May 27, 2006

気づかないうちに鈍る切れ味

先日、友人の家で集まりがあった時のことです。


私はふだん、あまり料理はしないのですが、多少は心得があるので夕食の準備を手伝っていました。その時借りた包丁が、あまりに切れなかったので聞いてみると、案の定、一度も砥いだことがないと言います。当然、砥石もありません。しかし、近くに売っていることがわかったので砥石を買ってきて砥いで使いました。すると友人は、そのあまりの切れ味の違いに、今まで使っていたのは何だったのだろうと驚いていました。

最近、家の中や身の回りにある道具は大概、誰でも使いやすく、面倒なメンテナンスが不要になっていく傾向にあります。包丁でも研ぐ必要の無いものがあるようですし、技術や素材などの進歩で便利になるのは悪いことではありません。しかし、使いやすくなったり、製品の性能がアップしたぶん、メンテナンスのやり方すら知らない人も増えています。クルマなども、いい例でしょう。

面倒な手入れをせずとも、繰り返し長く使える優れた製品なら結構ですが、簡単使い捨てタイプのものや、修理するより新しく買うほうが安いというものも少なくありません。言うまでもなく、最近の一部の安価な自転車もその一つでしょう。放置自転車やゴミの不法投棄の増加を助長しますし、何より自転車の楽しさをスポイルすると思うので、私はいいと思いませんが、日本で何千万台も売られているのも事実です。


駅までの足と割り切って使うなど、それぞれ考え方がありますので、安価な自転車に乗ること自体はともかく、いくら安いからとは言っても、もうちょっと手入れすれば格段に乗りやすくなるのに、と思うことも少なくありません。ギーギー音がしてるのに平気で乗っている人もよく見ますし、いつ見てもすごい音がしているのに、一向に直す気配のない人もいます。

細かいメンテナンスは別として、注油するだけでも格段に違うはずです。包丁を買った時の切れ味は抜群でも、徐々に切れなくなっていくので、切れないことが気にならない、気づかないわけです。自転車も気づかぬうちに、買ったときの快適な走行感が失われ、いつからか異音がしていても気にならなくなっているのでしょう。自転車は軒先で雨ざらしという方も多いでしょうけど、せめて雨の後だけでも注油したいところです。

バイオディグリーザーシマノ・スペシャルグリスもちろんケミカル用品を一通り揃えているような方もいますが、趣味でサイクリングをする人でも、マメに洗車する人から、ほとんど手入れをしない人までいらっしゃいます。メンテに無頓着な方でも、潤滑オイル1本くらいは備えておいて損はありません。通勤用ならホームセンターに売っているようなものでもいいですが、出来れば自転車用の製品がベターです。ただ、専門店で売られているようなケミカル用品は、何を使えばいいのか、よく判らないという声も聞きます。

確かに種類が多いですし、普通には聞いたことのないメーカーかも知れません。日本語で詳しく書かれていなかったり、そもそも呼び方がバラバラで判りにくいこともあります。使い方を誤ると逆効果のものもあるので、出来れば最初は専門店で聞いて買うか、メンテナンスの本を一冊購入するといいと思います。種類は多いですが、用途や部分によって細分化されているだけなので、もちろん全部揃える必要はありません。

フィニッシュラインエコテック濃縮クリーナーフィニッシュラインクロスカントリーウェットルーブおそらく市販のメジャーなものは、主に青い缶の「ワコーズ」(WAKO'S)、主に黒っぽいボトルの「フィニッシュライン」(FINISH LINE)、緑やオレンジなどカラフルな「ペドロス」(PEDROS)、主に赤い缶の「レスポ」(RESPO)の4社が多いと思います。それぞれが用途別にラインナップを揃えています。他にシマノなど部品メーカーなどの製品もあります。

大まかに言うと、洗浄・潤滑・保護・その他に分けられるでしょうか。さらにそれぞれ用途別、部品別などで分かれています。ディグリーザーやパーツクリーナーは、主に油汚れを洗浄するためのものです。潤滑は種類が多く、グリスやオイル、ルーブなど、それぞれの部品や用途にあったものを使います。粘度の高いもの、サラサラした潤滑材もあります。モリブデンやフッ素、シリコンなど添加物による違いもあります。


