February 15, 2006

流行する概念と変わらぬ価値

トリノ五輪トリノオリンピックの熱戦が繰り広げられています。


トリノはイタリア北西部にあるピエモンテ州の州都です。各競技会場はいくつかに分散しており、アルペン競技の行われるセストリエールなどはトリノ市街から100キロほど離れています。競技会場はありませんが、もっと近いトリノから南へ50キロほどのところに、ブラという小さな街があります。実はここ、ブラは世界的な広がりを持つに至ったスローフードの発祥の地です。

スローフード最近、スローライフとかスローフードという言葉がよく聞かれるようになりました。説明されなくても、なんとなく意味がわかってしまうような言葉です。時代の雰囲気やトレンドを表すような言葉だからかもしれません。

両者を比べると、スローフードはスローライフの中の一分野かな、と思いがちですが、実はそうではありません。調べてみますと、スローフードは世界中に広がっている運動なのに対し、スローライフは日本だけでしか通用しない独自の流行です。

1986年、首都ローマにマクドナルドのイタリア第1号店が開店し、これがイタリア国内で大きな論議を呼びました。その頃、ピエモンテ州のブラで行われていた小さな会のモットーを、ファストフードに対してスローフードと呼んだ事から運動が始まり、今では全世界に約8万人の会員を擁する組織にまで発展しました。

本来のスローフードの活動は、「消えつつある郷土料理や質の高い小生産の食品を守ること。」「質の高い素材を提供してくれる、そうした小生産者を守っていくこと。」「子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていくこと。 」です。単にファーストフードと違って手間をかけることではないのです。従ってスーパーで買ってきた食材でおつまみを作っても本来のスローフードではありません。

スロー食を通じてバイオダイバーシティ(生物多様性)を守ることも唱えています。ファストフードのような大量生産の画一的な味に対し、世界各地の環境・文化に則した多彩な食を守り発展させていけば、それが結果として人にとって居心地のいい世界を造ることになると考えるのです。そのためには、多彩な味を理解できる味覚も必要なので、食材や生産者の保護と同時に消費者の味覚教育も重要な活動となっています。

このスローフード運動が日本へ入ってきて、ファーストフードは身体に良くないというイメージとも重なり、独自の広がりを見せました。本来のスローフードはファーストフードの対極として名づけられただけで、直接「ゆっくり」とは関係ありませんが、日本語になったスローは、どうしても「ゆっくり」のイメージがあるからでしょう。ゆっくり料理してゆっくり味わうことと考えている人も多いようです。

そうした中で派生して生まれたのが、スローライフという言葉です。昔、「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」という流行語がありましたが、考え方は似ているかもしれません。ちょっと振り返って考えさせるような部分もあります。

言葉が先行して言われだしたので厳密な定義が存在するわけではなく、人によって微妙に解釈や印象も違っているようです。現代のスピードや効率優先の価値観に対抗して、ゆっくりと豊かな生活を送ろうと言うのが一般的な考え方のようです。

しかし解釈によっては、田舎暮らしこそがスローライフとし、田舎でなければ出来ないように考える人もいます。定年帰農し、田舎で食材を自分で作ることのように捉えている人もいます。あるいは、もっと広義に考えて、ニートやフリーターまで含め、アクセク働かない生き方をイメージする人、人と同じでない自分だけの生き方をすること、我が道を行くのがスローライフと考える人まで様々なようです。

スロー中には、のんびり自分の時間を過ごすスローライフのために、料理や後かたづけをしたくないと、食事は出前や外食でサッサと済ますと言う人までいて、元になったスローフードの考え方とは全く逆になっている場合もあるのが面白いところです。日本語のもつ寛容さと言うかあいまいさ、外国の言葉を和製英語として取り入れ、和魂洋才で独自に解釈する典型的な柔軟性と言えるのかもしれません。

スローライフの概念には広い幅があるようですが、一般的にスローライフと自転車の相性は良いようです。クルマの持つスピードや効率、環境へのダメージ、温暖化ガスの排出、化石燃料の有限性、運動しない不健康さ、維持費の高さ、交通事故や渋滞など、全ての面において自転車はクルマの持つ現代的な部分と好対照を成すのがアピールするのでしょう。スローライフを考える時、自然と自転車に乗ることを選択する人も少なくないようです。

スローライフとサイクリングをテーマにした活動も様々な形で行われています。スローライフな旅とサイクリング、定年後のスローライフと自転車など、いろいろな広がりもあります。スポーツや趣味、交通手段としてではなく、ライフスタイルやポリシーとして自転車を選ぶ、そんな時代になってきているのかも知れません。



トリノでの日本勢、成績的にはふるいませんね。4年間頑張ってきたのに一瞬の出来不出来やコンディション、またコントロール出来ない要因で決まってしまうのは残酷な気もしますが、せめて悔いのないように力を出しきって欲しいものです。

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