大阪市のホームページには、「不要不急の 自転車利用はやめましょう。」と書いてあります。
正確に言うと大阪市のホームページのトップからたどった
大阪市建設局のページですが、「不要不急の 自転車利用はやめましょう。800メートルであれば歩いても10分程度しかかかりません。」と書かれています。不要不急の「クルマ」かと思えば、そうではありません。(追記:現在はHPがリニューアルされて、
こちらなどに表記が。)
放置自転車対策の項目の中の文言ですが、利用マナーを呼びかけるならともかく、「自転車に乗るな!」はないだろう、という気もします。今どき、地球環境や渋滞を考えるなら、不要不急のクルマこそやめるよう呼びかけ、代わりに自転車を奨励しても良さそうなものです。
自転車乗りにすれば、自転車を目の敵にする行政当局の気持ちを雄弁に物語るフレーズにも思えてくるのは、穿った見方でしょうか。クルマ中心の都市構造や道路行政のしわ寄せが放置自転車を生み出している面もあるのではないか、と文句の一つも言いたくなるところです。
しかし、放置自転車対策に頭を痛める担当部局にしてみれば、大阪市内の駅周辺などに毎日大量に押し寄せる自転車を前にして、なるべく自転車に乗るなと言いたくもなるでしょう。マナーをわきまえない利用者のあまりの多さに、そうした気持ちになるのも解からないではありません。
もちろん放置自転車、迷惑駐輪に悩まされているのは大阪市に限らず、全国の都市部の多くに共通の課題です。各地で様々な対策がとられていますが、撤去と放置のイタチゴッコは続いています。多くの場所で歩行者の通行を妨げ、街の景観を損ない、周辺の商売の邪魔をし、緊急車輌の通行に支障を与え、自転車盗を誘発すれば周辺地域の治安の悪化にもつながります。
廃棄代わりや盗難されて置き去りにされる所有者不明の自転車もあると思いますが、仮に自治体が対策として、駅周辺などに駐輪場を整備しても、遠いとか面倒くさい、利用料を払いたくない、などの理由で駐輪禁止区域に迷惑駐輪する人は後を絶ちません。半分撤去覚悟の確信犯も少なくなさそうですし、利用者のマナー向上に事態の打開を期待するのは非常に難しい状況です。
利用者のマナーが悪いのは間違いありません。不便であっても社会のルールですから、それを守らない人の自転車が撤去されても文句は言えないでしょう。正しく駐輪場を利用している人にしてみれば、一部の不心得な利用者のため、放置自転車の撤去費用を税金として払わされたり、全ての自転車が悪く見られるのも迷惑な話です。ただ、そうした原理原則だけでは、撤去と放置の追いかけっこが一向に決着しないのも事実です。
全国の自治体を悩ます問題を、軽々しく結論付けるつもりはありません。しかし、各地の取組みなどに注目して見ていますと、私が思うに一番効果的なのは、至極当たり前のことですが、
なるべく便利な駐輪場を整備し、しかも無料開放することに尽きる気がします。
「駐輪禁止区域を制定し、違反者は撤去で望む。」という正攻法だけでは、なかなか解決に至りません。自転車に乗るなとか、駐輪するなと言うのは無理です。駐輪が防げないとするなら、通行の邪魔にならないよう、駐輪場へ収容するしかありません。そして便利で無料にして利用してもらう努力が必要です。
図書館や保健所の整備、ごみ収集などと同じように市民生活に必要なのですから、市民サービスとして駐輪場の整備が筋とも言えます。利用されなければ元も子もないので無料もやむを得ません。放置自転車撤去対策費用などを考えれば、無料は必ずしも無理ではないでしょう。現にそうした自治体も出てきつつあります。
でも一番の問題は、当然ながら駐輪場の土地の確保です。駅前の一等地に確保するのは、もちろん容易なことではありません。そこでこの
Bike Treeはどうでしょう。このBike Tree、まさに「自転車の木」と呼べそうなツリー型駐輪機です。自転車を縦に収納することで投影面積を減らしています。
サイトの動画を見ると一目瞭然ですが、フックに前輪を引っ掛けると、木の幹に沿って上の方へ自転車を引き上げてくれます。傘のような部分に収納されますので邪魔にならず、雨にも濡れず、街の景観も損ないません。盗難にも強く、なんと言っても立体的に土地が利用できて設置スペースが小さいのが利点です。