保護は、防錆のため撥水や皮膜を作って保護する製品です。他には、特にチタン合金などで力のかかる部分のネジの焼き付きを防ぐ溶剤とか、金属部分を磨くためのコンパウンドの入った磨き剤とか、サイクルコンピュータの台座と本体の接点の金属の、雨などによる接触不良を直す復活剤なんてのもあります。さらに、それらの用途を組み合わせたものとか、スプレー式や注射式など形状の違いなどによるバリエーションがあり、同じ用途でも自然環境に配慮した製品などもあります。

潤滑と言っても、泥やホコリで汚れたままのパーツに注油したのでは、良いコンディションを保てません。ゴミや古いオイルを落とした上で注油する必要があります。中には天気や場所で潤滑剤を変える人もいます。逆にゴムパッキンなどクリーナーによって痛むパーツもありますので注意が必要ですし、ブレーキパッドやリムをはじめ注油してはいけない箇所もあります。



こうしたメンテナンスによって、変速や制動など格段に快適になりますし、乗る気分まで変わるものです。チェーンやブレーキなど未然にトラブルを防止することにもなります。明らかな潤滑不足による金属音以外でも、「きしみ音」など、小さくても音が気になる場合がありますが、これらを解消したり防ぐためにも有効です。



あらかじめ雨水の浸入防止や防錆対策をしておくのもいいですし、フレームなどを保護・ツヤだしするワックスなどがあってもいいかも知れません。チェーンを洗浄するための道具などの面白い製品から、滅多に使わないものまでいろいろですが、少しずつ必要に応じてメンテナンスグッズを増やしていけばいいでしょう。



余談ですが、私はこれらのケミカル用品を、家の中のちょっとした部分に使うこともあります。例えば、滑りが悪くなった引き戸とか、音がするようになった引き出しの滑車とか、扉の蝶番とかです。明らかに滑りがよくなって使い勝手が向上したり、音が無くなるなどして家族に好評です。結果として、多少自転車用品が増えたりしても、家族からの異音(文句)も防いでくれています(笑)。

自転車でなくても、まだ身の回りには、ちょっと手入れすれば格段に使いやすくなるのに気づいていない道具もありそうです。自分で手入れをすれば、愛着が増すものもあるでしょう。ちょっとの手入れが快適な使い心地や、ものによっては安全とか後々の破損やトラブルによる面倒を減らすことになるかも知れません。これからの梅雨の季節、ちょっとした時間の合間に道具の手入れなんていかかでしょう。



ベテランサイクリストの皆さんに対しては釈迦に説法な話題でしたが、梅雨に入った地域の方、これからの場所の方も、うっかりサビたりさせないようご注意を。

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この記事へのコメント
こんにちは
『包丁の』切れ味ってぇところで”ピクッ”です
ナイフクラブ員としては!
やはり切れない頭と、刃物は使い物になりませんネェ〜
無駄な力を入れるのは危険です。
家庭に砥石は常備して欲しい〜ですネ。
きれいに切れた刺身はおいしそうに見えますもんネ!
椿油でサッとひと拭きするだけでサビも寄り付かないので
ほんの少しのメンテは効果”大”と思います。
Posted by kazupon at May 29, 2006 18:03
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうそう、kazuponさんはナイフがお好きなんでしたね。確かに切れない包丁は使えませんし、包丁の切れ味が違うと、口当たりが変わって味まで違うとも言いますね。
しかし、最近は家に砥石どころか包丁すら無い家もあるらしいです。しかも独身の人ばかりとは限らないそうです。主婦でも、料理をして台所が汚くなるのがイヤとか、もちろん面倒などの理由で、料理をしない人も増えているそうです。
包丁なんて無くても、出来合いのお惣菜とか、カット野菜などを買ってくれば事足りるということなのでしょう。逆にレタスをハサミで切る人も見たことがありますが..。
こうなると、メンテ以前の問題ですね(笑)。
Posted by cycleroad at May 31, 2006 05:30
おおっ!

レタスにハサミっすかぁ〜

キュウリもいけるかも・・・

発想も頭の切れからですかネ(^_-)-☆
Posted by kazupo at May 31, 2006 08:09
kazuponさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かにハサミも使いようですが、個人的には、レタスはちぎったほうがレタスらしくて好きですけどね(笑)。
まあ、食材も多様化してますし、個人の好みの問題ですから、調理方法や道具にも新発想があっていいとも言えますね。
Posted by cycleroad at June 03, 2006 01:22
 
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