サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
January 04, 2007
自転車で復興支援と貧困撲滅
ふと気づけば、スマトラ島沖を震源とする大地震とそれに伴う大津波から、はや2年も経ちました。
2004年12月末に起きたこの大地震はマグニチュード9.3、阪神大震災の約4千倍という規模でした。インド洋沿岸の11カ国が被災し、死者及び行方不明者22万人以上、被災者200万人以上という未曽有の大災害の爪痕は今なお深く、復興は長い道のりとなっています。
世界規模の様々な支援活動が行われてきましたが、その中の一つに、
World Bicycle Relief
があります。自転車を通じた国際的な支援活動です。発展途上国における自転車は、しばしば先進国におけるクルマと同じくらい貴重ですが、単に被災者に自転車を贈って励まそうということではありません。
実は災害支援において、機動力はとても重要な要素です。特に地震や津波によってインフラが大規模に破壊された中では、物資やスタッフの移動にクルマが有効に活用できるとは限りません。日本でも、阪神大震災での教訓などから、自転車を災害対策用に備蓄する動きがあるくらいです。
広く分散した被災民への支援のためにも、安価でシンプルで燃料を必要としない自転車が、実は貴重な機動力となるわけです。通信が途絶した被災地域への連絡や、救援物資の集積所からの細かな運搬も含めて、被災地に自転車を提供することは、非常に有効な災害支援になります。
被災後の長期かつ広範囲にわたる支援活動においても、被災住民の治療や健康のケアなどを行う多数のスタッフの交通手段を確保するのは容易なことではありません。道路の復旧には時間がかかりますし、数や資金の問題もあります。何より燃料が、被災したり、インフラが未整備な地域では継続的に補給出来ません。
日本には自転車が溢れ、経済状況も違うので実感が沸きませんが、自転車は復興へ向けて住民の生活手段としても大きな力となっていきます。World Bicycle Reliefは、世界各国の多くの賛同者の支持にも支えられ、「自転車の力」を災害救援や復興支援、生活や自立支援という形で世界に届けているわけです。
この「ワールドバイシクルリリーフ」は地震や津波被害への支援も含め、ザンビアやルワンダ、ケニア、タンザニア、モザンビーク、エチオピア、レソトなどでも活動を展開し、貧困支援にも取組んでいます。また発展途上国におけるHIV・エイズ対策にも自転車を役立てています。
これらの国々の交通インフラの整っていない地域で、医療や教育などのスタッフの移動に使うことで、その行動範囲拡大や時間の短縮、運搬可能な荷物の増加などの形で大きく貢献しています。現地の人の経済的自立のためにも自転車は、維持が容易な交通手段、貴重な生活手段として大きな役割を担っています。
貧困にあえぐ人々の日々の食料確保も課題ですが、貧困からの脱出を目指すためには、長期的な視野から教育支援も不可欠です。日本では考えられないほど遠距離を通わなくては教育を受けられない子どもも少なくない中、自転車があって初めて通学が可能になるのです。
エイズ対策や孤児の支援、子どもたちの健康のケアや教育なども、その支援が本当に困っている人にまで到達しなければ意味がありません。自転車が医療支援や教育を最も困っている人々に届けると共に、スタッフの効率を大きくアップさせることで、結果として援助の規模を拡大させている事実も見逃せません。
この「世界自転車支援」、日本のサイクリストにもおなじみのメーカーである、SRAM社とTREK Bicycle社によって2005年に設立されたNPOです。他の団体とも協力して、津波の後、最も必要としている人々へ2万4千台以上の自転車を提供しました。
SRAMとTREKがメインとなって資金拠出や支援活動をリードしていますが、ほかにもお馴染みのメーカーが多数参加しています。Specialized、Cycle Europe(Bianchi他)、Giant、GT、Answer Products(Manitou他)、Shimanoなどです。
資金提供により自転車を提供するだけでなく、整備や補修への継続的な支援、専門のノウハウを活かした修理の訓練など、自転車メーカーならではの活動も行っています。もちろん、自転車会社及びその役員がリードしていると言っても、このプロジェクトを通して一切収益は得ていません。
自転車は私達のふだんの生活や健康の増進にも役立ちます。その利用が地球環境や省資源に貢献することも、誰もが理解します。あまり知られていませんが、世界では災害からの復興、貧困からの脱出、エイズ対策や、それを支援する人々の力としても、大きな役割を果たしているのです。
日本では、私も含めてお正月は食べすぎた、という人も多いことでしょう。こういう話を見聞きすると、改めて平和で繁栄した国の有難みを感じます。日本にだって嫌なことは沢山あるでしょうが、何と言っても食べるものもなく、平均寿命が40歳代とか30歳代という国とは比べようもありませんね。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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