動力はソーラーパネルで発電され、鍵にはスマートカード技術が導入されています。防犯カメラもついており、街全体の駐輪システムと無線ネットワークを通じて接続します。誰でも使いやすく、カサの部分には広告を入れることも出来ます。もちろん係員も不要で365日24時間稼動出来、屋内にも設置可能です。
こうした駐輪機で土地を立体的に使えば、駐輪場の土地問題も、ある程度解決できるかも知れません。一台毎の設置面積は小さいので、それこそ街路樹や電柱、街路灯などが使う歩道の一部でも設置できるでしょう。また、街中に分散して駐輪機を設置することで、利用者の集中を避けつつ、利便性も増します。
このバイクツリーが街中のあちこちに立っていれば、遠い駐輪場まで行かなくても、用事のある店の最寄のツリーに停められて便利です。何しろ一台ごとは小さい面積ですから、ちょっとした公共のスペースの今まで使えなかった部分、余った部分を上手く活用する道が開けそうです。
初期投資はある程度必要になりますが、自治体によっては億単位の費用を必要とする、毎年の違法駐輪対策費用を考えれば、ペイできる可能性があります。なにしろ土地の買収でなく、公共のスペースの有効利用ですので、土地代は大幅に低減できるはずです。むろんカサの広告収入を期待する手もあります。
日本の技術力をもってすれば、このバイクツリーの幹の部分をもっと細くすることも出来そうです。本当の街路樹の幹を巻くような形で設置するのも難しくはないでしょう。街路樹の枝葉の中にカサを収納できれば、更に景観を損なうことがありません。
場所によっては、ツリー型である必要もありません。この円筒形を展開すれば平面型にも出来そうです。ガードレールの上とか遮音壁に沿って、あるいはビルの壁面などに設置する形も考えられそうです。イメージ的には、ビルの1階と2階の間の「ひさし」か屋根や看板の中に収納する感じになるでしょうか。
もちろん利用は無料にすべきです。一回当たりは僅かな額だとしても、自転車に乗って、あちこちの店に寄るたびに駐輪代を払っていればバカになりません。例えてみれば、あちこちの傘たてを利用するたびに料金を取るようなものです。長時間一箇所に駐輪する人ばかりとは限らないのです。
利用は無料だけど、最寄のバイクツリーへの駐輪は義務付ける。そして、誰でも当たり前のようにバイクツリーを使うようになっていけば、放置自転車の解消も夢ではないかも知れません。電話ボックスも減っていますし、電柱の地中化などが進めば、意外にスペースもあるのではないでしょうか。
もし、そんな都市が日本各地に実現していったら、もう誰も「自転車をとめる」とは言わなくなるのでしょう。「自転車は吊るす」が常識になるかも知れません(笑)。駐輪機ならぬ、吊輪(ちょうりん)機が当たり前の世の中、出来るものなら見てみたいものです。
世界の潮流としては、渋滞の緩和もあって、街の中心部にクルマを乗り入れさせなくするという考え方も広まりつつあるようです。クルマを締め出したスペースを利用すれば、この「木」を植える場所には困りません。大規模な「森」だって出来るかも知れませんね(笑)。
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常に走っているわけではない
少しずつ駐輪機の設置も増えているようだが、まだまだ少ない。
まだまだ道のりは長そうだが
悪化し続けている放置自転車対策だが、頭打ちの兆しもあるようで。
知らずに出来ている優先順位
駐輪場は余った場所に設置するのが当然という思い込みはないか。
遊び心から生まれてくる明日
このページの下の方に出てくる駐輪機もバイクツリーに似ている。
全く、建設局は一体、何を考えているのでしょうね。市政も府政も、あれだけ裏で税金を好き勝手に使いながら、自転車に乗るなとは大阪市民として呆れて物も言えません。そして、大阪はもとより日本においても、このBikeTreeのような機能性の高い駐輪スペースを企画するような行政は無いのでしょうか。管理人さまがおっしゃるように、無料で開放すべきではありますが、逆にロードやMTBに乗る人の中には、有料でも安心して停めていられる場所が欲しいと願っている方も多いと思います(私もその1人です)。
safe turnですが、決済して一週間が経ちますが、今のところ何の気配もありません(汗)…。まあ海外なので色々と時間は掛かるかと思うのですが、、、果たして無事に届くのか…。safe turnが届いたあかつきには、Down Glowにも挑戦したいですね。