無いに越した事はありませんが、自転車に乗っていればアクシデントは起こりえます。
交通事故のような重大事でなくても、何らかの原因による「落車」や出会い頭の衝突といったアクシデントもあります。ある程度以上スピードが出ていて転倒すれば、骨折などの怪我、運が良くても打撲やすり傷は避けられないでしょう。
救急車を呼ぶケガではないけれど、スリ傷を負って血が出たとします。傷の程度によっては、そのまま走行してしまう人も多いと思いますが、とりあえず応急手当くらいしたいところです。近くにコンビニでもあって薬などが手に入るなら、傷を洗って泥などを落とし、消毒してガーゼなどを当てるのが普通でしょう。
そこには、次のような常識があると思います。
●傷口は清潔にし、まず消毒しなければいけない。
●消毒しないと化膿することがある。
●化膿してしまったら消毒しなければならない。
●傷口には清潔なガーゼなどを当てるのが好ましい。
●傷口は風呂やシャワーなどで濡らさないほうがいい。
●カサブタは、傷が治るときに出来る。出来たら治る。
何を今さら..ですが、この常識が全て間違っていると言ったら驚く人も多いのではないでしょうか。後述する専門家によれば、おそらく現役の医者や看護師の多くも、これらの常識は当然と答えるだろうと言います。つまり、多くの医療従事者が間違った知識を持っていると言うのです。下が、正しい知識だそうです。
●傷は消毒してはいけない。消毒は傷の治癒を遅らせ妨害するだけの無意味で愚かな行為である。
●消毒しても傷の化膿は防げない。傷の化膿は別のメカニズムで起こっている。
●化膿した傷を消毒しても、治療効果は全くなく無意味である。
●傷(特に皮膚欠損創)にガーゼをあてるのは、創治癒を遅らせる行為である。
●傷はどんどん洗ったほうが良い。傷の化膿の予防や、治癒の促進にも最も効果がある。
●痂皮(カサブタ)は傷が治らない時、治癒がストップしているからできる。治癒の大敵である。
これは、写真のような著書があり、湿潤治療を啓蒙されている夏井睦さんという
形成外科の医師のサイトに書いてあります。(興味のある方は、本の写真をクリックすると、アマゾンのサイトに飛びますので、その書評も参考になります。イラストをクリックすると、ラップを使う傷療法のPDFにリンクします。)
消毒する時もシミますが、傷口にガーゼが張り付いて痛い思いをすることも多いでしょう。必要ないのに、わざわざ痛い思いをしていたことになります。お風呂で濡らさないようにしたり、カサブタは治る兆候と思っていたのは根本的に間違っていたわけです。
もちろん私は専門家ではないので、医学的には断言しかねますが、他のいろいろなサイトを見ても、従来キズの治療の常識と考えられてきたことが、180度変わりつつあるようです。湿潤療法、モイストヒーリングなど呼ばれています。少し古いですが、
日経のサイトの記事がまとまっているので引用します。
キズ治療の新常識は「消毒しない」「乾かさない」 2005年05月16日
消毒してガーゼを当てる――。ケガをしたときに、これまで当然のように行われていた処置だが、最近この治療の常識が覆りつつある。実は、キズを消毒してガーゼを当てるという処置は、かえって痛みを伴い、キズの治りも遅くするというのだから驚きだ。
キズの新しい治療法の考え方はいたって簡単。「消毒しない」「水道水でよく洗う」「乾かさずに覆う」の3つの原則を守るだけだ。なお、キズを覆うのに使うのは、ガーゼではなく、“ハイドロコロイド素材”といって、床ずれの治療などで医療用に使われている皮膚保護剤だ。
キズをよく洗った後、ハイドロコロイド素材を当てて、絶対に乾かさないようにしておく。これだけで、痛みも少なく、早く治るのだという。しかも、キズあとが残りにくいというメリットさえある。では、なぜ消毒やガーゼはいけないのだろうか。これにはいくつか理由がある。
まず、キズが治る過程には、キズ口からしみ出てくる体液(滲出液)に含まれる“細胞成長因子”という成分が欠かせないということ。つまり、ガーゼを当てると、せっかくの滲出液が吸収されてしまうので、治癒が阻まれてしまうというわけだ。
また、ケガにより欠損した皮膚は、キズの中を上皮細胞(表皮になる細胞)が増殖・移動することで再生する。このとき、湿った環境にある方がたやすく移動できるので、なめらかな皮膚が早く再生されるそうだ。
