January 01, 2007

日本の風土を守る文化と伝統

あけましておめでとうございます。


2007年が始まりました。今年も、この「サイクルロード」では、様々な角度から自転車の話題を中心に取り上げていきたいと考えています。日々の自転車ライフの参考にはならないかも知れませんが、雑談のネタにでもしていただければ幸いです。

割り箸さてお正月ですが、この時期、年末の忘年会から始まって年始の会席や新年会など、外食の機会も増える季節です。そんな席で無意識にも使っているのが「割り箸」です。お正月ということで、いつもより高級なものが出てくるかも知れません。しかし、最近あまり評判がよくありません。

使い捨ての割り箸は森林の伐採を促進するので、地球環境にとって良くないと考える人が増えているからです。そうした人の中には、「マイ箸」と呼ばれる自分用の塗り箸を持ち歩く人も出てきています。一部の著名人の中にもマイ箸の使用を公言する人があるようです。

確かに現状では、国産の割りばし4億5千万膳に対し、輸入の割りばしが254億膳と圧倒的な量であり、その輸入割りばしの99.7%が中国産です。中国では、シラカバなどを割りばし用に伐採して生産していますから、地球環境に対して悪い影響を与えていることは間違いありません。

その中国が、原木や原油価格の上昇を理由に一年ほど前、一膳約60銭から80銭へと急に3割値上げしました。実際には、経済成長に伴う中国国内での割りばし需要の急増という背景もあったようですが、これをきっかけに、大量に仕入れるコンビニチェーンが弁当への添付を見直す動きなどもあって、より割り箸に注目も集まったようです。

身近なところから、少しでも環境への影響を減らそうと「マイ箸」を持ち歩く人が出てくるのも不思議ではありません。また、レストランなどでは、こうした動きに敏感に反応し、割りばしをやめて塗りばしを消毒して何度も再利用するところも出ています。

端材から作られるこのような風潮の中で、割りばしが使い捨て文化の権化のように思っている人も多いわけですが、実は必ずしもそうではありません。もともとは、原木を建築材などに加工する過程で出てくる端材から作られていたのです。材木として使い物にならない部分、棄てる部分を利用して割りばしを作っていました。

つまり、端材を捨てるのはもったいないから割りばしを作ったわけです。残念ながら現在では価格競争力から中国の割りばしにはかなわず、56分の1の割合になってしまいましたが、国産の割りばしは、いわば日本の風土と伝統の中から生まれたものだったわけです。

1950年代までは建築材などの木材も9割は国産材でした。しかし山から運び出すコストの高い国産材は、あっという間に競争力を失って2割程度になり、山に放置されたまま間伐(間引きをすること)すらままならないのが現状です。林業人口の高齢化も進み、戦後植林された人工林の手入れも行き届いていません。

吉野などの割り箸
中国などの割り箸

間伐されずに日当たりが悪くなって、生育環境の悪化からスギが生物的な危機感を強め、大量に花粉を飛ばすようになったのが、昨今の花粉症激増の原因の一つとも言われています。また、日当たり悪化によって、下草や低木が育たなくなって土が流出し、保水力を失って土砂崩れの頻発にもつながっています。

わりばし林野庁では、これらの対策の一つとして、森林の間伐や育成に役立つ国産の割りばしを奨励しています。適切に管理された森林は二酸化炭素の吸収量拡大にも欠かせません。国産割りばしは、大雨による土砂災害などを防いで自分達の国土を守るだけでなく、地球環境にも貢献するわけです。

割りばしを廃止した飲食店では、お湯を沸かして洗浄し、乾燥、消毒、袋詰めなどの行程で、洗剤の量や使うエネルギーが増え、人件費も含め、かえってコスト高になる場合も多いそうです。ゴミになった割りばしを更にリサイクルする取り組みもありますし、一概に割りばしの廃止が環境負荷を減らすとは言えない状況です。

今のところ、中国での森林伐採につながることは間違いないので、マイ箸を持ち歩くことは間違っていません。でも一方で国産の割り箸を一膳5円程度で購入し、森を育てるために積極的に使おうという試みも広がっています。やみくもに割りばしを使わないだけが、環境貢献とは限らないわけです。

日本人は、昔から身近なものを上手に利用してきました。端材だけでなく竹とかヨシとかワラとか、燃やすしかないようなものでも工夫して使ってきました。竹垣、わら葺き屋根、畳、ヨシズ、すだれ、わらじ、ほうき、挙げればキリがありません。お正月の門松や松飾などもそうです。

最近は、昔ながらの雰囲気も薄れてきましたが、お正月は、日本らしさを特に感じる季節でもあります。身の回りからは廃れてしまったものも少なくありませんが、日本古来の伝統や文化に触れ、改めて日本の風土を守り、日本人の心として綿々と引き継がれてきたものを考えてみるにはいい機会かも知れません。



2007年は、どんな年になっていくのでしょうか。今年は少し新しいことも取り入れようかなと思いつつ、ぼちぼちマイペースで行きたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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この記事へのコメント
初めまして。さくらと言います。
恐れ入りますが、この記事にトラックバックさせて頂きました。ありがとうございます。お手数で無ければ、ブログ管理画面にて公開して頂けると幸いです。
Posted by さくら at February 05, 2007 10:14
さくらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ご丁寧に恐れ入ります。トラックバックを送っていただいたとの事ですが、こちらには届いていないようです。もともとトラックバックを拒否したり、承認した後に公開する設定にはしていないので、普通はすぐ反映されるはずなのですが、おかしいですね。
管理画面も確認してみましたが、間違いないようです。もしよろしければ、お手数ですが、再度トラックバックを送ってみて下さい。たまに、ブログサーバーのエラーの場合もあるようですので、そうした不具合かも知れません。
Posted by cycleroad at February 05, 2007 22:09
 
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