
今年もお盆の帰省ラッシュで、ふるさとや行楽地へ向かうクルマの列で、高速道路でも100キロを超えるような渋滞が発生したようです。

各地の遊園地やテーマパークといった行楽施設にとっても、まさにかき入れ時でしょう。この時期はどこも混雑すると思いますが、それでも全体的に見れば、こうした施設はおしなべて長期低落傾向にあると言います。売上減少に歯止めがかからず、経営破綻に追い込まれる施設も少なくありません。
遊園地にせよテーマパークにせよ、お客に如何に何度も訪れてもらえるか、いわゆるリピーターを増やすことが重要な意味をもちます。そのため、次々と新しいアトラクションやさらに過激な絶叫マシンを導入し、入場者数を維持するため努力を重ねる施設は多いものの、それでも飽きられて過剰投資となる場合もあるようです。

海外も含めて観光地同士の競争も熾烈です。娯楽も多様化し、そもそも消費性向が大きく変わってきている中で、ある程度必然の部分もあるでしょう。ところが、中には例外的に入場者数を増やしているところもあります。その中でも特に注目されているのが、北海道は旭川市にある
旭山動物園でしょう。
日本最北の動物園として約40年前に開園しましたが、10年ほど前には入場者数も低迷し廃園寸前までいきました。予算もなく様々な困難な出来事も重なって、どん底に落ち込んだ旭山動物園が、まさに奇跡と呼べるような復活をとげ、一昨年には東京の上野動物園を抜いて日本一の入場者数を記録しました。

このあたりのことは、たくさんのメディアでも取り上げられ、大勢の人が言及しており、NHKの番組、「プロジェクトX」のストーリーにまでなりました。民放のテレビドラマにもなり、多くの人がご存知だと思いますので、今さら私が詳しく述べるまでもないでしょう。
それにしても驚くのは、この旭山動物園が旭川市営だということです。人口から言っても、旭川市はわずか36万人の都市です。園内に観覧車やジェットコースターなどの遊戯施設もありますが、首都圏の動物園などに比べれば格段に小さな動物園です。それが全国から大勢の観光客を集めているのです。
しかも、パンダのような珍しい動物がいるわけではありません。市の施設ですから予算も限られていますし、マーケティングの専門家が再生を手がけたわけでもありません。冬は雪に覆われますし、大都市圏からも遠く、集客面のハンディも半端ではありません。まさしく奇跡と呼ぶほかはないでしょう。
よく言われるように、動物本来の行動や自然に近い状態を見せる「行動展示」が功を奏したことは間違いありません。ホッキョクグマやアザラシ、ペンギンといった、どちらかと言えば地味な動物でも、今までにない視点、見たことのない姿が見られるのは、確かに魅力的でしょう。そのあたりの動物の見せ方はさすがです。




珍獣を目玉にしなかったことも、かえって幸いしたとも言えます。古い例になりますが、大阪万博のアメリカ館の目玉は「月の石」でした。爆発的な人気を呼び、長蛇の列が出来たのをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。しかし、その後「月の石」は各地で展示されましたが、ほとんど見向きもされませんでした。
珍獣や、新しい動物を次々と輸入して話題を作れば、一時は入場客も増えるかも知れません。しかし、一度見れば飽きられ、また新しい目玉を作らなければならず、悪循環に陥りかねません。予算やスペース、飼育上の問題などもあったのでしょうが、極めて賢明なやり方だったと言えるでしょう。




ほかにも、手書きの看板や飼育係自身による説明、食事の様子を見せ、動物と触れ合わせるなど小さな工夫の積み重ねと言えばその通りなのでしょう。しかし、似たような工夫を取り入れている場所は他にもあります。首都圏などで一世を風靡した動物園の低迷を思えば、果たしてそれだけが人気の理由なのでしょうか。
例えば動物園を、見たことの無い動物を見に行く施設だけではなく、人が癒されたくなったら何度も行く施設、行けば元気になる場所にしたことも、その驚異的な人気の秘密に違いありません。そのためには、「いかに動物達が生き生きとして魅力的か」、が大切なわけで、他の動物園との動物の環境の違いにも秘密があるわけです。



野生の動物を閉じ込めてかわいそうだと言う人も少なくないでしょうが、そうした人も、場合によっては考え方が変わる施設にしたことも理由かもしれません。命の尊さ、自然、環境、いろいろなことを学んだり、考えさせる施設であることにも秘訣があるのかもしれません。
ホッキョクグマを見に行くのではなく、「またイワン(ホッキョクグマの名前)に会いに行く。」などと言うお客さんの存在も見逃せません。もちろん、そうした魅力的な動物の表情を引き出すため、動物にも退屈させないなどの独自のノウハウの開発や、飼育係の熱意と努力も大したものです。




他にもいろいろな見方があると思います。たくさんあるのですが、紙幅の関係上、書ききれません。でも少なくとも、ごく表面的な理由だけでないことは確かです。全国の同種の施設ばかりか、客足の遠のいた商業施設から業績が頭打ちの企業、観光客減少に悩む自治体に至るまで、広く参考になる点は多いと思います。
集客施設に限らず、物事の本質や原点を見つめ、時代のニーズの捉え方、組織や人材の活かし方、どん底からの軌跡にも学ぶことは多いはずです。比べるのは酷ですが、同じ道内の夕張市と対比する見方もあるでしょう。見ようによっては、個人の立場からも面白い、いろいろなヒントが詰まっているような気がします。
この時期、行楽施設へ向かう道も渋滞、駐車場も満車、身動きもとれない、なんてこともあります。どこでも応用できるわけではありませんが、渋滞を避けるため、電車やクルマと自転車(輪行、運搬、自走)を組み合わせてアクセスするなんて手が、意外と使える場合もありますね。
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Posted by cycleroad at 08:00│
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私と妻の実家は車で30分のところにあり、いわゆる帰省ってのは経験がないのですね。ほんとこの時期、みなさん大変ですよねぇ…。今日もバイクで走ってると大渋滞に遭遇!渋滞の車の間をバイクで抜けるのって怖いですよね?今にも子供が助手席を開けそうな気がして…。
ご存知でしょうが、我々の住む近畿地方には日本最大級の水族館・海遊館とUSJの2大テーマパークがあります。双方ともオープンから右肩上がりの良好な経営体質にあり、斬新なアイデアと興味をそそる宣伝効果が海外からの訪問者と、国内のリピーターを呼び込んでいると評価されています。市内からのアクセスの良さもその一因だと言われていますが、我々の時代とはハード面の違いを痛感しますね。動物がいるだけの動物園じゃこれからの時代はダメなのでしょうか?また昔話になりますが「動物園」…私なんて胸をわくわくさせたものですがねぇ…。