で実現の可能性すらないのでしょうか。
いい機会ですので、私が以前から空想している話を書いてみましょう。それは、日本の都市で、このベロシティのような構想を実現するために、地下を利用するという発想です。それも一から建設するのではなく、共同溝などの既存の地下施設を使うのです。
共同溝は、電気・ガス・水道などのインフラを共同で地下に埋設するためのものです。別々に道路を掘り返すのも不経済ですし、あらかじめ大きなトンネルに通路を作っておけば増設やメンテナンスも容易です。実際に東京をはじめ各地に出来はじめています。
この共同溝の管路のメンテナンス用の通路は、普段使われているわけではありません。ベロシティのように、具体的なイメージ画像が作れるといいのですが、あいにくその技量がないので、参考となる写真からイメージしてみてください。

欧米に比べて、日本の電線の地中化が遅れているのは、よく指摘されるところです。観光を振興する上でも景観的にマイナスですし、地震や台風などの災害にも弱いです。簡単にライフラインが切断されます。火事の時の消火などにも邪魔になっています。
今後電線の地中化は、いずれ取り組むべき課題です。ゴア米元副大統領の情報スーパーハイウェイではありませんが、光ファイバーなどの敷設も進めて行くことになるでしょう。今後も共同溝は増えていくに違いありません。その管理用通路を普段、ちょっと間借りできないものでしょうか。
昨年、東京の集中豪雨で有名になった、地下貯水池、放水路などもあります。貯水池と言っても、巨大な地下のトンネル状になっています。しかも、その役割からして、普段は水が流れていません。もちろん、台風が接近したら通行止めは止むを得ないでしょうが、そのほかの全ての季節は、無駄とは言いませんが空いているわけです。ちょっと貸して欲しいところです。
ほかにも、地下街や地下道、地下トンネルや地下鉄の管理通路など、地下にはいろいろな通路があります。全て使えるわけではないでしょうが、うまくつなげて、ネットワークできないものでしょうか。少なくとも一から建設するよりは実現性があり、他の用途と併用することで、資金的な目途がたちます。自転車通行レーンとして供用出来るように設置基準を法制化して、各事業主体に義務付けるだけです。


もちろん、具体的に調べたわけではないので、いろいろな問題もあるとは思います。考えられる問題を挙げればキリがありません。さらに日当たりも無ければ景色も見えません。現時点では机上の空論と言われればその通りです。しかし、新たに高架式のチューブ道路を建設するよりは現実味があるのではないでしょうか。
道路のちょっと下を走るだけです。地下でも自転車なら排気ガスがこもることもないでしょう。駐輪場も地下に併設すれば、放置自転車の問題にも朗報です。信号もほとんど不要、歩行者もいません。もちろん雨や風の影響もありません。もし実現すれば、都市における現実的な交通手段として役立つ可能性があります。
地下自転車道ネットワークなら雪にも強いですし、地下道は地震にも強いと言われてますので、災害時の救援にも使えるかも知れません。地下は、基本的に夏涼しく、冬暖かいのも利点です。こんな施設があったら世界中の人が自転車に乗りに来るに違いありません。観光収入も増えます。
地下自転車道なんて、ただの笑い話と言われるかもしれません。現実問題として、電気や通信事業者、水道局などの関係者には嫌がられそうですし、実現のための強力な推進主体や有力な組織もありません。道路建設における、いわゆる道路族議員のような存在もありませんし、自転車業界にも期待出来そうにありません。
サイクリストにも賛否があるでしょうし、その熱意が結集することも期待薄かも知れません。現状では夢物語の域を出ず、可能性は限りなく低いのは認めます。ただ、時代の趨勢として環境への意識の高まりなどもありますし、何かをきっかけに、多くの人の共感を得ることが無いとも言いきれません。期待は持っていたい気がします。
東京など太平洋側でも軒並み雪のようです。また雪に弱い首都圏などの交通は混乱し転倒者も続出でしょうね。
ベロシティ(velocity)という単語を辞書でひくと、速さ、速度という意味で、speedより形式ばった言い方と書いてあります。が、velo−Cityと区切ると、自転車の都市の意味にもとれます。そんな名前の構想があるようです。
ベロシティという都市の理想【サイクルロード 〜千里の自転車道も一ブログから〜】at January 23, 2006 16:00