June 18, 2007

新たなパリの名物が生まれる

花の都が自転車の都にもなろうとしています。


すでに、AFPや時事通信などでもニュースが配信されていますが、フランスの首都パリでは、来月から市内全域にレンタル自転車を配置する「ヴェリブ(Velib)」と呼ばれる事業がスタートすることになっています。一万台以上の自転車を750箇所のステーションに配置するという大規模なものです。

参考:動画によるAFPのニュース(ボリュームに注意)

環境保護と公害対策の一環として、市民にクルマの利用を控え自転車に乗ってもらおうという目論見ですが、市当局は、これを画期的な「交通革命」だと位置づけて力を入れています。24時間自動で貸し出しが行われ、短時間であっても何度も利用してもらえるよう、最初の30分は無料、全体的にも利用料は低額に抑えられています。

カードで自動貸出しVelib

しかも、大手広告代理店と契約してステーションなどに設置するパネルに広告を掲載させることで、税金の投入は一切無し、余った広告料は市の財源になるという点も優れています。規模も年内には1451か所、2万台以上に増やす計画で、20万人以上の利用が見込まれています。

盗難防止のため、定期利用には保証金が必要ですが、観光客用の1日券などもあります。利用者のモラルによっては、返却されずに持ち去られたり、返却場所以外に放置されたり、あるいは全く利用が広がらないなどの可能性もありますが、リヨンなどの都市で先行して導入され成功を収めていると言いますので、大丈夫なのでしょう。

ヴェリブ工事が進んでいる

報道でも指摘されていますが、環境に優しく手軽な乗りものとして、自転車利用促進政策への関心が世界的に高まっていることは、もはや紛れもない事実です。今までにも同種の政策は、ドイツやオランダなどをはじめとする各国の都市でも採用されていますが、その流れが一層加速すると期待されます。

パリという大都市、しかも世界中で最も観光客が集まり、文化やファッションの発信基地としても注目度の高い都市で導入されることは、今後一層の関心を集め、他の都市へも影響を与えるであろうことは想像に難くありません。世界の都市に自転車を「これから」の都市交通として印象付けるはずです。

(ボリュームに注意。)

サルコジ新大統領の環境政策とも連携しており、フランス政府もその環境問題への取り組みを世界に向けてアピールするでしょう。世界各国の首都クラスの行政関係者も注目していると言います。今後、世界の都市における環境に配慮した交通政を停滞させないためにも、ぜひともその成功を祈りたいものです。

Velibしかし、振り返って日本はどうでしょう。もっぱら日本の都市では自転車を歩道へと追いやる交通行政と、放置自転車対策に政策の重心が置かれているように見えます。言ってみれば世界とは逆の方向です。最近では、一部にそれを転換する考え方も見られますが、まだまだ全体の傾向としては、自転車にとってお寒い限りです。

既に8千万台を超える自転車が存在するゆえの問題でもありますが、放置自転車を正当化するつもりはありません。ただ、せっかく自転車を利用している人に撤去で答える交通行政は、双方にとって不幸と言わざるを得ません。地球環境から言っても廃棄物を増やすことで余計な負荷を増やしています。

利用者のモラルの問題は否定しませんが、道路も駅前の駐車場などの施設も、交通をクルマ中心に考えてきたツケで、通行空間や駐輪空間の絶対量が圧倒的に不足しています。この上にレンタル自転車を導入しようものなら、更に自転車が街に溢れ無理が生じることも危惧されます。

市区町村によっては、放置と撤去のいたちごっこに、年間数十億の予算を使っています。それだけの金額があれば、自転車関連施設の建設も進もうと言うものですが、言わば廃棄物を増やすだけに大金を使わざるを得ないのは、大きな無駄であり悪循環です。この際、大きく政策転換するチャンスにしたいものです。

レンタサイクルの前に、まず車道の車線を減らしてでも、自転車が通行したり、駐輪したり出来るスペースを作らなければなりません。都市部においては、いたずらに渋滞に並んで排気ガスと温暖化ガスを放出するくらいなら、思い切って自転車に転換するべきというコンセンサスも人々の間に形成しなければなりません。

その為にも、パリはいいお手本や、きっかけとなり得ます。ただでさえ、先進国で自転車が歩道を走る国は他に無いと言います。その野蛮さに来日する先進国の外国人は驚きます。我が国の道路行政は、野蛮から標準を通り越して先端へ向かわなければなりません。

パリの貸し自転車システムパリのレンタサイクル

今ではすっかりパリの顔として認知され愛されているエッフェル塔も、建設当初は、街の風景にそぐわないと大ひんしゅくを買い、大いに嫌われたそうです。Velibも、あまりおシャレではないと嫌う意見もあるようですが、遠からず小粋に自転車で行き交うパリっ子の姿が当たり前になりそうです。

環境への憂慮を深める世界の趨勢から言っても、早晩日本でも自転車を活用して、渋滞で有効とは言えないクルマの利用は減らすべきです。日本の関係者には、パリの取り組みを見て、一刻も早く自らの政策の間違いと不毛さに気づき、彼我の隔たりに呆然とし、焦りを覚えてもらうくらいの必要があるのではないでしょうか。



でんしれんぢの「ゆうきのうた」が流行りつつあるようですね。歌詞は人それぞれに感じ方がありそうですが、妙に懐かしい歌声と耳に残るメロディーです。

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しかし、なんでレンタサイクルと言うとママチャリしか出て来ないのだろう。



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パリに続いてニューヨークです。
単にレンタサイクルではなく【サイクルロード 〜自転車という道】at October 18, 2007 17:05
この記事へのコメント
こんばんは〜、たま〜にコメントにお邪魔します。
このレンタル自転車実はかなり注目していたのですが、ついにパリにも進出したんですね。素晴らしいことです。
日本でもやっていることはやっているみたいですがまだまだ規模も小さいですし広がる気配はないですね。
もっと根底から変える動きをすれば放置自転車なんて自然となくなっていくと思います。果たしていつ変わるのか、なんて言わずに何とか変えることはできないものかと考えたりしちゃってます。
Posted by だばしゅ at June 19, 2007 21:52
だばしゅさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ヨーロッパと言っても、地形や習慣の違いなどによって、都市ごとの自転車利用には、かなり温度差があるようです。その中でも、どちらかと言うと進んでいなかったパリでの動きですから、自転車活用策を具体的に実行する動きは確実に広がっているようですね。
おっしゃるように、日本でも行政や市民が根本的に考え方を変える必要があるでしょうね。そのために、昨今の地球環境への意識の高まりが、大きな動機、きっかけになるのでは、とも思います。
Posted by cycleroad at June 21, 2007 20:41
 
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