September 06, 2006

より強い者が優先という構造

上海の風景遅い夏休みをとって10日ほど中国へ行ってきました。


私の友人や親戚の中にも中国各地に赴任している人がいますし、日本から出張などで出かけられる方も増えていますので、ご存知の方も多いかもしれません。が、せっかくなので、私なりに見てきた中国の街の様子を自転車や道路事情などに関連する部分に絞って記しておこうと思います。

上海中心部

さて、最初に訪れたのは上海です。中心部にいるぶんには、広告など街中の文字をよく見ない限り、日本にいるのと変わらない感じです。アジア系の顔で溢れていますし、特に中心部では、ファッションを見ても、化粧の仕方などを見ても、しゃべる言葉を聞かない限り日本人と見分けがつかないような人がたくさんいます。

自転車で行き交う人も多い

上の写真は上海中心部の繁華街ですが、繁華街としては若干日本より自転車の数が多いかなという気もします。全体としては、やはりクルマの数が急速に増えているようで、場所と時間によってはかなりの渋滞も発生しています。圧倒的に自転車のほうが速くて便利なのに、どうしてもクルマで通勤したい人も少なくないらしいです。

東京と変わらなくも見えますが、まさにモータリゼーションが始まったばかりの国、初めてクルマを所有する市民が続々と生まれている国という面もあるようです。他の都市交通も、地下鉄は東京に比べればまだまだ少ないものの、2010年の上海万博に向けて各所で工事が行われていますし、5百路線にも及ぶバスが走っていて市民の足となっています。タクシーも多くて便利です。そして、もちろん自転車も市民の手軽な交通手段となっています。

日本と比べると古い自転車が多い

一見すると、古い自転車も多く走っています。盗難が多発しているなどの事情もあるようですが、上海市内であっても貧富の格差が大きいことも否定できません。また、特徴として目につくのが、下のような電動自転車です。日本で普及しているような電動アシスト自転車ではありません。

日本の電動アシスト自転車は、ペダルをこがなければアシスト動力も発生しませんが、こちらの電動自転車は、こがなくても自走します。通りを行き交う自転車を見ていると、かなりの割合の人がペダルをこいでいません。それでも、普通の自転車と同等かそれ以上のスピードで走っています。

電動モーター自転車

日本では電動バイクということで、原動機付自転車として扱われるようなので免許が必要となりますが、こちらでは自転車として売られ好評を博しているようです。下のような、見た目は日本の原付スクーターと見まごうようなタイプの電動自転車もあります。でも、よく見るとペダルも前カゴもついています。スクーターのボディを使った電動自転車なのです。

ミニバイクのスクーターかと..

最初、エンジン音がしないので不思議な感じがします。この形でペダルをこいでいるのを見ると、なんともユーモラスに見えますが、信号などで停止した後、スタート時には加速が足りないのか、ペダルをこぐ人もいますので、普通の光景のようです。上海ではたくさん走っています。

ヘルメットが入っているわけではない

こちらの写真のように、自転車型電動自転車(と言えばいいのか?)でもスクーターのようなボックスをつけ、サドルとの間に子供を乗せ、前カゴには買い物の荷物を満載したお母さんなども当たり前のように見かけます。他にもいろんな形の電動自転車が走っています。

2階まである大きな自転車専門店

日本と同じように大型のスーパーなどで自転車が安く売られているそうですが、さすがに上海は都会です。このような自転車専門店もありました。

パーツなども売られている

ロードバイクやマウンテンバイクなども売られていますが、こうした専門店にも電動自転車が多く並べられており、人気はそちらに集中しているようです。日本でも台数的には、ママチャリなどのシティサイクルに比べれば圧倒的に少ないわけですが、走っている自転車を見ても、上海では更に少ないように見受けられました。

一般的な自転車レーン、駐車車輌はほとんどない

さて、街を走る自転車ですが、写真のような自転車レーンが設置されている道路も多く、上海自体が平地なこともあって、おしなべて走りやすそうです。広い道路では、下の写真のようにセパレートされており、恵まれた環境に見えます。しかし、日本とはまた違った面で走りにくい部分があるようです。

まず、専用レーンと言っても、クルマが平気で入ってきます。中国は右側通行ですが、右折車だけでなく、右側から追い抜こうとするクルマ(!)なども、レーンに入ってくることがあります。セパレートされているレーンにも進入してくることがあるようです。専用レーンの意味がないばかりか、かえって危なく見えてしまいます。

しかもクルマが、自転車や歩行者に向かってガンガン、クラクションを鳴らします。日本では、ちょっと考えられない状況です。タクシーやバスに乗っていても、こちらの運転は半端ではありません。強引な割り込みは常ですし、直進車を無視した左折(日本での右折)やUターンも珍しくありません。

多くの自転車レーンは幅が広い

イメージしやすくする為、日本の左側通行に置き換えて書きますが、右折しているクルマをさらに右側から抜いて右折するクルマもいます。日本ではまず考えられません。かなり強引な運転で、見ていてヒヤヒヤしますが、同時によく事故がおきないものだと感心します。

おちおち歩いてもいられません。中国は、いつでもクルマは右折可です。アメリカなどでも同じですが、前方の信号が赤でも、日本で言えば左折が出来るのですが、普通は交差するクルマや歩行者がいない場合に限ってです。ところが、中国では、歩行者が渡っていようとお構いなしです。

交差する交通を見ながら曲がってきますし、歩行者が避けると思っているので危ないこと、この上ありません。うっかり横切ろうものなら横断歩道であってもガンガン、クラクションを鳴らされます。しかも、日本で言えば右折車も曲がってきますし、渡り終える近くになれば交差方向の左折車が猛然と曲がって行きます。

