January 19, 2007

将来への漠然とした不安の素

今は冬だからという理由もありますが、以前と比べて自転車に乗る子どもを見る回数も減りました。


もちろん、テレビゲームなど遊び方が変わって、外に出なくなっているのも理由だと思いますが、少子化の進行に伴って、そもそも子どもの数が少なくなっているのも確かなのでしょう。少子化や将来への不安が叫ばれて久しく、もはや当たり前のようになって麻痺に近い感覚の人も多いのではないでしょうか。

少子化対策についての議論は、広範囲な分野にわたり、さまざまな見方もあって非常に難しい問題です。海外では効果をあげている国もありますが、宗教や歴史的な成り立ちを含めた国や民族の倫理観や、人々の社会的価値観の形成などさまざまな背景があるので、一概に見習えばいいというものでもありません。

福井県の少子化対策昨年の出生率が、わずかに上昇に転じる見込みとなったことも報道されており、これが政府の少子化対策の成果であると担当大臣は主張しています。しかし、今年以降はあたたび下降すると予想されていますし、団塊ジュニア世代の結婚や出産による一時的現象と見るほうが自然でしょう。

担当相は、日本の出生率が低い要因として、女性が出産すると働き続けられない社会をあげています。男女共同参画担当相でもあるからでしょう。確かにその通りだと思います。そのこと自体は間違っていると思いませんが、全体の論理としては、やや疑問に感じる部分もあります。

出生率が低い国に共通するのは、家父長制的な社会の仕組みの名残りがあり、女性の立場が弱いことだと発言しています。儒教の影響の強いお隣り韓国などを見てもそうですし、一見正しそうです。しかし、出生率の高いイスラム諸国やアフリカ諸国などを見れば、女性の立場と出生率に相関関係は見出せません。

日本の事情に限って議論するならともかく、世界の状況を理由に少子化の原因を主張するのは論理に無理、というより事実誤認があります。単純な問題でないことは誰でもわかっていますが、あまり少子化の原因を決めつけたような主張や、その理由にこだわった少子化対策に偏らないほうがいいのではないでしょうか。

交際している異性は担当相は政治主導を声高に強調していますが、政府の新・少子化対策を見ると、従来の官僚主導の財政支出を積み増しただだけのような対策、負担の軽減や助成金が並んでいます。放課後子どもプランとか、学生ベビーシッターの推奨、スクールバス導入といった独自策もありますが、大きな違いではありません。

つまり、子育て支援、子どもを生んで働く女性支援を重視する内容となっています。しかし少子化の要因としては、例えばよく言われるように、生む子どもの数が減っただけでなく出産年齢の女性の非婚化や晩婚化の傾向があります。こうした面への対策も重視すべきではないでしょうか。

少し前に、福井県が日本で唯一出生率が上がっていると報道されました。福井県は、もちろん子育て支援対策も手厚くしましたが、県が主催したお見合いパーティや、県の要請で、「おせっかいおばさん」として中高年の女性が適齢期の男女の情報収集やお見合いの世話をするなどの対策を進めて効果をあげたそうです。

三世代同居が多いなどの事情もありますが、子育てに対する直接的な支援だけでなく、共働きへの支援や父親の育児参加など、女性が働くための環境整備から、結婚を増やすための対策や、それを促すための仕組みづくりまで、幅広い取り組みをしています。

お見合いパーティー盛況独身男女へのアンケート調査などを見ても、機会があれば結婚したいという人は多いですし、結婚したくないと考えている人ばかりではありません。お見合いパーティなどの方法論はともかくとして、結婚する人を増やす取り組み、知り合うキッカケを増やす支援も有効なのではないでしょうか。

ホワイトカラーイグゼンプションを今国会の提出法案へ盛り込むのは見送られましたが、この政策が長時間労働を助長するとの見方は少なくありません。有識者の中には、少子化対策のためには残業をゼロにするのが有効だと主張する人もいます。プライベートな時間を確保しづらいことが結婚が遅らせるとの理由です。

残業が減ったからといって結婚するための行動をする人が増えるとは限りませんし、経済界からすれば暴論です。でも少子化対策の観点から労働法制を考える面があってもいいはずです。残業以外にも、晩婚化非婚化対策として、まず結婚しようとする人達への支援のあり方についても考えるべきではないでしょうか。

