全国には、大学へ自転車で通う学生も大勢いることでしょう。
郊外に立地するような広大なキャンパスを持つ大学なら、学内の移動にも自転車が使われていたりします。全学生あわせると、かなりの人数になる大きな大学もありますから、中には学内における放置自転車が問題になっているところもあるようです。
どうしても卒業生が置いていってしまうので、それならその学内用の自転車をリフレッシュし、新入生に受け継いでもらおうと、学生自ら整備して再利用に取組んでいるという話も聞いたことがあります。山口県立大学では、
修理した学内放置自転車を、留学生などに無償で使ってもらっているようです。
毎年廃棄処分される自転車がもったいないと、教授が演習の一環として取り組み始めたそうですが、学内には「自転車工房」という看板を出し、学生が整備や部品の交換、塗装までして再生させていると言います。ごみの減量に貢献すると共に、地域と大学の連携にもつなげて行きたいと考えているそうです。
この記事を読んで思い出したのは、スウェーデンの
クローナンという自転車メーカーの話です。日本では、どうしてもリユース、リサイクルやボランティアといった話が多いのですが、スウェーデンでは、学生の自転車修理が自転車メーカーにまで成長しました。
スウェーデンのウプサラという大学都市は、自転車の街としても知られています。1997年、この街で3人の学生が、スウェーデン陸軍払い下げの安い軍用自転車を修理しては友達に売っていました。最初は小遣い稼ぎでしたが、次第にその無骨でシンプルなデザインが学生達を中心に評判を呼ぶようになりました。
ついには、一日に100台も売れるようになったというのですから、大したものです。しかし、修理に手間がかかるのもさることながら、仕入れである払い下げの軍用自転車の確保も難しくなりました。そこで、この3人の学生は、この自転車の設計図を手に入れ、改良して生産を始めたのです。
元は1942年の設計と言いますから、第2次大戦中のものです。その形は、ほぼそのままに、軽量化や使い勝手を向上させ、「クローナン」という独自のブランドとして発売しました。それが10年経った今では、スウェーデン国内のみならず、ヨーロッパをはじめ世界各国で売られるまでになっています。
私も実物を、どこかの自転車展で見たことがあります。日本にも一部輸入されていますが、あまりメジャーな存在ではありません。しかし、軍用自転車の質実剛健な雰囲気がかえってオシャレと感じるのか、ガッシリとして実用的なところが評価されているのか、ヨーロッパでは一定の人気を得ているようです。
レディスモデルもありますが、メンズは、ほぼオリジナルの軍用自転車に近い形だそうです。特徴的なのはナンバープレートです。ミリタリーバイク時代から受け継がれたものですが、生産ナンバーが入るので、同じ番号のナンバープレートは1枚しかないわけです。
軍隊時代はともかく、ナンバープレートをつける意味はありません。しかし、わざわざナンバープレートをつけることで、世界で一台しかないという事実が改めて認識され、愛着を生む効果もあるようで、人気の秘密なのだそうです。他社の自転車にも車台番号はありますが、うまい演出と言えそうです。
もう一つ特徴的なのは、ナンバープレートの左上についている丸いキャップを外すと、中からタイヤ用のポンプ、空気入れが出てくることです。キャップが無くならないように、チェーンが付けてあるのも実用的ですが、もともとフレームのパイプは中空なのですから、空気入れの収納にはうってつけです。
ママチャリに乗る人の中には、ポンプまで持ち歩かなくても、と考える人もいるかも知れません。でもスポーツ車に乗る人なら、乗る距離も違いますので、パンクに備えてパンク修理セットを持って乗る人は多いでしょう。当然インフレーター、空気入れが無くては修理できませんから、携帯用のポンプも持って行きます。
駅や学校までの通勤通学用の自転車には不要かも知れませんが、空気圧を点検せずに出かけ、途中で空気不足に気づくことも多いはずです。実際に不足している人もかなり見ます。乗り心地だけでなく、パンクもしやすくなりますので、この機構、ほかのシティサイクルに取り入れてもいいのではないでしょうか。
自転車の種類はたくさんありますが、日本では圧倒的な割合をママチャリが占めています。そのママチャリも最近は量販店で売られるようになって、低価格化の方向が顕著です。大量生産のため個性や無駄を省いてコストダウンされ、デザイン的にもみな同じように見えてしまいます。
安くなることは必ずしも否定しませんが、安全性が軽視されたり、本来の機能や快適性が損なわれ、自転車の楽しさが失われれるのも困ります。使い捨てのようになれば、放置自転車問題にも拍車をかけます。シティサイクルの中でも、もっと個性的な自転車や、安さ以外の違った価値観の自転車が欲しい人もいるはずです。
当然、愛着のわく頑丈な自転車を、修理しながら長く使いたい人もいます。クローナンの大ブレイクにも、同じような背景があるのかも知れませんが、日本のシティサイクルが安さ一辺倒に偏っているとするなら、安いばかりでない新しい方向性が出てきても良さそうです。
いつ何がブレイクするかは分かりませんが、機能やデザイン、耐久性や使い方など、今は気づいていなくても、何か新しい提案によって、人々の潜在的な意識が顕在化することもあります。もしかしたら、新しい自転車のムーブメントは、日本でも自転車に親しむ大学生の中から出てくるかも知れません。
明日は立春ですか。やっと本格的に雪になったところもあるみたいですが、今年は暖かいですね。このまま春になりそうな気がしてしまいます。
今日は節分です。節分と言えば豆まきだったはずが、最近は恵方巻って言うんですか?あの太巻き、関東地方のスーパーなどでも売られていますね。もう百年の伝統と言わんばかり、当たり前のように..(笑)。
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大学の研究室や、学内ベンチャーなどが生み出す新しい技術もある。
ギョッとさせれば効果も高い
もちろん中には、騒ぎを起こしてしまう大学生もいたりするわけで。
Posted by cycleroad at 23:30│
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