![国会議事堂](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/8/b/8b2b042e-s.jpg)
自転車に乗る国会議員は少ないですが、理解を示す議員は少なくありません。
衆参の国会議員、与野党合わせて7百人以上の中には、自転車に乗る人もいるとは思いますが、趣味として自転車に乗っている国会議員は、前回取り上げた谷垣氏以外にあまり聞きません。しかし、以前トライアスロンもやっていた小杉隆衆議院議員、オリンピックの橋本聖子参議院議員の他にも理解を示す国会議員はいます。
前回の記事でも触れた、今年6月に開かれた国会議員が自転車をアピールする集いとは、「
自転車活用推進議員連盟」の総会のことです。議員連盟は数多く存在しますが、自転車活用の議連もあるのです。ちなみに朝日新聞では、次のように報じられました。
「環境に優しく、健康に良い交通手段」である自転車をアピールするため、超党派の国会議員による「自転車活用推進議員連盟」(小杉隆会長)のメンバーが6月5日、「青空総会」として皇居を1周した。10人が参加し、委員会の都合などで途中で引き返した議員を除き、5人が完走した。
名誉会長の谷垣財務相は、皇居周回中にガードレールにひざをぶつけてしまい、出血したが、完走。東京・世田谷区の自宅から自転車で出勤する張り切りようだった。
![橋本聖子議員も](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/4/b/4bb30d5c.jpg)
他紙も似たような記事を載せましたが、あまり多くの人が知るニュースにはならなかったようです。この青空総会のアピール度はともかく、「自転車活用推進議員連盟」には、連盟の名誉会長の谷垣禎一氏、会長の小杉隆氏のほかにも、なんと100名以上の超党派の議員が名を連ねています。
この議員連盟の存在自体、あまり知られていないところですが、二階俊博氏、津島雄二氏、海部俊樹氏、亀井静香氏、堀内光雄氏、鳩山由紀夫氏といった与野党の党首や派閥の領袖、閣僚経験者などの有力政治家も多く参加しています。
その設立趣意書によれば、地球温暖化を人類の将来の生存に関わる深刻な問題ととらえ、国民の生活様式を見直し、化石燃料を使わない自転車を重要な交通手段として都市の交通体系に組入れるよう努力すべきであると提言しています。100名以上の国会議員が、自転車を都市交通として使おうと言っているのです。逆に言えば、今の状態での自転車の利用は充分ではないということです。
我が国において自転車は、
他の先進国に例を見ない歩道通行可の制度が一般化しているため、歩行者との間にトラブルを生じており、また
車道においては自転車レ−ンがないため、高齢化社会の到来もあいまって安全確保に問題を生じていると断じています。従来の制度の不備も率直に認めているわけです。
![谷垣禎一衆議院議員](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/9/f/9f797480.jpg)
必ずしも車道に自転車レーンなどいらないと考えるサイクリストもいるかも知れませんが、特に都市部では、危ない体験や駐車車輌で走りにくいことも多いでしょう。誰でも安全快適に走行出来てこそ、都市交通としての役割が期待できるのも事実です。
また近年、欧州主要国や米国の政府は交通政策上、自転車の重要性を再認識し、新しい政策を発表していることも指摘し、我が国においても21世紀のライフスタイルとして自転車利用の促進を視野に入れた交通政策へ転換することの重要性が強調されています。世界的な潮流も意識しているわけです。
議員連盟では、こうした時代の要請に応え、地球規模の課題や国民の健康の増進に寄与する自転車の更なる活用を促すため、国の政策として法令の整備、規制の緩和、予算の確保、21世紀の人にやさしい町作り、国民への啓蒙普及を図る目的を達成するため、積極的な活動を展開すると7年も前に宣言しているのです。
4年前にヨハネスブルグで行われた「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグ・サミット)では、自転車活用推進議員連盟として「地球の救済は自転車から」という内容のアピールを公表し、出席各国へ呼びかけも行っています。しかし、他にはあまり目立った活動は報告されていません。