考えてみれば、少し前までは息子や娘のために、お見合い写真を集めてくる親は大勢いました。もちろん今だっていますが、社会の風潮として、昔ながらのお見合いの形式を敬遠する人が多くなり、それを仲介する世話好きの人も減っています。

親としてみれば、早く結婚してもらいたくても、本人に口うるさく言うくらいしか方法がないのも事実です。本人は、いい人がいればと鷹揚に構えていますが、親は何とか結婚させたがっています。ならば、こうした親を応援する仕組みがあってもいいかも知れません。

プロフィールが並べてある中国などでは、自分の息子や娘の結婚相手を親が捜すことも多いそうです。以前から聞いていましたが、昨年中国へ行った時には実際にも見ました。北京にある天壇公園は、大きくて綺麗な有料の公園なのですが、その敷地内の一角で、集まってきた親たちが、子どものプロフィールを書いた紙を地面に並べているのです。

それを見てまわる親もいます。中国と言っても、昔と違い今は男女が知り合う機会も無数にあります。それでも熱心に親が子供の結婚相手を探しているのです。無論、他の方法でも探すわけですが、この公園で紙を置く方法は、知り合いのツテでなく、全く見知らぬ相手と全くの偶然に知り合う機会でもあります。

こうした方法、日本では成り立たないかと言えば、そんなことはありません。結婚する本人であっても、自分で知り合う機会を作るのが苦手な人もいますし、地域によっては物理的に難しいこともあるでしょう。中には、様々な面で自分にコンプレックスを持ってしまう人もいます。

マスコミが伝える恋愛の情報は多いですが、そのイメージにとらわれたり、プレッシャーになってしまう人もあります。交際を断られて傷つくことを恐れ、行動する前に諦めてしまう人、いい人と巡りあえないかと待つだけになってしまう人もいます。いい悪いは別として様々なタイプの人がいるわけです。

親が捜すのが良いとは言いません。自分で見つけたい人もいるでしょうが、キッカケの一つと割り切ればいいことです。街で声をかけても、まずお互いを知るチャンスが無ければ、なかなかその先も進まないでしょう。例え親が見つけた人であっても、それをキッカケに付き合ってみれば気が合うことだってあります。

中国は北京の天壇公園にて実は、見知らぬ親同士が集まって情報交換をする「代理お見合い」、まだ件数は少ないものの、すでに日本でも行われているそうです。心配する親御さんも多いからか、こうしたイベントは徐々に広がっていると言います。もちろん最終的には本人同士の問題ですが、まず知り合う機会を増やす必要はあるでしょう。

少子化対策は、遠い将来の世代の話ではありません。第2次ベビーブーム世代が30代のここ数年が勝負という声もありますが、将来に禍根を残すだけではありません。年金や福祉なども含め、将来への希望が持てないことは、様々な形で、「現在の」私達の生活にも影響を及ぼします。

少子化対策は難しい問題です。もちろん個々には、結婚するのも出産するのも本人の問題ですから、他人がどうこう言う問題ではないわけです。政策にケチをつけたからと言って、どうなるものでもありません。でも国や自治体に任せっきりでいいのでしょうか。

自分の生活には関係ないと考える人もいますが、少なくとも日本に住む人なら影響は免れません。福祉などの社会コストとしての税負担だけでなく、治安や雇用、景気など社会全般に密接に関わってきます。誰でも他人事ではなく、無関心であるべきではないでしょう。

男性の育児参加や、育児中に孤立しやすい母親への理解など、私達に出来ることもあるはずです。交通機関で席を譲ってくれた、ベビーカーを運んでくれた、子どもをあやしてくれた、子どもが騒いでも暖かく見守ってくれたなど、育児中の母親は世間での小さな心遣いがありがたいと言います。

小さなことでも、一人が行動すれば、それに共感する人へと広がっていくこともあるでしょう。国の財政支出も大切だと思いますが、結婚や育児への関心や社会全体の意識も変わっていかなければ、上向くものも上向かないのではないでしょうか。



子どもが巻き込まれる事件や事故、虐待にいじめ自殺..。今年も繰り返されていくのでしょうか。

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