March 07, 2006

たまには気分をかえる必要も

自転車通勤や仕事で、あるいは好きで毎日自転車に乗っている人も多いと思います。




昔あるところに、一人の自転車乗りがいました。毎日毎日、自転車をこいで通っていました。来る日も来る日も、晴れの日も風の日も、毎日自転車に乗っていました。

灼熱の太陽が照りつける、ある夏の日のことです。その日は猛暑でした。汗を流しながらいつものように自転車をこいでいた自転車乗りでしたが、もう我慢ができない!といって叫びました。

「ああ太陽よ、僕は太陽になりたい。毎日毎日、太陽にジリジリと照りつけられながら自転車をこいでいる僕は、なんとちっぽけな存在なんだろう。太陽のように、空高く輝く偉大な存在になりたい。」

太陽は、そんな自転車乗りの叫びを聞いてこう答えました。

「自転車乗りよ。確かに私は皆を照らしている。しかし、私にもかなわない相手がいるのだ。」

「えっ、本当かい。それは誰?」

自転車乗りが尋ねると、太陽は答えました。

「それは雲だよ。雲が出てくると私は何も照らせなくなる。お手上げなのだ。いとも簡単に私を隠してしまう。雲には、さすがの私もかなわない。」

それを聞いた自転車乗りは、納得しました。そして次の日、出てきた雲に向かって言いました。

「僕はなんともちっぽけな存在だけど、あの偉大な太陽も隠してしまう雲のようになりたい。」

すると雲は、こう答えました。

「自転車乗りよ。確かに私は太陽をも隠す。しかし、私にもかなわない相手がいるのだ。」

「えっ、本当かい。それは誰?」

自転車乗りが尋ねると、雲は答えました。

「それは、風だよ。風が出てくると私は何も隠していられなくなる。お手上げなのだ。いとも簡単に吹き飛ばされてしまう。風には、さすがの私もかなわない。」

それを聞いた自転車乗りは、納得しました。そして次の日、吹いてきた風に向かって言いました。

「僕はなんともちっぽけな存在だけど、あの偉大な太陽を隠す雲も吹き飛ばす風のようになりたい。」

すると風は、こう答えました。

「自転車乗りよ。確かに私は雲をも吹き飛ばす。しかし、私にもかなわない相手がいるのだ。」

「えっ、本当かい。それは誰?」

自転車乗りが尋ねると、風は答えました。

「それは、山だよ。山は私がいくら吹いても動かない。お手上げなのだ。いとも簡単にさえぎられてしまう。山には、さすがの私もかなわない。」

それを聞いた自転車乗りは、納得しました。そして次の日、あらためて途中で通る山に向かって言いました。

「僕はなんともちっぽけな存在だけど、あの偉大な太陽を隠す雲も吹き飛ばす風でさえもさえぎる山のようになりたい。」

すると山は、こう答えました。

「自転車乗りよ。確かに私は風すらさえぎる。しかし、私にもかなわない相手がいるのだ。」

「えっ、本当かい。それは誰?」

自転車乗りが尋ねると、山は答えました。

「それは、自転車乗りだよ。自転車乗りは私がいくらさえぎろうとしても越えてしまう。お手上げなのだ。いとも簡単に乗り越えられてしまう。自転車乗りには、さすがの私もかなわない。」

それを聞いた自転車乗りは、納得しました。今までちっぽけな存在と思っていた自分も、太陽が照りつけようが、雲が出ようが、風が吹こうが、山がさえぎろうが、毎日自転車をこいでいる、とても立派な存在だと感じられるようになったのです。

それからも自転車乗りは、それまでと同じように、毎日毎日、晴れの日も風の日も、毎日自転車をこぎ続けましたとさ。



この話、どこかで聞いたことがある気がする人は多いでしょう。日本のおとぎ話にもありますし、ヨーロッパやインドに伝わる話にもよく似た話があります。それぞれ主人公はネズミだったり職人だったりするのですが、自転車乗りに変えてみました(笑)。毎日のように自転車に乗っていると、イヤだなと思うこともあります。

暑かったり寒かったり、風が強かったり、坂道が大変だったり..。自転車通勤や仕事で乗っている人ばかりでなく、趣味で乗っている人だって、そんな時もあります。健康のことを考えて自転車を利用している人も少なくないと思いますが、せっかく続けてきたのに一時の気の迷いでアッサリやめてしまうのも、もったいない話です。

続けて乗っていると、やっぱり乗るのをやめなくて良かったと思うこともあります。自転車でなくても、毎日の生活の中で、今まで続けてきたことが何だか急に馬鹿らしくなる、なんてこともあります。でも、やめてしまえばそれまでです。もう永久にすることはないかもしれません。

でも、続けることによってこそ得られるものもあります。せっかく続けてきたのだし、たまには気分転換でもして、思いなおしてしばらく続けると、何ともなくなる場合も多いのではないでしょうか。淡々と続けるのが大事、ということも多いような気がします。



関東地方では昨日、春一番が吹きました。去年より11日も遅いそうですが、だんだん春も近づきつつあるようです。
後から思ったのですが、自転車乗りが山を乗り越えるって、ヒルクライムなどをやる一部のサイクリストしかピンと来ませんよね。まあ、坂道を頑張って登る自転車乗りも多いということで..(笑)。


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この記事へのコメント
毎回、楽しく拝読しています。今回も、おかげで、とても素敵な現代版「北風と太陽」を読むことができました。ありがとうございます。毎日、30kmほどを自転車で通勤しているものとして、溜飲を下げる(こういう場面で使う言い回しかどうかはべつとして)こともできました。そうだ!これでいいのだ、と。一部または全部について、非営利的な引用のお許しをいただけますでしょうか?
Posted by ciportus at March 07, 2006 13:48
ciportusさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
拙文が何かの励みになったとしたら私も嬉しいです。
元々、少しでも多くの人に自転車の良さを知ってもらえれば、あるいは再認識してもらえれば、社会における自転車環境が少しでも良くなることにつながるのでは、と思って書いています。もちろん、引用していただいても、リンクしていただいても構いません。
世界中に類話がありますが、インドの古典「パンチャタントラ」がおおもとのようです。ヨーロッパの類話の題名は思い出せないのですが、ただ「北風と太陽」とは別の話です。ちょっと似てますけど..。
毎日の自転車通勤、くれぐれもクルマには、お気をつけて。
Posted by cycleroad at March 07, 2006 22:01
 
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