ベロモービルという未来の波
マイカーで通勤している人は、東京とその近郊のような公共交通の発達した地域でも、意外に多いようです。
そうした通勤のクルマが朝夕の道路渋滞に拍車をかけてるいることに疑いの余地はありません。最近はあまり目立った働きかけではありませんが、関係省庁では公共交通の利用を呼びかけています。マイカー通勤を減らすべく「ノーカーデー」を設定したり、事業所には社用車の持ち帰りをやめるよう要請しています。通勤のための自家用車はドライバー1人しか乗っていない場合も多いので、せめて複数の人で同乗するよう配慮も求めていますが、なかなか改善には至っていないようです。
公共交通を使わない、あるいは使えない理由もあるでしょう。個人の自由と言えばそれまでですが、勤務先に駐車場が確保できる人ならば、ただ単にラクだからという人もいるはずです。最近でこそ、自転車通勤をしている人も聞くようにはなりましたが、一般的にはまだまだ少数に過ぎません。マイカー通勤の人は、ほとんど考えたことも無いかもしれませんが、仮にマイカーを自転車に乗り換えたとしたら困る理由はなんでしょうか。
所要時間でしょうか。確かに距離があれば現実的でないかもしれません。しかし意外と長い距離でも自転車通勤は可能です。また渋滞を考えれば、決してクルマより自転車が遅いとは限りません。疲れるからでしょうか。もちろん自分の筋肉を使うので当然ですが、運動不足解消による健康増進というメリットもあります。
他に、危険性や寒さなどの理由もあるでしょう。全ての場合に当てはまるわけではありませんが、燃料費や各種の維持費を考えれば大幅なコストダウンになるという大きなメリットもあるのに、自転車通勤が現実的でない大きな理由、それは雨ではないでしょうか。
しかしその雨も、
昨日取り上げたようなフェアリングのついたカンベントなら大丈夫です。ちょっと突飛な感じはしますが、雨でも大丈夫なら検討の余地があるのではないでしょうか。ある程度の寒さもしのげます。ピンと来ない人も多いと思いますが、実際に今後有力な交通手段として、通勤に限らず広く使われる可能性があります。
昨日は、趣味でフェアリングを付けたリカンベントに乗っている人たちを取り上げました。しかし、ネット上で、そうした自転車が多く見られるのは、スピードを出すため空気抵抗を減らそうとしている人が多いから、と言うだけではありません。
環境を考えた次世代の交通としてフェアリング付きのリカンベントに注目している人、雨でも平気な実際の移動手段として使っている人達がいるのです。見た目は同じですが、
ベロモービル(Velomobile)とか、バイシクルカーと呼ばれています。
やはりリカンベントがベースになっている場合がほとんどで、乗員を覆うようなボディを持っています。なるほど自転車カーとも呼べそうです。実は、こうしたベロモービルを真剣に普及させようとしている人々もいるのです。ベロモービルを作る方法を開発するために、広く参加を呼びかける
プロジェクトもあります。
ベロモービルは、その見た目から、一般の人からオモチャとして捉えられがちなのが難点です。子供が乗る足漕ぎ式ゴーカートのように思われてしまいます。ベロモービルが一般的に知られていない為ですが、もっと普及や周知がなされれば現実的な交通手段として広く認知されていくと思われます。
街で見慣れるようになることも必要ですが、そのスピードなど、実用的な交通手段としてベロモービルの持つポテンシャルが真に理解され、リカンベントの特性や、シェルを持つことによるメリットが実感されれば、大きく見方も変わってくるはずです。
実際にヨーロッパでは、石油枯渇や環境破壊もあって、いわゆる持続可能な交通手段としてのベロモービルは注目されています。温暖化ガスの問題や地球環境を考えたとき、交通インフラの問題は極めて重要です。都市交通や輸送手段の全てを代替出来るわけではありませんが、次世代の交通手段の一つの選択肢として充分現実的です。
むしろ、可能な部分はベロモービルを含めた自転車を積極的に活用すべきとの考えは、世界の趨勢となりつつあります。歴史的に見れば、ベロモービルはクルマより古いわけで、クルマの普及で忘れられていたのが、ここへ来て見直されているという形でしょうか。
雨に濡れるか濡れないかという面で言えば、オートバイとクルマの関係が、自転車とベロモービルと言えるかもしれません。
乗車人員としては、ベロモービルも一人乗りが多く、クルマと比べて路面の占有面積は小さくて済みます。クルマと比べれば、駐車場だって数分の一です。積載性やスピードはクルマにかないませんが、違うメリットもあるわけですから、上手に使い分けたいものです。
