May 24, 2006

自転車から手が放せない場所

広島では6月1日から、自転車の片手運転は5万円以下の罰金になるそうです。


「えっ」と驚かれた方もいらっしゃるかも知れませんが、増加する自転車の事故に対応するため、広島県警が傘差しや携帯電話を使用しながらの自転車の片手運転を取り締まるという話です。同じ日本国内でも、例えばタンデム自転車の公道での走行が認められる県とそうでない県があったりします。これは、道路交通法の適用に伴う「道路交通法施行細則」が県ごとに決められているからですが、この細則が広島県では改正されるわけです。

クルマと同じで、携帯電話を使用しながらの運転は見えていても注意散漫になりますし、実際に危険を感じた人も多いと思います。携帯で会話どころかメールを打ちながらという危険な乗り方が増えているのも事実です。本来なら個人のマナーの問題ですが、個人の良心に頼るやり方は、もはや機能しなくなっており、罰則をもってあたらざるを得ないというのが現実というわけでしょう。

片手運転禁止特に中高生のマナーの乱れが指摘されるところですが、ケータイで話しながら走行している人は、若い人ばかりではありません。最近は中高年の人にも多くなっています。雨の日の傘はともかく、日傘をさしながら走行している女性は、むしろ中高年に多いようです。片手では安定を失う恐れがあり、とっさにブレーキもかけられないので、片手で物を持つのも禁止です。今どき少ないと思いますが、片手で蕎麦やラーメンを担いでの出前も違法になるわけです(笑)。買い物袋を片手で持ったり、飼い犬のリードを握って散歩しても違反です。

たまたまスーパーのセールだったので、買い物カゴ満載でトイレットペーパーを片手で持って帰る主婦まで違反にしなくても..というのはあるでしょう。しかし、悪意は無くとも危ない運転をする人はいます。そうした主婦に追突されてケガをする人もいるわけで、結局自分の都合で危険な走行をするのは、老若男女を問わないと言えるでしょう。

雨の中を自転車に乗れば、どうしても前方から雨がかかりますので、傘を前に傾けることになり、視界を遮ります。例え傘を固定する器具を利用して、両手でハンドルを握っていても見通しが悪くて危険なことには変わりありません。もちろん、一応両手でハンドルを握りながらも、ケータイでメールを打っていれば、そもそも危険な運転として道路交通法違反に問われるでしょう。

ケータイのメールに、すぐ返信したい気持ちも判りますが、メールくらい止まって打てばいいのにと思います。しかし、現代人は忙しく、つい何でも同時並行で行い、時間を上手に使わないと気が済まなくなっているのかも知れません。自分の都合を優先し、公共の場でのモラルや他人の迷惑を考えなくなってきたのは、個人の権利意識ばかり優先してきた戦後の日本の風潮という指摘もあります。

日本は恥の文化と言ったのは、ルース・ ベネディクトでしたが、今でもそれは生きていると思います。今の日本人でも、ほとんどの人が自分だけ浮いた存在になるような行為は恥として恐れます。しかし、恥かしいと思う基準が変わってきているのも確かで、人に迷惑をかけても、必ずしも恥かしいと思わなくなっているようです。よく言われるような電車内で化粧する女性だって、公衆の面前で羞恥心を感じるような行為もあるはずですが、その基準が変わってきているのでしょう。

話は違いますが、最近は、万引きを発見したら、小学生でも即警察へ通報する店が増えているそうです。親を呼んでも逆ギレされたり、金を払えばいいのだろうと開き直ったり、防犯カメラが少なく死角が多いと店を責める親も多いと言います。証拠のビデオを要求したり、金額によっては逆になじられたり、学校などへの通報も個人情報の漏洩と抗議する親までいるそうです。万引きにしてこの状態ですから、自転車のマナーについて、親の躾が当てにならないのも頷けます。恥の文化と罪の文化の比較はともかく、日本も罰則や警察によらなければ規律が保てなくなってきているのかも知れません。

最近も書きましたが、警察は自転車の交通違反に対して、赤キップによる刑事処分を適用する取締りを強化しています。多くのルールを守った善良なサイクリストにとっては、危険も減るので歓迎すべき傾向と言えるでしょう。長期的には、歩道を暴走するような自転車が減って、自転車に対する悪いイメージの改善につながります。もちろん片手運転禁止と言われなくても、危険な運転をすべきではないし、自分一人の道ではなし、交通ルールを守るのも当然の義務です。

