March 29, 2006

オオカミ少年とは限らないが

最近、身の回りの犯罪や違反に対する、警察の取締りの強化を求める声が増えているようです。


奈良県では全国初の補導条例が可決されました。今まで、青少年の補導に法的根拠がなかったとは知りませんでしたが、関西では断トツに青少年による非行事件の少ない奈良県にこの条例が出来たのは、それだけ真剣に取り組んでいる県なのでしょう。喫煙や深夜の街を徘徊するなどの不良行為に対する補導活動の強化を目指したもので、これとは別に全国レベルでも警察庁が、少年非行防止を法制化する方向に進んでいるようです。

奈良県の条例では、深夜のコンビニでの買い物や、家で有害サイトを閲覧することまで不良行為と定めており、確かに行き過ぎの印象がないではありません。不登校や引きこもりの子を持つ親の団体や日弁連などは、子供の人権が侵害されるとして反対を表明しています。公権力による人権侵害などの恐れを心配する考え方はよく理解できますが、一方で少年非行への対処を求める意見も多いのも事実で、難しい部分ではあります。

本来は親の躾や本人のモラルによるべきところが期待出来なくなっているのも確かですし、そうした非行が少年犯罪の大幅な増加を招き、結果として治安が悪化しているのも間違いありません。少年であっても自由は尊重されるべきですが、無制限ではありえませんし、少年が道を誤るのを防ぐのも社会正義です。しかし昔のように街の非行少年を叱る大人はいなくなり、周りへの迷惑行為があっても黙認される状況が進んだ結果、非行はエスカレートしています。

薬物の乱用は当人を蝕むだけでなく暴力団の資金源になり、少年による詐欺や窃盗犯、凶悪犯罪も増えています。こうした犯罪の抑止の面からも規制の強化を求める声も根強く、取り締まりの強化は時代の流れでもあるでしょう。親が自ら子供に注意しないなら、警察や補導員によるコストをかけての非行防止も致し方ありません。そうした流れを作ってきたのも我々大人たちかも知れません。

同じように、取締りの強化を求められているのが「自転車の悪質な交通違反」です。警察庁は先日、今まで事実上野放し状態だった悪質な違反を繰り返す自転車の運転者に、刑事処分の対象となる「赤切符」による取り締まりを積極的に進めていくことを決めました。警告を無視して赤信号を渡ったり、歩行者の近くを危険なスピードで通り抜けるなど悪質な違反を繰り返す自転車などが対象です。

自転車は道路交通法上は軽車両であり、ちゃんと信号無視や2人乗りは違反と書かれています。もちろん一時停止にも従わなければなりません。一方で自転車は、比較的軽い、いわゆる青切符の反則金制度の対象ではないので、いきなり罰金などの前科がつく赤キップになってしまうのです。自転車での軽微な違反で前科一犯となり、反則金にくらべて相当高額な罰金を払うのもバカバカしいので、充分に気を付けるべきでしょう。

実は、去年の今頃も同じことが話題になりました。私も去年の4月20日に取り上げましたが、大阪や千葉で赤キップが切られてニュースになりました。同じ違反でも原付バイクにはつかない前科が自転車にはついて、しかも罰金4倍などのねじれ現象がおきると警察も慎重でしたが、方針転換したというニュースでした。実際にこの2005年に全国で326件の赤キップが軽車両に対して切られました。

その前の年は85件ですから4倍弱に増えたことになります。今年も全国の都道府県警察本部へ通達を出すので、さらに増えるのかも知れません。しかし、それでも全国の自転車人口や、クルマへのキップの件数と比べれば微々たるものです。

赤切符の場合、原則論としては裁判になるわけですから、手続き的に手間がかかるのもあるでしょう。クルマの場合、その膨大な件数を処理する都合上、手続きを簡略化するため青キップの制度が出来たわけですから、自転車への赤切符では処理が追いつくのか、あるいは効果的な取締りが行われるのか疑問もおきてきます。

かと言って、クルマのような青キップ制による反則金制度は、確実に行政処分する為には自転車の免許化などが必要となります。もちろん背景には、自転車で何が交通違反になるかあまり正しく理解されていない部分もあるので有効だとも思いますが、実際問題としてはナンセンスでしょう。

またこれまで、都道府県によってバラつきがあるものの、自転車の違反に対して警察官が指導警告票、いわゆるイエローカードを手渡してきたのも年間112万枚を越えていますが、もともと法的根拠も無く、その効果も明確ではありません。

昨年1年間に自転車に乗っていて事故死した人の7割以上に法令違反があったと言います。そうした観点からも、取締りの強化が求められていますが、果たしてどれだけ実効的な取締りが出来るかが問題になってきそうです。少年法によって刑事処分出来ないケースも少なくないでしょうし、違反の意識もない人が多いのも事実です。無灯火、二人乗りはよく注意されますが、車道の右側通行などは、あまり取り締まられているようには思えません。まして歩道を自転車で急ぐのが違反だと思っていない人は多いはずです。

自転車に赤キップと言うのは、昨年はじめて話題になりましたので一定の抑止効果はあったかも知れません。しかし毎年ではその効果も薄れます。また赤切符を切られた自転車が全国で年間わずか326件と言うのも報道されていますので、逆に滅多にないと見透かされることにもなるでしょう。自転車と歩行者の事故も増加しており、取締りの強化は必要でしょうが、その実効性の確保をもっと考えるべきだと思います。



私もキッチリ一時停止しているとは言いませんが、事故を防ぐ意味からも交通法規は守るようにしています。やはり、なんとなく交通ルールがおろそかになっていると、いつか事故に遭う危険は高まるでしょう。ふだん自分の身に起こるとは思ってもみないですが、考えてみれば年間何十万件も自転車がからむ事故は起きているわけで、いつ自分に起きてもおかしくないですから..。

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「自転車 悪質違反に赤切符」(日本経済新聞 2006年3月26日朝刊) 本来自転
レッドカード【BD-1☆友の会】at April 06, 2006 21:30
最近、新聞などに自転車の話題が取り上げられることが増えているようです。
自転車乗ってハワイへ行こう【サイクルロード 〜千里の自転車道も一ブログから〜】at May 22, 2006 01:34
この記事へのコメント
これもなかなか難しい問題ですね。
自転車に限ったことではなくやはりモラルが低下しているのが原因かなと思います。
家庭での躾、学校の教育などで自由と言う意味が捻じ曲げられてきた結果かも知れません。
わが子に対してまともな注意も出来ない親が電車の中や公共の場でも見受けられます。
事故はいつ自分に起きてもおかしくない時代ですから、自転車には傷害保険、モーターバイクにはバイク自動車保険、車には自動車保険に入っています。
事故の相手に対する保障の意味も含めてですから、年間の保険料は馬鹿になりませんがそれが少なくとも事故の場合相手を傷つける危険性のあるものに乗っている者としては最低限守るルールと私は思っています。
Posted by ousayt at March 31, 2006 09:26
ousaytさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、道徳教育にも期待できなくなりましたし、もともと宗教観による自制もあてに出来ません。伝統的な日本の倫理観、美徳も失われ、社会の秩序は法律と取締りによるしか実現できなくなっていくのでしょう。結果として様々な面で高コストを社会が負担しなければならないわけでしょう。
保険については私もそう思います。今どきは事故の相手が無保険の場合も担保する保険になるわけですし、全体で事故が増えれば、その分も保険料に反映してくるわけで、事故や交通の秩序の問題も、社会全体で考えていかなければならないことですね。


Posted by cycleroad at April 03, 2006 01:15
 
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