June 09, 2007

自転車でもいいなら自転車を

ドイツ・ハイリゲンダムで行われていた主要国首脳会議が閉幕しました。


難航が予想されたハイリゲンダム・サミットですが、最大の懸案だった地球温暖化問題は、「温室効果ガスの排出量を2050年までに世界で半減することを真剣に検討する。」とした議長総括を発表するに至りました。多くの問題点や今後のハードルも指摘されていますが、ひとまず本格的な議論を始めるスタート台は出来ました。

安倍首相は今回の合意に日本の果たした役割をことさら強調していますが、京都議定書で6%削減すべきところが8%増加している現状を考えれば、果たして日本が本当に半減できるのか心配になってしまいます。「真剣に」半減させるなら、今までのような方策だけでは全く足りないのも明らかです。

その中でクルマに関して言うなら、アイドリングストップやバイオ燃料の混合もいいですが、そんなレベルで半減出来るとは、とても思えません。もちろん経済を停滞させるわけに行かないのも理解できますが、燃費の良いクルマへの買い替えを呼びかけるだけで済むはずもありません。

真剣に半減させるためには、当然のことながら、いかにクルマの利用を減らすか考える必要があります。現在は踏み込んでいませんが、そのことをはっきりと打ち出さなければなりません。そのためには、日本ではあまり現実的な方策と見なされない傾向がありますが、自転車の利用拡大が有効な手段と欧米では考えられています。

スポーツバイクに乗っている人なら、自転車が十分な速さと航続距離を持つ都市交通の手段たり得ることは理解できると思いますが、あまり荷物を運べないのがクルマの代替手段として難点だと考える人も多いかも知れません。しかし、日本ではあまり馴染みがありませんが、トレイラーという手があります。

 

  

世界には、トレイラーやカーゴ、カートを手がけるメーカーはたくさんありますが、例えばこのCarry Freedomのトレイラーです。荷物が多い場合、下手に背負うより楽ですし、たためたり、そのまま外して引いて歩いて電車にも乗れるなど、その利便性は高いものがあります。かなり荷物があってもクルマを代替出来るはずです。

 

 

キッズトレイラーもありますし、ペットだって運べます。業務用にさまざまな形や大きさのトレイラーをオーダーすることもできますし、大型トラックの代わりにはなりませんが、意外に多くの部分を代替できるのではないでしょうか。特に都市部ではむしろ有利なこともあるはずです。

日本では独自の軽トラックという規格が広く普及しています。もちろん普通車より省エネであることは間違いありませんが、軽トラックの場合、その選択のいきさつからも荷物を満載することは比較的少ないので、自転車にトレイラーで充分間に合ってしまうことも多いのではないでしょうか。
 

最近は、駐車違反の取り締まり強化から、宅配便のトラックを自転車とトレイラーにしている地区もあるようです。昔はリヤカーなどを使っていた仕事も、いつの間にか軽トラックなどになっていますが、車両費や諸々の維持費なども含め、軽車両ならではのメリットは少なくありません。工夫次第の部分も多そうです。

高度経済成長期を経て、当然のように、業務用の自転車はクルマに置き換わって来たわけですが、これからの時代、当然のように自転車とトレイラーにしていかなければ、2050年の温暖化ガス半減は覚束ないでしょう。政府が積極的に奨励することで、不要不急のクルマの利用を抑制していく必要があります。

 

ただ、自転車がクルマへと置き換わってきた背景には、速度が速いとか、大量に運べること以外の要素もあったはずです。例えば、今どき、バンを改造したクルマで売りに来るアイスクリーム屋は見ても、自転車の荷台にクーラーボックスを結びつけたアイスキャンデー屋は見なくなりました。

自転車と言うと、日本では量販店で1万円以下で買えるママチャリが、多くの人のイメージにあります。ママチャリが悪いわけではありませんが、安っぽいイメージがあることは否めません。駅前から撤去されても引き取りに行かず、事実上使い捨てのようになっている現実もあります。

  

