June 27, 2007

自転車の価格と比例するもの

自転車の素材と言えばアルミ合金やクロモリ、最近はチタンやカーボンなどいろいろあります。


でも、さすがに九谷焼の自転車というのは聞いた人がありません。「先端技術と伝統工芸の高次元での融合を、最先端アーティストがディレクションを行う。」というコンセプトのスポーツ用品メーカーPUMA社の企画、「カスタムバイクプロジェクト」によって誕生した九谷焼自転車です。

九谷焼の自転車と言うと陶器で出来た自転車なのかと驚いてしまいますが、さすがにフレームも焼き物で出来ていたら、すぐ割れてしまうでしょう。実際に九谷焼で出来ている部分は、サドルとグリップとペダルのリフレクターだけてす。ただボディのカラーは、伝統的な九谷焼の色が使われています。

ベースはPUMA社の自転車ですが、日本を代表する伝統工芸である九谷焼を使っているという、希少性と芸術性にあふれたオリジナルバイクです。各色とも、最低落札価格25万円のチャリティオークションで販売され、売上は能登半島地震の被害にあった輪島漆器組合に復興支援として寄付されるそうです。

九谷焼の自転車PUMAカスタムバイクプロジェクト

石川県能美市も35万円で一台落札したそうですが、九谷焼の「青」と呼ばれる緑色で、資料館に展示したりイベントなどで活用されるそうです。世界に一台しかない珍しさや、著名な作家の九谷焼の値段を考えれば、チャリティーでなくても、十分リーズナブルな値段なのかも知れません。

九谷焼としての価値はともかく、35万とはいい値段です。一般的なスポーツ系のサイクリストなら、走行性能の高さや乗り心地、耐久性や実用性も含めた性能について対価を支払うなら納得するでしょうが、九谷焼であることに魅力を感じる人は少なそうです。

でも、考えてみれば、走行性能に何十万という金額を出すサイクリストも日本全体から見ればごく少数に過ぎません。自転車に速さや機能を求めるという価値観とは違う人がいたっていいはずです。私も友人にスポーツバイクを勧めることもありますが、必ずしも好きになるとは限りません。

陶器のサドル陶器のグリップ

日本全体の割合で言えば、安ければいい人が大部分を占めているわけですが、価格や性能、実用性の高さなど以外の価値をアピールする自転車は、もっとあってもいいのかも知れません。見た目などの趣味性、希少性などの価値、コレクションの喜び、他にも、もっと違った価値観から買う人もあるでしょう。

実際には、日本の自転車の圧倒的な大部分はママチャリであり、その多くは価格一辺倒で、限りなく日用品に近いような状況になっています。移動のための道具に過ぎないと言われればそれまでですが、あまりに安くありふれていることが自転車に対する興味を失わせ、使い捨てのようになって放置自転車を増やしています。

日本は、世界でも有数の自転車普及率を誇りますが、欧米諸国と比べて有効に活用されているとは言えません。スポーツとして捉える人も少ないですし、せいぜい最寄り駅まで、多くの人にとって自転車で一駅以上先へ行くなんて考えられません。結果として駅前に集中し、自転車の本当の意味での交通としての利用も進まないのです。

伝統工芸の自転車世界に一台だけ

日本人を、世界で一番自転車の楽しさを知らない人種だと言う人もいます。それもこれも、あまりに圧倒的にママチャリが普及し、ママチャリしか知らないことが一因だと言われています。利点もありますが、遅くて重く、遠くまで行けないママチャリしか乗ったことがない人が大多数なので、本当の自転車を知らないのです。

九谷焼でなくてもいいですが、今までにないような付加価値をつけることも、考えようによっては、自転車の楽しみ方を広げるでしょう。多くの人が自転車を日用品ではなく、趣味のものとして考えるきっかけになるかも知れません。結果として、本当の自転車を「知る」人も増える可能性があります。

例えばクルマでも靴でもいいですが、実用品と捉える人もいれば、機能よりおシャレ度や好みを優先する人、ひたすら高級を求める人、経済性を優先する人など様々です。当然そのニーズに答える商品ラインナップがあるわけで、いろいろな商品が出てきてこそ、選ぶ楽しみ、所有する喜びも広がります。

kutaniベース車

成熟商品がゆえなのでしょうが、自転車には性能や価格以外の価値基準の多様性が乏しいようです。まだまだ自転車メーカーにとって、大きな可能性が眠っているのかも知れません。少なくとも欧米人の所有する自転車の平均価格と比べると、昨今の輸入格安自転車の普及もあって、日本人のそれは圧倒的に低いのも間違いありません。

私もそうですが、一部のスポーツバイクに乗る人たちの平均価格は、一般の人と比べてかなり高いはずです。十倍ではきかないでしょう。高ければいい訳ではありませんが、でも、高い人ほど自転車の放置や防犯、交通ルールや走行マナー、自転車通勤といった自転車の利用面など、あらゆる点で意識が高いのも事実だと思います。

必ずしも性能にこだわって価格の高い自転車に乗る必要はありませんが、一般的な日本人も、様々な付加価値の加わった高級な自転車に乗るようになれば、自転車を取り巻く諸問題や、自転車の走行環境も大きく変わってくるような気がします。環境面から言っても、いい自転車に長く乗るようなスタイルが求められていると思うのです。



最近は、牛肉偽装のニュースが連日報道されています。20年も前からだましてきたことも凄いですが、クズ肉が混ざっていても分からないものなんですね。肉に限らず、中国の食品なんかにも問題が出ていますし、どこで何を食わされているか分かりませんね..。

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この記事へのコメント
いいですねーこういう自転車。

例えば、リカンベントやタンデムみたいないろんなバリエーションの自転車がもっと走っていれば、やっと自転車が交通文化として認知されるようになるんでしょうか・・。
Posted by s at June 30, 2007 14:13
sさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
サラリと九谷焼の自転車に乗って、気負わず金沢の街を行きかっていたら粋ですよね(笑)。
文化として認知されるには時間がいるのかも知れませんが、少なくとも今より興味を持つ人は増えるでしょうし、バラエティが広がって、それぞれのスタイルを確立する人は増えるでしょうね。タンデムの規制なども撤廃してもいいのでは、と思います。
Posted by cycleroad at July 01, 2007 00:56
 
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