February 12, 2006

歴史と環境と日本人の価値観

日光杉並木突然ですが、江戸時代の五街道は?と問われて今でも答えられるでしょうか。


答えは、東海道、中山道(中仙道)、甲州街道、奥州街道、日光街道です。私も小学校で習った覚えがありますが、遠い記憶の彼方です。ところで、その中の日光街道の杉並木と言えば、樹齢300年を超えるような杉の巨木が1万3千本も続く壮大な並木です。国内で唯一、国の特別史跡と特別天然記念物の二重指定を受けた貴重な文化財ですが、生育環境の悪化などにより年間100本も枯れるなど、危機的な状況にあるそうです。

その日光杉並木ですが、先日ちょっと目にとまった毎日新聞の記事は次のようなものでした。記事を引用します。


日光杉並木:「世界遺産登録を」 福田知事、保全に意欲 /栃木

福田富一知事は2日、宇都宮市内のホテルで開かれた県工業団地管理連絡協議会との意見交換会で「日光杉並木の中を車が通らないようにバイパスを整備し、通れるのは歩行者、自転車にして、世界遺産に登録したい」と述べ、杉並木の世界遺産登録に努力する考えを示した。また、県が東証1部上場企業約400社に「日光杉並木オーナー制度」に加入を要請する文書を送付したことも明らかにした。

日光杉並木は日光、今市両市内の日光街道、例幣使街道、会津西街道の計37キロ。杉は99年度に1万2849本だったが、枯れたり、台風などのため04年度には1万2618本まで減少した。一部バイパスが完成し、車の乗り入れを制限した区間もあるが、大半は車が通っている。また、18・5キロの杉並木の外側それぞれ20メートルを県や市で購入する保護用地公有化を進めており、今年度末で約30%を完了する予定だ。

県教委文化財課によると、今後、自動車乗り入れ制限や街道復元など多くのハードルがあり、実現には「数十年かかる」とみている。また、オーナー制度は、1本1000万円でオーナーになってもらい、その利子を樹勢回復に充てる事業だが、04年度末でオーナー延べ554人のうち、県内85%に対し、県外15%の割合だった。(毎日新聞 2006年2月4日)


3東照宮をはじめとする日光の社寺は、すでに我が国10番目の世界遺産として登録されています。加えて、日光杉並木も世界遺産に登録しようという話です。杉並木は合計37キロもあり、世界一長い並木としてギネスブックにも載っているそうです。私は何度も通ったことがありますが、思わず遠く江戸時代にまで思いをはせずにおられないような、実に見事な杉並木です。

しかし、普通歩くといっても僅かな距離です。クルマで通るとわかりますが、記事にもあるように、ほとんどの部分は車道が杉並木の中を通っているのが現状です。クルマで通っても歴史的な雰囲気は感じられるのですが、個人的には通るたびに自転車道にすべきだよな、と思っていました。夏でもヒンヤリとする日陰になっており、クルマさえ通らなければ静かですし、まさに自転車にもってこいの道です。

日光杉並木37キロを歩くのは容易なことではありませんが、自転車ならゆっくり走っても2時間ほどです。涼しい上に、大きな杉の醸し出す独特の雰囲気に名物コースになることは間違いありません。趣旨としては杉の保護や遺産の保全であり、サイクリストとしては漁夫の利のような感じがしないでもありませんが、楽しみな話です。環境の悪化による杉の枯死も深刻だそうですから、数十年とは言わず、早めの実現を期待したいものです。

日光杉並木に限らず、旧街道や古い街並みなどが残っている場所は、実は日本全国にかなりあります。有名な場所だけでも百箇所ではきかないでしょう。せっかくの街並みなのに、残念ながらクルマの通りが激しい場所も多々あって、バイパスが開通しているのだから、旧道は通行止めにしても困らないと思えるような場所もあります。徐々にではありますが、そうした場所からもクルマを排除しようという動きが出始めているようです。

杉並木の危機事故や観光シーズンの渋滞対策、観光資源としての価値を高めるだけでなく、自然環境の保全や、遺跡や景観、文化的価値の保護の観点から、こうした動きが進むのは素晴らしいことだと思います。ヨーロッパの中世の街並みを街ごと大切に保存するような国の人々とは比べるべくもありませんが、とかく日本人は、そうしたものの価値を顧みない傾向があります。

もちろん個々の場所については、住人や限られた利用者にのみ過大な負担を強いるようなことを、域外の者がむやみに口にすべきではありません。しかし全体として、私達一人一人が考え、育むべき価値観のように思います。戦後一貫して追い求めてきたクルマでの利便性ですが、部分的には排除し、あるいは逆行をも是認するような動きは、大切にすべきだと思います。

そのために、私達は過剰に不便の解消やスピード、効率、労力を省くことばかりを求めてはいけないのでしょう。何だかとても我慢と忍耐を必要とするやり方のようにも思えますが、必ずしもそうとは限りません。クルマで行けば速いですが、歩いたり自転車のほうが、道中ずっと楽しいことに気づくのも決して悪くないと思います。



いよいいトリノ、始まりましたね。早くも寝不足、生活のリズムが崩れている人も多いのではないでしょうか。でもまだ先は長いですからね(笑)。

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