しかし、こうした傾向が進むと、箸の上げ下ろしまで口をはさむ、ではありませんが、窮屈な社会になっていくことも事実です。自分の権利と都合ばかりを主張し、お互いにいがみ合い、告訴や賠償の応酬にもなりかねません。社会的コストも膨らみ、結局は自らの首を絞めることにもなるでしょう。自転車に限ったことではありませんが、警察に頼らずとも維持すべき、公共の場所でのマナーや個人のモラルについて考えてみるべき時期に来ている気がします。



ちょうど、女子高生の自転車の二人乗りを神奈川県警が摘発したニュースが、テレビなどでも報じられていますね。家庭裁判所へ送致されたことを恥と思っているかは疑問ですけど。

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この記事へのコメント
昨日、ジロでイワン・バッソがニコニコしながら補給食を食べてました。
広島では罰金ですね(*´ー`) フッ

ロードでチーム練しているときも後続にて信号を送ります。
安全のために手信号を送って罰金(*´ー`) フッ

もちろん、携帯や傘など危険な行為はわかるのですが・・・
世知辛い世の中です。
Posted by ats_ats at May 25, 2006 11:16
その昔・・・
自転車の講習なんてのがありましたなぅ〜
右折左折のときには左手はブレーキ右手は右に曲がるときは水平に出し、左折は右手を肘から上に折って上げます。
なんだって一生懸命の時はあったのですが・・・
今やなんとなく寂しいかぎりですね。
Posted by kazupon at May 26, 2006 17:13
この施行はちょっと厳しいですね。確かに危険度は下がりますが、現在の交通モラルから推測すると、あまり効果がないのではと思ってしまいます。駐車取締りの民間参入と同じように、結局対症療法に過ぎないので、マナーを向上させるような教育をしていかないとダメでしょうね(当然、警察だけでは対応できないと思いますが…)。

とはいえ、大阪だけを見ても自転車・歩行者のマナーは底を這っています。昨日帰りの道すがら、あまりにも酷い多くの自転車を見て、絶望感に近いものを味わいました。歩行者も歩行者で、赤信号を大手を振って歩いている事に、情けなさを感じました。
世知辛いですが、いっそ危険な歩行者にも赤切符を…。
(スミマセン。話が違う方向に向いてしまいました)
Posted by nori at May 27, 2006 14:17
ats_atsさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
普通の人が片手で何か食べながら自転車に乗っていたら、傘やケータイと同じで危ないということになりそうです。下手すると摘発されるかもしれませんね。
さすがに、手で合図しただけで危険とはならないでしょうけど、ケータイ禁止ではなく片手運転禁止ですから、取り締まる警察官の運用次第で、何が危険と判断されるか分かりません。
どの程度摘発されるのか分かりませんが、広島の方はうっかり危険と判断されそうな乗り方は出来ないかも知れないですね。
Posted by cycleroad at May 27, 2006 23:20
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そう言われてみれば、私も小学校でだったか、習ったような気がしますね。実習をしたかまでは覚えていませんが、合図は知っているわけですから、講習会とかで習ったんでしょう。
しかし、あの合図は法律で決められていたのでしょうか。法的根拠があるのなら、広島と言えども、当然合図の為の片手運転は違反ではないことになりますね。実際には、今どき合図をしている人を見ることは少なくなりましたけど..。
Posted by cycleroad at May 27, 2006 23:44
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、あまり効果は期待できないでしょうね。全国ニュースになっている自転車の赤キップでさえ知らない人はいますし、広島県警はビラを配ったりしているようですが、ローカルなニュースが地元の人にも伝わらないことは多いです。警察官も自転車だけ見張っているわけにもいきません。見せしめ的に一罰百戒と言うのはあるかも知れませんけど..。
私も先日大阪方面へ行ってきましたが、相変わらずパワーあふれる人が多いですね(笑)。確かに電車内などもそうですが、歩行者のマナーの問題もあると思います。もっとも大阪に限った話ではありませんし、日本人全体、様々な面でモラルの低下が憂慮されるということでしょうね。
Posted by cycleroad at May 28, 2006 00:14
 
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