設立趣旨については文句ありませんが、一方で具体的な政策がなかなか進んでいないことも確かです。日本では自転車の普及率こそ高いものの、都市交通としてクルマを代替するような効果的な活用のされ方は進んでおらず、それを促すインフラの整備も遅れています。
![左が小杉隆議員](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/d/c/dc4d1906.jpg)
多くの人のコンセンサスを得て、実際に法制化し、予算をつけて政策として実施するのは簡単に進むプロセスではないでしょう。もちろん議員もこの活動だけするわけではありませんし、優先度の問題もあります。それでも、積極的な活動が展開されているようには見えません。遅々として進まないのは何故でしょう。
自転車の活用が地球環境に貢献することは間違いありませんが、その効果は見えにくく、経済的に大きなメリットが得られるわけでもありません。その辺りにも理由がありそうです。国民への啓蒙という面でも、自転車レーンなどの有効性が、まだあまり広くは理解されていないような気もします。
つまり、自転車=ママチャリとして駅までの足としてしか見ていない人も多いと思うのです。駅まで早く着くから使っているだけの人には、自転車レーンが出来ても多少便利になる程度です。電車やクルマの代わりとして、電車の何駅分も、あるいは何十キロも自転車を交通手段として使う事は考えてもいません。
ほとんどの人はママチャリに乗っていますから、歩道を歩行者を縫って走る程度のスピードしか出ないのが当たり前です。歩道を走るのでも充分と思っている人も多いはずです。クルマと違って環境に優しいことは誰でも理解していますが、本当に現実的なクルマの代替交通手段となりえると思っていない人も多いと思います。
![閣僚サイクリスト](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/4/5/4567b7cd.jpg)
私の知る限り、小杉隆会長や二階俊博経済産業相は、その発言等からも深い理解と高い意識があると思います。ロードバイクで総会に参加した谷垣禎一名誉会長も、本当の自転車のポテンシャルを理解していることは間違いありません。しかし、その他多くの議員が果たしてどれだけ理解しているのでしょう。
ふだん、自ら実践すべく自転車に乗ることがあるのでしょうか。そもそもママチャリ以外の自転車に乗ったことは?。100名以上のメンバーのいる連盟の総会が10名参加の5名完走です。もちろん忙しいこともあるでしょうが、私には多くのメンバーの理解度も低いのではないかという気がするのです。
ママチャリも日常の近場の足としては便利です。でも重くてスピードが出ないのも事実ですし、「他の先進国に例を見ない歩道通行可の制度」が生んだ、歩道をゆっくり走るための自転車です。本来の自転車との違いや、その秘められた都市交通としてのポテンシャルも、非ママチャリに乗ってみなければ実感できないでしょう。
国民にしても、ママチャリしか乗ったことがない人が圧倒的に多いわけで、自転車の活用と言っても、近場の足としてしかピンと来ないのではないでしょうか。今でも充分活用していると思うでしょうし、自転車レーンが整備されても、自転車だけで通勤したり、クルマの代わりに使って遠くまで行きたいとは思わないでしょう。
国民のニーズや期待が盛り上がらなければ、議員連盟の活動も鈍くなるに違いありません。本当の意味での自転車の活用も進まず、インフラの整備も進みません。議員も含めて、まず多くの人に、もっと速くて快適で、現実的な都市交通たりうる自転車を体験し、実感してもらうのが先決なのかも知れません。
総裁選の最中でもありますし、政治家・谷垣禎一や議員連盟に対するサイクリストの期待を感じてもらうため、谷垣さんのキャッチフレーズ「絆」と書いたゼッケンでもつけて、みんなで財務省の周囲を走ってみる、なんてどうですかね(笑)。
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これこそ、本末転倒ともいうべき行政行為なのではないのでしょうか?残念です…。