ガーゼを当ててキズ口を乾かすというこれまでの治療では、上皮細胞の移動も阻まれるため、再生は遅れ、キズあとが残る原因にもなる。さらに、ガーゼはキズにくっつきやすいので、ガーゼ交換の際、新たに再生した皮膚をはぎとってしまうというデメリットもある。
一方、消毒剤については、細菌だけでなく、キズを治すのに必要な細胞まで殺してしまうのが問題だ。「消毒をしなくて本当に大丈夫?」と心配な人もいるだろうが、キズ口に感染を起こすためには多大な量の細菌が必要なので、通常は、水道水でよく洗い流して菌を減らせばよいという。ただし、ごく少ない細菌でも、キズ口に異物などがあると感染が起こることが知られているので、ごみや異物はよく洗い流すことが大切だ。
新しいキズの治療法で、ガーゼの代わりに使うハイドロコロイド素材は、親水性と疎水性のポリマーから成る被覆材で、キズを覆って適度な湿潤環境を保つことができる。
昨年には、これまで医療現場で使われてきたハイドロコロイド素材を、初めて一般家庭用のキズケア製品として絆創膏に応用した商品も登場。浅い小さなキズなら、新しい治療法が家庭でも行えるようになった。この絆創膏は、「治癒の促進」「痛みの軽減」「湿潤環境の維持」が効能・効果として承認されたという点でも、日本では初めてだという。
最後に、ガラスの破片や砂など小さな異物が取りきれないとき、動物にかまれたとき、ズキズキと痛むとき、出血が止まらないとき――などは、医療機関へ行くことが勧められる。化膿しそうなキズ、化膿してしまったキズにもこの治療法は適さないことも覚えておこう。
幸い私は、ここのところキズ薬に世話になるような怪我が無く、どちらかと言えば従来からガーゼや傷絆創膏は嫌いで何もつけずに放っておくことが多いのですが、確かに最近、ドラッグストアなどに行くと従来型でない新しい傷薬や絆創膏などの商品が売られています。
たかがスリ傷ですが、顔を擦りむいた場合など、傷は治っても跡が残る可能性があります。夏井医師のサイトでも紹介されていますが、イラストレーターのchimaさんが、実際に自転車で転倒して顔面に擦過傷を負った時に
ラップを使って治した体験を書かれています。速く、痛くなく、きれいに治るのがポイントです。
夏井医師のサイトには、やはり自転車に乗っていて転倒して顔面に傷を負った女性らの
治癒例が写真入りで紹介されています。僅かな期間できれいに治っています。顔に後が残ると心配という小学生の例も出ていますが、
家庭で出来るラップ療法は、ナマ傷の絶えない子どもを持つ親も知っておいて損はないでしょう。
こうした実例を紹介し、それでもまだ「傷には消毒とガーゼ」の考えを改められない医者は、勇気がないか、理解力がないか、新しいことをするのが余程面倒か、患者を苦しめるのが好きか、そのいずれかであろう。と夏井医師は述べています。
私などは単純に、「目からウロコ」という感じです。今までの常識はナンだったのだろうと感じなくもないですが、このことに限らず、今まで体にイイとされてきたものが、実は良くなかったと180度変わる例は、ままあります。それが科学の進歩と言うものなのでしょう。
ただ、まだ当たり前のように旧来の治療を続けている病院も少なくないようです。夏井医師は、130年間にわたり真実と教えられてきたものを否定するには、多大なエネルギーを必要とするとも述べてらっしゃいますが、パラダイムシフトは専門家のほうが受け入れにくいものなのかも知れません。
サイクリストが自転車に乗るとき、パンク修理セット以外に、股ズレ防止用のクリームや日焼け止めならともかく、救急セットまで携行する人は少ないでしょう。少しでも荷物は減らしたいものですが、場合によっては、「ラップのきれはし」くらい忍ばせてもいいのかも知れません。
180度変わると言っても、今話題のタミフルのような命に関わるものは、そういうこともあるでは困りますね。
ところで、冒頭の写真のようなハイドロコロイド素材の絆創膏も出ているようです。そう転んでばかりでは困りますので、携行するかは別として、コンビニにも置いてあるんでしょうか。しかし、ケガした時に血を流しながらコンビニに入って、食品用のラップだけ買って出たら、店員はどう思うんでしょうね(笑)。
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