そのせいか、商売に自転車を使っていると、何か安っぽい、資金力に乏しいとのイメージが今だにまだ拭いきれません。自転車本来の姿やそのポテンシャルを多くの人に知ってもらい、ネガティブなイメージを払しょくすることも必要でしょうし、単に家から最寄駅までの「アシ」だけでないことの認知度を高めることが求められます。

必ずしも自転車で出来ないことはないのに、イメージ的に自転車を使っていたのでは商売にならない状況を作らない為にも、お客としての私たちの意識も変わっていかなければなりません。路駐でエンジンをかけたまま販売している弁当屋よりも、トレイラーに温蔵庫を積んで売りに来ているほうを好ましく思う人が増える必要があります。

 

より環境を考えて、自転車とトレイラーを使っているほうがクールだと感じる人が増えれば、確実にクルマからの置き換えも進むはずです。その意味からも、トレイラーは温暖化対策の手段として、日本でも、もっとメジャーな存在になる必要があります。トレイラーを選ぶ人を増やしていかなければなりません。

政府も、どんどん新しくなる省エネタイプのクルマに買い換えることばかり奨励するような、偽りのグリーン税制は撤廃すべきです。廃棄や生産によるエネルギーや資源の無駄、温暖化ガス排出増加も見逃せませんし、僅かな燃費の違いなのに、多少古いクルマだけど長く使おうとする人が不利になるのは、「まやかし」です。

これは、さすがに大袈裟だが..

今後は、クルマの利用を減らすための税制を考える必要があります。はるかに温暖化対策に貢献することを考えれば、クルマをやめて自転車とトレイラーにする人こそ優遇すべきなのは間違いありません。まず政府も、その意識を変えていく必要があるのではないでしょうか。



排出量2050年までに半減を提案するのはいいんですが、その提案が「美しい星へのいざない─Invitation to Cool Earth 50」(通称「美しい星50」)って言うのは何か違う気がするのは私だけでしょうか。Cool Earth 50は、2050年と半減をかけ、クールは地球を冷やすのとかっこいいをかけていて、いいと思うのですが..。よっぽど「美しい」が好きなんでしょうね(笑)。


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この記事へのコメント
わが町では宅急便のお兄さんが自転車でリアカーを引っ張っています。意外と良く見かけますね。たまに歩道を爆走してることが有りますが、原則車道で運用しているようです。堂堂と手信号で、自転車に乗っている姿は誠にクールです。こういう企業を応援したくなります。
Posted by matta at June 11, 2007 08:48
mattaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
やはり宅急便の人、引っ張ってますか。正確なことは分かりませんが、しばしば耳にするので、増加中なのかも知れません。
路駐して集配しているトラックが邪魔だ違反だと言われるのに比べ、おっしゃるように、企業イメージの向上にも貢献しているでしょうね。
Posted by cycleroad at June 12, 2007 22:01
さいきん、新車登録台数が減ってきているというニュースも耳にしました。
車にどれだけむだな金をつぎこんできたのか、
もう、消費者は気がついているんですね。

この変化に追いついていないのは、
この極東の島国の自動車業界と政権の従事者たち。
霞ヶ関あたりを移動するのには自転車がいちばんなことを
谷垣さんあたりからどんどん広めてもらいたいものです。
Posted by nob06 at June 17, 2007 22:34
nob06さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、都道府県によるバラつきはあるものの、東京などでは減りつつあるようです。実際、維持費が高いのに渋滞で時間はかかるし、割に合わないと考える人は増えているのでしょう。
おっしゃる通りだと思います。ただ、谷垣さんもサイクリストである前に政治家として行動しますから、利害関係業界の献金力や票には左右されるでしょう。自転車政策に関する発言を聞くと、そのせいか歯がゆいものがあります。しかし、環境問題に配慮した政策を打ち出すことは、今後、予想以上に大きな市民の支持を獲得出来るのではないかと思います。そのあたりも、よく考えていただきたいですね。
Posted by cycleroad at June 18, 2007 22:41
 
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