4月になって、進学や就職による新生活をスタートさせる人も多いことでしょう。
通勤や通学のため新しく自転車を購入する人が多い頃でもあり、毎年この時期になると、新聞に自転車の販売に関連する記事が掲載されることもしばしばです。今年に限った事ではありませんが、そうした記事には最近必ずと言っていいほど、「健康や環境への意識の高まりを背景に、自転車の購入を検討する消費者が目立つ。」といった見方が含まれています。ふだんから日常的に乗っている人には実感が沸かない面もありますが、最近自転車への注目が高まっているのは事実のようです。
日本の自転車保有台数は8千6百万台に達し、高い普及率にもかかわらず、毎年1千1百万台前後の自転車が売れています。日本経済新聞の4月8日付の消費面の記事によれば、最近の傾向として、都市部のビジネスマンの自転車通勤への注目、若い世代の普通のママチャリからファッション性の高い自転車へのシフト、主婦層を中心に電動アシスト自転車の価格下落による需要の伸びなどがあるようです。また50代以上から、いわゆる団塊の世代の自転車購入者も急激に増えているそうです。
今年はまた、警察の自転車に対する取り締まりの強化の話題も目立っています。私も
先日取り上げて、果たして有効に取締りが機能するのだろうかと書きました。何しろ、自転車の飲酒運転なら「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、二人乗りなら「6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金」、信号無視なら、「3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金」、無灯火なら、「5万円以下の罰金」という前科がつくわけです。傘を差して運転しても違反で、「5万円以下の罰金」です。
これについて、4月8日付読売新聞夕刊の一面の下のほうにある「よみうり寸評」というコラムは、次のように書いています。
信号無視の自転車は珍しくない。二人乗りもザラ。夜道を走る自転車は無灯火が目立つ◆そんな無法自転車の取り締まりを警察庁が強化するという。自転車が歩行者をはねる事故が10年で5倍近くに増えたためだ。すでに信号無視など悪質な違反については道路交通法に基づき、赤切符を積極的に切り始めた◆刑罰は重い。<中略>。が、これだけでうまく行くだろうか◆道交法が公布されたのは1960年。自動車ドライバーが交通違反で次々に摘発され、刑罰を科せられたドライバーは毎年、数百万人にものぼった◆これでは「日本人が『1億総前科者』になる」と心配され、8年後、速度違反などの比較的軽い違反が対象の反則金制度を導入した。自転車も今後は、取り締まりと同時に反則金制度のような方策を幅広く検討するという◆自転車利用者は8000万人以上。甘過ぎず、厳し過ぎず、バランスの取れた取り締まり策が必要だろう。(2006年4月8日読売新聞)
やはり自転車に対しても青キップのような制度が検討されているようです。
自転車の販売や交通安全の記事だけではありません。4月6日付日本経済新聞の朝刊一面の下のほうにある「春秋」というコラムには次のように書かれています。
東京・新宿の都庁から官庁街の虎ノ門までの約8キロを、最も速く移動できる手段は何か。都市計画の専門家らが実験した。1位は自転車で所要時間は地下鉄やタクシーの半分ほど。一事で速断はできないが、都市交通を担う有力な一員であることは間違いない。▼日本は保有台数で世界第3位の自転車大国。街をのんびり走るポタリング、通勤に愛用するツーキニストなど楽しみ方も広がってきた。悩みは専用道や駐輪施設の整備が進む欧米に比べ、なお位置づけがあいまいな点。車道は違法駐車に遮られ、歩道の自転車レーンも看板などで走行しにくいことがしばしばだ。▼子供の脇を駆け抜けるなどマナー欠如の自転車乗りがいるのも確か。しかし健康・環境への影響を考えれば、都市交通に組み込まない手はない。オランダの駅で修理人が常駐する巨大駐輪場を見たことがある。飲食店経営もいいが、公益性の点ではこれこそ駅らしい空間活用法だと感じた。▼「邪魔者扱い」が続くのは経済産業省、国土交通省、警察、自治体など複数の役所にまたがる問題だからとの声も。こんなときこそ政治の出番。2大政党の党首が近く交代する。憲法など「大きな問題」もむろん大事だが、家族、生活、地域社会など身近な問題に、政治家や政党の本質が意外に表れる。注視したい。 (2006年4月6日日本経済新聞)
まさに私が、このブログで再三に渡って書いているようなことです(笑)。オランダやドイツにある
修理が頼める巨大駐輪場についても以前取り上げました。こうした考え方が、全国紙の一面のコラムに載るくらい一般的になってきたという意味では、個人的にはとても感慨深いものがあります。
このコラムで書かれているように、政治にも自転車の問題が取り上げられるようになっていくことを期待したいです。プライオリティからすれば低いかも知れませんが、生活に密着しているという意味で、市民レベルでの注目は高いはずです。
もちろん個々の問題は自治体レベルの話かも知れません。しかし、自転車を使いやすくして利用を促進するということは、地球環境に対する取組みや、今後の社会のあり方を考えるという、政治の姿勢が問われる部分にも関わってきます。交通事故や青少年の非行の抑止、渋滞や駐輪など交通や都市の問題、市民の健康増進や公害の問題、予防介護などにも関連してきます。まさに政治の本質が表れると言えそうです。
最近目についた自転車関連の記事の傾向をたどってみると、自転車に対する注目や関心が高まっているだけでなく、多くの人の考え方や意識も確実に変わって来ているような印象を受けます。もちろん、すぐに自転車専用道が増えたり、自転車を取り巻く環境の劇的な改善に直結するわけではありません。しかし、そうしたコンセンサスも着実に形成されつつあるようです。
新しい経路を走行する初めのうちはいいんですが、道に慣れてきた頃が危ないですよね。事故も取締りも。春の交通安全運動なんかがあるから言うわけではありませんが、花見や歓送迎会などの帰りに、うっかり自転車の飲酒運転などをしないよう気をつけたいものです。クルマと違って、押して歩けばいいんですから。酔い覚ましにもなりますし..(笑)。
Posted by cycleroad at 17:00│
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