現状では、手作りされることが多いベロモービルですが、今後普及を目指すためには、いろいろな課題もあります。車体の軽さ、視界の良さ、操作性や走行性能、ブレーキ性能、衝突安全性、悪路走破性、フロントガラスの除霜、換気と冷却性能、空気力学的性能、サスペンション、車体の強度、日常範囲の荷物積載能力、周囲の音の可聴性と低騒音、乗り降りの開口部、照明や反射板、ホーンなどが考えられます。電動アシストなどの採用も当然選択肢となるでしょう。
現在は量産されていないので、どうしても値段は高くなります。クルマに比べれば、かなり安価ですが、ふだん自転車に乗っている人でも、それなりの金額を支払ってベロモービルに乗り換えるのは敷居が高いでしょう。広く認知され、需要が伸びることが、量産されてリーズナブルな価格の実現へとつながるはずです。
日本では、まだほとんど話題になることもありませんが、一部の都市に最近導入されつつあるベロタクシーも、言ってみればベロモービルの一種です。採算の問題もあって、タクシーとして定着するかはわかりませんが、普通に受け入れられています。そう考えると、ベロモービルが日常の足になる時代も、案外近いのかもしれません。
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Posted by cycleroad at 09:00│
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ドイツのVT18/BR175って言う、昔の特急列車に似ているなぁと思いました。
参考までにアドレス貼っておきます。リンク先は有名なドイツの鉄道模型メーカーです。
http://noch.publimind.de/de/neuheiten/kato/VT_18.php
はじめましてヒコと申します。
お気に入りに登録して、毎日拝見させてもらってます。
リカンベント・シリーズ楽しいですね。
私も含めて、とかく日本人はものごとを硬くというか、
遊びが少ないというか、単一思考というきがします。
そういう部分で、リカンベントを始め海外の話題は
ユーモアがあって笑えます。そして今は無理と思う
話題も、5年、10年先には充分ありえるな、と思います。
10年前にケイタイを1人1台持って、ブログがこんなに
増えるなんてどれほどの人が、想像できたでしょう。
これからも楽しみにしています。
maksim727さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
型番まで、ずい分詳しいですね。貼っていただいたリンク先を見てみましたが、確かに似ています。
でも、このベロモービルのサイトもドイツのサイトですから、全くの偶然ではなさそうですね。意識したのか、無意識に似てしまったのか、いずれにせよ、ドイツ人には親しみのある形なのかもしれません。
ヒコさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も海外のノリは好きですね。おっしゃるように日本人の生真面目さもあると思いますが、自転車文化そのものも違う気がします。日本では、どちらかと言うとママチャリ中心の、単なる道具という意識の人が多いのに対し、あちらは競技だったり、愛車だったり、趣味の世界だったりと完全にカルチャーです。ユーモアのセンスもありますね。
確かにこの10年は、その前の10年より変化が大きく、10年後はもっと変わっているでしょうね。本文にも書きましたが、スピード一辺倒ならベロタクシーは出てこないでしょう。今までとは違った方向の変化もいろいろ起きてくると思います。何が出てくるか楽しみですね。
毎日ご覧いただき、ありがとうございます。
私も毎日覗かせていただいております。(^^)
リカンベントで自転車に目覚めてしまった身としまして
ここ数日のリカの話題は嬉しい限りです。
もう少し街中で見かける回数が増えて認知度が上がれば
走っていてもこっぱずかしく無くて良いのですが。
今のところ走ってると「なんだこりゃ?」って感じで注目の的に
なってしまいます。(^^;
KANAMEさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、リカンベントから..。しかしリカンベントに乗ってらっしゃるとはうらやましいですね。私もこれ以上台数を増やすのが難しいという事情が無ければ一台欲しいところです(笑)。
まだまだ少ないでしょうから、やはり注目されるでしょうね。一般的には、それがリカンベントと呼ばれる事すら知らない人が大多数でしょうし..。将来、一般的に普及するようになれば、ずい分先駆的だったと言われるかもしれませんね。
ところで、フェアリングされるつもりは無いんですか?(笑)。
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