February 16, 2006

そろそろ主役を交代させよう

歩道橋自宅から最寄り駅まで、よく行くスーパーまで、駅から会社や学校まで、ふだん歩いている道に、いくつ歩道橋がかかっているか覚えていますか。


最近、と言うより久しく歩道橋を渡った記憶がない方も多いのではないでしょうか。運動不足解消のため、エスカレーターなどを使わず極力階段を使うと言う人でも、歩道橋は既にその存在すら目に入っていなかったりします。事実、利用者は激減しているようで、東京都や大阪府などは利用者の少ない歩道橋から撤去を始めています。

歩道橋少子化や小学校の学区の変更などにより通学路からはずれるなど、使われなくなっただけでなく、歩道橋の階段部分が歩道の大半をふさいで通行の支障になったり、階段の下がゴミの不法投棄を誘発するなど、邪魔や迷惑にもなっています。

もちろん場所によっては、必要かつ有効に利用されている歩道橋もあるでしょうが、撤去費用も8年に1度の塗装費と同程度なので、全体としては今後徐々に減っていく方向にあるようです。

戦後一定の役割を果たしたとの評価はありますが、人を迂回させる考え方、人よりクルマを優先する思想であったことは間違いありません。歩道橋を渡るのは面倒と道路を横切って事故に遭う人も多いわけで、歩行者を歩道橋へ迂回させようと、わざと道路を横断しにくくしている場所では、かえって事故を呼ぶこともあります。バリアフリー化が言われる中で、明らかに前時代の遺物となりつつあるのです。

今後はエレベーターを設置するなど仕様変更すべきと指摘する関係者もいるようですが、莫大なコストに見合うほど利用される保証はありません。そもそも、これ程歩道橋の多い国はないと思います。形を変えて歩道橋を存続させるのではなく、むしろクルマ優先から人間優先へ、そろそろ日本の道路行政も発想を転換すべき時に来ているのではないでしょうか。

撤去後たまに押しボタン式信号のある横断歩道で、ボタンを押すと即座に信号が変わる場所があります。さすがに連続で押すとそうは行きませんが、これなどは歩行者に親切です。このような信号機が増えれば、クルマの通行を見ながら危険を冒して道を横切るより、横断歩道を使ったほうが便利ということになるでしょう。

生活用道路などで、通過するクルマの速度を落とさせるためにハンプと呼ばれる凸凹を設けたり、わざと蛇行させるような障害物を設置する場所も増えています。クルマの通行の利便性より、歩行者や住民の安全に配慮しているわけです。今後は住宅地以外でも、必要に応じてクルマを通りにくくし、通行量を制限したり、スピードを落とさせるなどの仕組みを広げて行くべきでしょう。

以前にも取り上げましたが、歩行者用信号が青なのに右左折車が凄い勢いで横切る交差点などは、明らかに危険になってきています。ドライバーのゆとりや思いやりを期待出来るレベルではありません。毎年一万人近くが亡くなり、100万人以上がケガをするのが常態化し、交通事故に対する感覚も麻痺して、危険な道路構造が放置されている部分もあるのではないでしょうか。

道路の研究クルマのドライバーにとっては、歓迎されない方向のようにも思えますが、必ずしもそうとは限りません。例えば、スピード違反を取り締まるより、スピード違反できない道路構造にするほうが親切ではないでしょうか。

駐車違反を取り締まるより駐車違反しにくい道路、そして事故を起こして人を轢くより事故を起こしにくい道路にするのは、ドライバーのためでもあります。そう考えれば、分別のあるドライバーなら、むしろ歓迎するはずです。

クルマより人間を優先する。当たり前のことが出来ていなかったのです。戦後復興や経済成長優先など、様々な理由はあるでしょう。しかしやっと、人々の意識も時代の趨勢も当たり前の方向に向きつつあります。安全のために出来ることはたくさんあります。最近研究されているハイテクを駆使したクルマの安全装置の完成を待つ必要はありません。

歩道橋例えば、渋滞の解消のために信号の切り替わる間隔をコンピューターで制御し、スムースにクルマが流れるようにする技術があります。発想を変えれば、わざとクルマのスピードを落とさせるようにすることも出来るでしょう。交通規制を変えたり、車線を減らすだけでも一定の効果が得られる場所もあります。

道路の構造を変えるための事故のデータは警察などに蓄積されています。これまでクルマのスムースな通行を阻害するということで実施できなかった安全対策も、むしろクルマの通行の利便を妨げてでも、積極的に採用するよう方針を変更すべきです。

