April 21, 2006

クリティカルマスに至る地球

クリティカルマス明日4月22日はアースデイです。


あまりマスコミで積極的に取り扱われることが少ないので、一般的には、まだまだ知らない人も多いようです。せいぜいローカルニュースで、アースデイのイベントが紹介されるくらいでしょうか。最近提唱された運動のように思う人も多いと思いますが、実は30年以上の歴史があります。

1970年の4月22日、アメリカのスタンフォード大学の学生が、環境汚染に反対する行動として全米の大学に呼びかけ、のべ2千万人もの人がデモを行ったのが始まりと言われています。それ以降、毎年4月22日がアースデイとなりました。

「環境問題への関心を示す行動を起こすための日」として全世界に広まっていますが、どんな行動を起こすのか、その中身やスタイルは国によって様々です。日本各地で市民団体などが中心となって開催される各種イベントは数十箇所程度ですが、全世界では1万箇所以上で大小さまざまな「行動」が行われます。

もちろん、この種のコンセプトに自転車はベストマッチですから、みんなで自転車に乗る催しも世界中で行われているようです。こうしたイベントは、どうしても発祥のアメリカや西欧諸国に目が行きますが、写真は東欧、ハンガリーのアースデイのポスターです。

残念ながらハンガリー語が読めないので詳しい内容はわかりませんが、ブタペストなどでも自転車ライドが行われるようです。日本で4月22日前後に行われる自転車イベントは「アースデイライド」などと呼ばれているようですが、ハンガリーでは「クリティカルマス」となっています。

アインシュタインcritical massコロンボダースベイダー

実は、クリティカルマスは本来、アースデイとは全く別のムーブメントなのですが、ハンガリーでは一緒になってしまったようです。日本での「クリティカルマス」の知名度はかなり低く、趣味で自転車に乗っている人でも知らないことが多いのではないでしょうか。

しかし、ご存知の方なら、「クリティカルマスのポスター」という矛盾に気づくかも知れません。つまり、普通クリティカルマスの参加を呼びかけるポスターというのは、ありえません。そのことに思い当ると、ずいぶん意外なポスターに見えてくるではないでしょうか。

「クリティカルマス」について明確な定義があるわけではないので説明は難しいのですが、1992年アメリカ・サンフランシスコで始まった自転車愛好者によるムーブメントです。市民運動というのとも少し違います。明確な形があるわけではなく、主催者がいるわけでもなければ、会員やメンバーが決まっているわけでもありません。

この運動を知った人が自己責任で自然発生的に集まって自転車に乗り、また自然に解散するというものです。デモと違ってプラカードも無く、基本的に自転車に乗るだけです。何週目の何曜日という、おおよその日時は決まっていますが、主催者はいないので、ポスターで呼びかけるようなイベントではないのです。

クリティカルマス(critical mass)自体は自転車用語ではなく、「限界質量」という意味ですが、日本語に直してもよくわかりません。「ある結果を得るために必要な量」ということですが、自転車に乗った人がある程度集まったときに、自然に始まる、自然に出来上がる、といったスタイルから来ているようです。またクリティカルなマス、つまり批判的な大衆という意味も重ねられているのかも知れません。

チェ・ゲバラハルクターミネーターcritical mass

多発する交通事故やクルマ中心の交通社会に警鐘を鳴らし、道路をクルマから取り返す為の運動と理解されています。また撒き散らされる排気ガスに怒り、自然破壊や環境の悪化を憂うなど、様々な思いを持った人々が集まり、自転車で車道を走り、道路がクルマだけのモノではないことをアピールする活動と言えそうです。

しかし主張や考え方もさまざま、統一したものはありません。それぞれの考えで参加するわけで、単に好きで走っているだけの人もいるはずです。道路がクルマに奪われていると聞くと意外な感じがするかもしれませんが、もともとはクルマなんて走っていなかったわけで、いつの間にかクルマ中心になってしまった交通システムに疑問を投げかけているわけです。

私も実際に参加したことはないのですが、映像などで見る限り、たくさんの自転車が車道いっぱいに広がって走行するようです。別に止まって道路を占拠するわけではなく、また暴走しているわけでもありません。ただ自転車がたくさん集まって走行しているだけです。初めて遭遇すれば驚くでしょうが、クルマもあまりクラクションを鳴らしたりすることはないようです。

クリティカルマスも現在では世界100ヶ国以上に広がっています。日本でも幾つかの都市で発生しているようですが、あまり大規模なものではなく、時間もおよそ1時間くらいだそうです。道路を堂々と走る爽快さと改めてふだんの走りにくい環境を実感すると言います。一種の自転車のカルチャーと言える面もあるでしょう。

critical massヨーダcritical mass

アースデイと違って、「クリティカルマス」は、ポスターで参加を呼びかけるようなイベントではなく、本来的には、そもそも呼びかける人もおらず、噂や口コミで広がって、毎月の最終金曜とか土曜とかに「自然発生」するものなのです。そうした意味から、クリティカルマスのポスターと言うと、ちょっと違和感があるわけです。

またアースデイのほうがずっと古いですが、直接関係もありません。別に細かいことを指摘して間違っていると言いたいのではありません。おそらく、東欧のハンガリーに伝わるまでの間に、そういう形、あるいはそういう呼び方に変化したということなのでしょう。

ジュラシックパークcritical massクリティカルマスの参加者には、クルマ中心の交通システムによって自転車は隅に追いやられ、街が走りにくいばかりか生命の危険にも晒されているといった反感がある人も多いようです。都市ではクルマの渋滞に占拠されるだけの道路を取り戻そうというアピールもあるはずです。当然、クルマのもたらす環境汚染や地球温暖化、エネルギーの消費スタイルに対する抗議もあるわけで、その意味ではアースデイとオーバーラップする部分も少なくないのかもしれません。

バイシクルライドと呼ぶか、サイクリングやポタリングと呼ぶか、あるいはクリティカルマスと呼ぶかによって、社会に対するアピール度やイベントとしてのイメージ、人々の受ける印象は違ってくるでしょう。しかし、呼び方はともかく、そうしたイベントに参加する人、また自転車に乗る人が、総じて環境に対する意識が高いことは間違いないようです。それこそ、地球が限界質量、クリティカルマスに達してしまわないよう、行動すべきと言えるのかも知れません。



アースデーではなくアースデイと表記されることが多いようですね。まあ表記も何でもいいんですが(笑)、地球の日は、地球のことを考えるだけでなく、「行動を起こす日」というのがポイントです。でもこの日に限らず、普段から自転車に乗って排気ガスを浴びていれば、自然と環境問題への関心が高くなるのも事実ですけどね。

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