December 08, 2006

サイクルトレインが通る場所

鉄道会社にとって自転車と言えば、駅前の放置自転車がまずイメージされそうです。


特に都市部や近郊住宅地とを結ぶ鉄道会社にとっては頭の痛い問題でしょうが、日本全国を見渡せば、そんな鉄道会社ばかりとは限りません。中には営業戦略として、いかに鉄道と自転車を組み合わせるかに腐心する会社もあります。

鉄道会社と自転車の関係で言えば、列車に自転車を持ち込む「サイクルトレイン」があります。継続して実施している鉄道が十数社、季節などを限って実施する鉄道も合わせれば、その倍以上あります。顧客サービスなど地域の事情もありますが、積極的に乗客を集めるために自転車利用をアピールする会社もあります。

基本的に乗り継ぎを別とすれば、乗客の目的地はその沿線です。しかし、自転車と組み合わせれば、駅を降りて更に広い範囲の場所が目的地になりえます。電車と自転車を使ってなら、隣町の大型スーパーに買い物に行けるとか、通院に使えるとかいった潜在的な需要を掘り起こせるかも知れません。

線路でサイクリングここで個々の例は挙げませんが、クルマの利用と競合したため、利用者が減って廃線の危機にあった路線が、自転車をそのまま持ち込めるサイクルトレインなどによって需要が喚起され、とりあえず存続することが出来た例もあると聞きます。

平日だけでなく、休日の乗客を増やす路線もあります。サイクルトレイン以外にも、レンタサイクルなどと組み合わせて、電車だけでは不便だった沿線の観光地を効果的に巡れるようにしたり、幹線道路の渋滞を避けて時間の短借が図れることをアピールするなど、営業収入の拡大につながった路線もあるようです。

先月、またそれらとは違った形で自転車を使ったイベントが鹿児島のJR九州の車輌基地で開かれました。それは、なんと軌道自転車です。鉄道の線路を自転車で走るという体験はなかなか出来ません。南日本新聞の記事に、そこまでは書いてありませんが、もし踏切で遮断機まで下りてノンストップで走れるのであれば、更に爽快かも知れません(笑)。

レールマウンテンバイクところで、いろいろな努力をしても、過疎化や高齢化など沿線人口の変動や、競合する交通との関係などによって利用客が漸減し、廃線に追い込まれる路線は少なくありません。今までにも数多くの路線が廃線となってきましたし、現在その危機感を深めている路線もあります。

その中の一つ、先月末で廃線となったのは、岐阜県飛騨市と富山市を結ぶ神岡鉄道です。最近の乗客数は一日わずか30人ほどだったそうですが、廃線が迫った先月の週末は一日900人を超え、廃線イベントでは3千人が別れを惜しんだと言います。

鉄道の廃線は珍しくありませんが、この神岡鉄道、実は廃線後の線路活用案がユニークです。なんと「レールマウンテンバイク」と名づけられた軌道自転車を走らせようと言うのです。許認可、安全の確保や経費など、まだ解決すべき課題はあるものの、実現したら他に類を見ない構想です。

軌道自転車渓谷美が楽しめたり、トンネルや鉄橋を通るスリルまで味わえると言います。観光客に大人気となるのは間違いないところでしょう。台車に固定されたマウンテンバイクを二人でこぐ形ですが、列車独特の「ガタン、ゴトン」という音や振動も楽しめるそうで、鉄道ファンにもアピールするかも知れません。

廃線になった後、レールを撤去し舗装して、サイクリングロードになる例は各地にあるようですが、レールを残したまま自転車というのは聞いたことがありません。安全性や維持メンテナンス、交通としての活用を考えればサイクリングロードのほうが上でしょうが、観光の目玉としての希少性や話題性ではかないません。

軌道自転車というのは、ある意味盲点をつかれたような感じです。今までになかった交通手段とも言えます。さすがに、そう簡単には各地の廃線跡に普及しそうにありませんが、神岡鉄道で実現したら、これこそサイクルトレインと呼ぶべきかも知れません(笑)。



昔、映画に出てきた、シーソーのような取っ手を二人でこいでレールの上を進む台車と言うか、人力のトロッコのような乗り物を見て、強烈に乗ってみたいと子供心に思った記憶があります。何の映画だったか忘れてしまいましたが..。

ところで、先日取り上げた「自転車の車道走行禁止問題」、まだ一部ですが、憤りや心配する声が広がっているようです。昨夜、お聴きになった人もいるでしょうが、TBSラジオのトーク番組のテーマに取り上げられ、疋田さんもゲストで出演していました。

また、疋田さんも理事を務めるNPO「自転車活用推進研究会」にも動きがあるかも知れません。NPOを主催する小林成基さんが、先日の記事のコメント欄に書き込んで下さいましたので詳しくは前回の記事のコメント欄を見てください。疋田さんもメルマガで触れています。まだ、この問題自体も含めてどうなるか分かりませんが、個人的には期待したいです。

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この記事へのコメント
nob06です。この試み、面白いですね。これでバイクロードも併走して走らせ、各駅をバイクステーションにしてカフェとかやれば、たぶん行きます。私。通行料ちょいとればいいんですよね。
あ、思いついたけど、線路の脇ってスペースあるので、バイクロードを張り巡らせますね。鉄道だから、勾配も急じゃないし。あ、トンネルや鉄橋は通れないか。いや作ってもらって、金出して走ればいいな。いけそう(笑)
Posted by nob06 at December 10, 2006 16:30
nob06さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も実現したら、是非乗ってみたいとは思うのですが、ちょっと遠いのが難です。
道路をクルマでなく自分の足で走るのが楽しいわけですが、線路を列車でなく自分の足で走るというのも楽しいかもしれません。
鉄道と自転車、営業中だけでなく廃業後まで、ほかにも探せばいろいろな親和性があるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at December 11, 2006 01:09
係り様
 鉄道自転車に乗りたいのですが如何したらよいのですか教えて下さい。
Posted by 谷川 恭一 at October 12, 2007 20:05
谷川 恭一さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今のところ、国内で可能性のあるのは神岡鉄道の跡地でしょう。ただ、通年営業しているわけではなく、2007年も7月の10日間に限って試乗会イベントととして行われました。不定期のようで、次にいつ開催されるのかは、わかりません。問い合わせしてみてください。JR九州なども可能性はあるかも知れません。
飛騨市のページ
http://www.city.hida.gifu.jp/topics/2007/20070720_gattan/index.htm
〒509-4236 飛騨市古川町三之町2-20(社)飛騨市観光協会「レール・マウンテン・バイク係」TEL 0577-74-1192

Posted by cycleroad at October 13, 2007 23:01
 
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