今まで当たり前のように存在した歩道橋が象徴するように、クルマ優先の考え方に慣れてしまったものは無数にあります。もちろん、クルマによる輸送も必要です。道路交通の経済的な合理性を無視することも出来ないでしょう。しかし結果として、我々や我々の家族の命、身体、健康、生活、環境といったかけがえのないものを犠牲にしてきたやり方は、もうやめにしてもいいのではないでしょうか。

ふだん意識していませんが、交通事故、明日はわが身です。携帯を見たりよそ見をしているドライバーも多いです。運悪く轢かれて死亡しても、過失致死で数年、場合によっては不起訴もあるなんて、当事者になったら到底許せるものではありません。転ばぬ先の杖ではありませんが、法律やシステムの変更も含めて交通安全対策をすすめていくべきだと思います。





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この記事へのコメント
歩道橋ってあまり使わないですよね~
あ、おいらは、元バスの運転手です。

安全運転をいくら心がけても…事故はおきますね。
気をつけなくちゃ。

みなさん心が病んでるんじゃないかなぁ〜
Posted by 山ちゃん at February 17, 2006 15:50
歩道橋ねぇ〜、最後にわたったのは12月ごろだっけ・・・?まぁ、取り合えず使わないというのは確かです。11月ごろの話ですが、横断歩道を渡ってるときに右折してきた車が近づいてきて、歩行者優先だからとまってくれるだろうと思っていたら、いきなり前を突っ切っていきました。車との感覚は1mもありませんでした。でもなぜかそのときは怖いというより、運転手をぶん殴りたい気持ちのほうが断然大きかったですw今でもあの時ぶん殴っといてもっと注意しろといっておけばよかったと思います。少々荒々しいですが、歩行者側はひき殺される可能性だってあるからそれぐらい当然だと思います。
Posted by 沖縄の人 at February 18, 2006 10:40
先日信号機のない横断歩道を渡ろうとする歩行者がいたため手前で止まりました。
するとあろうことか後続の車が右車線から追い抜いて行きました。
もし、歩行者が走って渡っていたら・・自転車だったら・・
一瞬息を呑みゾッとしました。
街中のほとんどと言っていいほどの横断歩道には押しボタン式の信号器が設置されています。
このことから多くのドライバーは「歩行者優先」という考えがなくなり「赤信号なら止まる」ということしか考えられなくなっているのではないでしょうか?
道路面に書かれているひし形の標識は何を表しているか答えられるドライバーがどれだけいるか興味のあるところです。
Posted by にゃごべぇ at February 18, 2006 13:31
山ちゃんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
歩道橋の存在すら忘れてますよね(笑)。
そうですね、気をつけることは大事ですが、人間の注意力にも限度がありますし、構造的に事故を減らす努力も必要な気がします。
なかなか自分の身や、自分に近いところで起きないと身に沁みない部分がありますね。危険にも麻痺しているところがあると思いますね。
Posted by cycleroad at February 18, 2006 22:08
沖縄の人さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ええ、まかり間違えば死ぬ危険性もあったわけですから、怒って当然ですよ。動物としての本能と言ってもいいかも知れませんが、こちらの生存が脅かされれば、自然な反応として怒りが沸くのではないでしょうか。
ただ、そういう場面でも通常クルマは、あっと言う間に走り去るでしょうし、轢かれてからでも遅いです。ドライバーも必ずしも故意とは限りませんが、やはり構造的にクルマと歩行者が交差しないようにすべきだと思いますね。
Posted by cycleroad at February 18, 2006 22:21
にゃごべぇさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ありますね、親切がアダになりかねない場合って。クルマ同士でも進路を譲って死角になった車線のクルマと衝突する例がありますね。
おっしゃるような部分もあるでしょうね。信号を設置したばかりに、かえって交通弱者優先の原則なんて忘れ去られているってことも。忘れ去られているから設置せざるを得ないとも言えますが。
菱形のマーク!確かに忘れがちですね。意味は一応知っていても、ふだんは意識していない人も多いでしょうね。誰だって死ぬのはイヤですが、殺すのだってイヤだし、深刻な事態になるはずですが、あまりそのように見えないドライバーも多い気がします。何を考えているんだか、何も考えてないと言うべきか..。
Posted by cycleroad at February 18, 2006 22:41
 
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