慣れないと怖いです。日本人は上海に来ると誰しも驚き、みな戸惑うと言います。つまり、完全にクルマ優先社会なのです。現地で自転車に乗るには、交差点では何度も止まったり、右左折車をやり過ごさなければならず、直線で自転車レーンにいても気が抜けないわけです。

自転車レーンでなくても大胆に走行

かと言って、自転車のほうも萎縮しているわけではありません。女性だろうが高齢者だろうが、よく言えば大胆、悪く言えばルールを無視した走行をしています。赤信号でもクルマをぬってどんどん横断しますし、交通量が多く分離帯のないセンターライン付近でも平気で止まって待っています。

ほとんどの人は車道走行していますが、歩道を強引に通る人もいますし、オートバイまで歩道を走ってくることがあります。逆走する人もいますし、夜は市街地だからか、前照灯をつけている人のほうが珍しいです。ほとんど安全なんか考えていない状態と言えるかも知れません。

それなのに滞在中、一度も救急車を見もサイレンを聞きもしなかったのは不思議です。聞けば、あることはあるものの、救急車は有料で、呼んだ人がまず支払わなければならないので、あまり出動しないようです。事故は少ないと言いますが、軽微な接触事故などは起きていそうです。道路上で言い合っている姿は2度ほど目撃しました。

駐車車輌もなく走りやすいが、歩行者は?

一方、路上駐車は驚くほど少なく感じます。取り締まりも厳しいのでしょうが、クルマをスムーズに流すことを重視しているようです。そのためか、写真のように歩道が駐輪場と化し、歩行者が全く通れない状態になっている場所も少なくありません。やはりクルマ優先のようです。

木陰だからいいようなものの..

もちろん、線がひいてあって路上駐車出来る道もあります。写真の右端に見える係員がパーキングメーターの役割をしており、100メーターおき位に座っています。クルマを停めると素早く近づいてきます。

様々な車輌が混然一体となって流れている

自転車レーンにしても、バイクと自転車が一緒です。スムースに流れていればいいですが、中には逆送するエンジン付きバイクもいますし3輪なども多く、慣れれば違うのでしょうけど、けっこう神経を使いそうです。ただ、こうした中では電動自転車もそれなりに有効かなとも思います。体力のない高齢者でも流れに沿って走行する助けになりますし、エンジン付きのバイクと混在するには、逆に安全性が高まるのかも知れません。

現地の中国人に聞くと、度胸のある人の勝ちと言っていましたが、クルマ優先には間違いないそうです。その中国人が日本へ行った時には、クルマが歩行者に進路を譲っていたので驚くと共に感動したと言っていました。

さすがに最近、歩行者を保護する法律も出来つつあるようですが、わずか2年前からのことだそうですし、まだまだ守られていません。敷地から歩道を横切って道路へ出るような場合でも、驚きますがクルマが優先です。歩行者は待たなくてはなりません。飛び出そうものならクラクションを鳴らされます。

上海の人は、地下鉄に乗るような場合でも、どんどん割り込んで来ますし、降りる人の前に乗り込もうとします。女性トイレが満員で待っていても、個室が開いた途端、後ろから素早く飛び込む人も多く唖然とすると言います。エチケットもマナーもありません。言わば、強いもの勝ちです。

商売でも平気で5倍くらいの金額を吹っかけますし、中国人同士でも他人のことなど一顧だにせず、自分のことしか眼中にないように見える事例にも少なからず遭遇します。もちろん、親切な人や分別のある人も多いとは思います。もともと多民族国家ですし、日本人の感覚とは違うのでしょう。

多くの地域から上海に人口が流入し、膨張しつつある時期だから、モラルが形成されにくいことも考えられます。日本の過去を考えても、急成長するエネルギッシュな社会につきものと言えるのかも知れません。しかし、いずれにせよ日本や欧米では交通弱者が優先ですが、中国では、まるで逆です。より強い者が優先というシステムです。少なくとも現在の街中では、そうなっています。

私も初めて中国を訪れたわけではありませんが、見た部分は全体からすれば僅かです。それをもって全体を断ずるつもりはありません。しかし、私はそんな印象を受けました。日本の社会や都市システムにも問題は多いですし、文句も書いています(笑)。でも率直に言って日本のほうがいいなと思いました。今回、逆に日本の良さも再確認した気がします。



親王殿下ご誕生、おめでとうございます。誠におめでたい明るいニュースですね。

先月25日に記事を更新した後に出かけたので、その後の記事は中国から更新していたのですが、ネットにも問題なく接続できました。後半、ちょっと日本語入力の調子が悪くて日本の文字が打てなくなり、カット&ペーストでコメント入力したりしましたが、日本にいるのとほとんど変わりませんでした。

ただ、詳しく調べたわけではありませんが、接続するサイトによっては、なぜか必ずエラーになってしまうなど、やはり全てのサイトにフリーに接続できる状況ではなかったような感じがします。少なくとも、この「サイクルロード」は中国からでも問題なく見られますが..(笑)。

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この記事へのコメント
トラックバックありがとうございます♪
東京と似た街並みなのに車道を普通に自転車が走ってるところが面白いですね(^_^)

トラックバックカフェでは毎週水曜日に新しいテーマがスタートしています。 ぜひこちらでもお話を聞かせてくださいね♪
Posted by Wasabi at September 07, 2006 21:22
Wasabiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに街並みは東京と似ていますね。しかし、どちらかと言えば、歩道を自転車が走っている東京のほうが、世界的に見れば珍しいと言えるようです。少なくとも先進国の外国人から見ると、自転車が車道を走らないのは異様な光景に見えるそうです。
Posted by cycleroad at September 08, 2006 20:16
 
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