
最近に限ったことではありませんが、通信と放送の融合とか、ネットとメディアの融合というようなことが話題になります。
ですが、「サイクルロード」的には、ネットと自転車の融合について考えてみようと思います(笑)。
さて、自転車で運ぶもの、交わすものと言えば、人を別にすれば、書簡とか書類とか荷物とかになると思います。場合によっては、CDやDVDなどでデジタル情報を運ぶ場合もあるかも知れません。最近は回線速度も上がっていますし、専用回線でなくてもVPNや暗号化技術によれば安全に送信できますが、メディアに記録したものを運んだほうがいい場合もあります。

メッセンジャーに頼むようなもの、要するにリアルな「物」なわけです。アナログと言ってもいいでしょう。自転車とネットは融合どころか、排他的とまでは行きませんが、関係ないように思えます。しかし、
マジックバイク(magicbike)というプロジェクトを見ますと、必ずしも親和的でないとは言えないようです。
マジックバイクは、一言で言えば無線によるインターネット接続を提供する、いわゆるホットスポットです。普通の自転車が無線ホットスポットになっています。つまり移動式なわけです。最近は日本でも公衆無線LANが使える場所が増えてきましたが、マジックパイクは、これまでに対応出来なかったような場所、あるいはコミュニティにインターネットを届けるわけです。
マジックバイクは、ワイヤレスな環境を届けるだけでなく、社会基盤として自転車文化に織り込もうと考えているようです。自転車は、クルマでは近づきがたい多くの場所をカバーする、ある意味とても守備範囲が広い車両です。またアメリカにおいての自転車は、20世紀前半の労働運動をはじめとする、数々の政治運動の伝統的な象徴でもありました。もちろん環境やエネルギーを考えての反クルマ的シンボルにもなっています。
そうした運動や自転車文化の上にWiFi技術を重ねることは、自転車乗りに対して何かの動機づけを後押しするものでもあると主張しているわけです。テクノロジー、特に無線とコンピューティング技術は、より多くの自転車に近い存在となることによって、その文化的、あるいは政治的な意識、社会的責任や健康にまで影響を与えるだろうと言っています。

このあたりは、アメリカ独特の自転車文化や歴史的経緯が背景にあるので、日本人には少し理解しづらい部分ですが、テクノロジー的には複雑ではありません。自転車のフレームに取り付けられるWiFiアンテナと自転車横のバッグの組込形ラップトップでアップリンク接続を受け、標準的なホットスポットと同じ屋内なら30メートル、屋外なら半径100メートル以内で最高250人のユーザーにアクセスを提供します。
日本では、自転車に乗って集まった学生や青年達が、何か政治的な主張をする屋外の集会を開くという場面が日常的ではないので、あまり自転車ホットスポットの意味がピンと来ないかもしれません。2年ごとに大統領選や中間選挙で共和党と民主党陣営に分かれて論戦を戦わせることもないですし、そもそも大きな争点がなく、例えば妊娠中絶の問題のように価値観の激突に乏しいのも事実です。
政治的ではないにせよ、日本での屋外でのイベントにネット接続が臨時に必要になるとしたら、電源車やトラックに積んだ基地局を手配するでしょう。でももっと小規模で、もっと非公式で、あるいは草の根的なイベントでも屋外でパソコンを使える、ネット接続を手軽に利用できる手段と考えれば、活用出来る場面もありそうです。
また災害時に、自転車が被災地に展開して、情報伝達のハブになることも想定出来るかもしれません。ようやく最近、携帯電話は災害時に基地局の停電や輻輳、いわゆる回線がパンクしてつながらなくなることが常識になってきました。しかし、TCP/IPによるデータ通信なら、仕組みから言っても災害に強いわけです。もともとは米軍が、アーパネットとして、そのための分散処理システムとして開発したのだから当たり前と言えば当たり前ですが..。

その意味からすれば、自治体の災害対策の一環として取り入れられてもおかしくありません。災害時、特に被災者の搬送や救援物資の配布、安否確認などにおいて、いかに情報の伝達が果たす役割が大きいか、いかに必要性が高いか、阪神大震災以降、次第に理解され始めています。クルマでは移動できなくなることは目に見えていますし、自転車なら小回りも効いて、移動に燃料も必要としません。おおいに検討する価値はありそうです。
マジックパイクは無料の移動インターネット接続提供の実験プロジェクトですが、もしかしたら、日本でも先進的なメッセンジャーの会社あたりが商用サービスを始めるかもしれません。そうなると、オフィスビルへデリバリーするのではなく、大きな公園の芝生とか、河川敷のグランドとか、砂浜のビーチパラソルの下かもしれません。必要なら、パソコンと一緒にネット接続ごとデリバリーしてもらう、なんて場面も出てくるかもしれません。
屋外のスポーツイベントにも、最近はタイムや着順の管理、成績の公表やプレスリリースなど、コンピューターやネット環境が欲しい場合もあります。大きな大会なら機材も充実していますが、もっと小さな大会へも波及していくでしょう。また、ふだんは必要ないけど、臨時に接続するということであれば、屋外でなくても活用出来るはずです。教育現場なら、例えば学校行事や校外学習にも使えるかもしれません。デジタルディバイドの解消など、その他まだいろいろ使途はありますが、いずれにせよ自転車とネット、使い方によっては有効です。案外相性がいいのかもしれません。
3月14日ホワイトデーですね。明日から急に冷たくされるなんて事がないよう、よもや買い忘れ、渡し忘れなど無きよう、おのおのがた、抜かりはありますまいな(笑)。
Posted by cycleroad at 19:00│
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