次のワールドカップより先、まだ5年もあると言うのに、近頃テレビのアナログ中継終了の告知CMが時々流れています。関係者にとっては、全国にまだ1億台強もあるアナログテレビを5年間でデジタルに置き換えるのは難しいのではないかという危機感があるようです。
日本のテレビ放送も、街頭テレビの時代から家庭への普及、カラー化、衛星放送やハイビジョンなど着々と進化の過程をたどり、いよいよアナログからデジタルへ移行するというわけですが、一方でテレビが、かくも進歩普及した陰には衰退を余儀なくされたものもあるわけです。
「サーカス」もそのうちの一つであることは間違いありません。1960年代頃までは、日本にも30ほどサーカス団があったそうですが、その後テレビの普及と反比例するかのように減り続け、現在、木下大サーカスなど4つしか残っていません。
世界でも事情は同じです。ロシアのボリショイサーカスや中国の雑技団など有名なところは別として、やはり数は激減してしまいました。そんな中でヨーロッパを中心に活動する、マイナーですが、ちょっと変わったサーカス団があります。その名も「
Cyclown Circus」です。(注:clownは道化「どうけ」)
一般的なサーカスとは違って、街から街へとみな自転車で移動を続けるという、十数人の小さなサーカス団です。しかも独自のパフォーマンスで地域奉仕活動をするサーカスで、非営利のボランティアなのです。荷物も全て自転車で運びますので、当然ながら猛獣使いや空中ブランコといった大掛かりな出し物はありません。
でも、ユーモアたっぷりのコメディが得意な道化師もいれば、ドラムも叩けるマジシャンや、自転車を青い象に変身させる曲芸師もいます。投げ縄も得意なコスチュームデザイナーは、綱渡りやアクロバットもこなし、ローラースケートも上手い人形遣いは、自転車の改造技術の腕もピカイチです。
人気者のピエロは、クラリネット奏者としても優れ、一輪車や曲芸をこなす身の軽い機械の天才エンジニアもいます。そのほかにも、数々の個性的な人々の集まりでもあるこのサイクラウンサーカスですが、そのメッセージは、クルマが環境に与える影響を見過ごすことは出来ないというものです。
クルマが世界や人々の心に与える被害を、人形劇や自分達のライフスタイルで表現しています。自転車に乗ることで、あまりクルマに依存すべきでないと訴えることも、彼らが自転車に乗る理由の一つです。そして何より自転車が人々に運んでくる喜びを見せることにより、自転車に乗ることを奨励したいと願っているのです。
自転車で旅を続けることは、天候をはじめ自然の様々な影響も受けるので大変です。それでもサイクリングによる移動は、彼らの愛する遊牧民のような生活を可能にし、何物にも依存しない自由と、心の平安と、以前よりもっと彼らを強くする機会を与えると言います。行く先々での人々とのふれあい、慣習や言語、歴史や文化の違う様々な人生を送る人々と出会いという素晴らしい体験によっても報われます。
自転車によって旅行のコストは抑えられるものの、利益を得るための活動ではなく、何のスポンサーシップもありません。ストリートショーなどから得られるチップなどが、旅行のための唯一の資金となります。それでも、恵まれない子供のための無料ショーなどは優先させるそうなので、やりくりも楽ではないようです。
でも「Cyclown Circus」は、テレビを見るような無気力で受動的なスタイルではなく、ショーの臨場感で圧倒するような、ライブのエンターテイメントで、子供たちをはじめとする多くの人にも元気を与えたいと考えて活動しているそうです。
今どきテレビやインターネットの発達で、映像を通して何でも見られます。実際には出来ないシーンさえCGなどの映像技術で表現できるかも知れません。しかし、ナマの迫力や臨場感に、つい誰もが引き込まれ、演じる人の鼓動や息遣いまで感じられることもあるでしょう。やはり、テレビではなくライブでこそ、伝わる熱意や思いもあるのだと思います。
4つ残っているサーカスと言っても「安田大サーカス」は入りませんので念のため(笑)。
折りしも夏休みの催しやイベントなども目白押しです。例えば花火大会なんかも、ナマで響いてくる音の圧力や火薬の臭いといった臨場感や迫力、会場の人いきれなどもテレビでは味わえません。たまには出かけてみるのもいいかも知れませんね。
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Posted by cycleroad at 12:30│
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